9 事情聴取つづき
前回のつづきです。被疑者が自分が
患者達から統合失調症を移されたと言った所まで
書きましたよね。
つづき書いていきます。
相棒
「・・・お前が、移されたって?」
□□
「ええ・・・そうですとも・・・。
私は、心の病に苦しんでる人達を一人でも多く
救いたいと思って、精神科医になりました。
そしてあの△△精神病院で長く勤務してました。
一人一人、親身になって彼らを診察したり、
彼らの心を癒す為に深く話を聞いてあげたり、
そんな事を繰り返す内に、私自身も
情動感染してしまったんです。
・・・被害妄想、無関心、認知機能低下、
それらの症状に悩まされました。
でも、精神科医が精神疾患になるなんて、
あってはならない事でしょ?
もしこんな事がバレたら、
精神科医としてやって行けない。
・・・だから、誰にも話せませんでした。
独りで抱え込むしかなかったんです。
症状が続いても周囲にバレない様に必死で
平静を装って医者を続けてました。
・・・刑事さん、貴方ネットで調べたのなら、
情動感染から身を守る方法も
知ってるんじゃないですか?」
相棒
「・・・確か、距離をとるとか、
相手の話を聞き過ぎないとか、だったか」
□□
「ええ、その通り。私もそれが出来れば
良かったんですがね。
私は毎日患者達の診察を
続けないといけないから
患者達から情動感染を受け続けてたんです。
そしてとうとうある日、声を聞いたんですよ」
相棒
「声って、幻聴の事か?」
□□
「そうです。最初は 死ね、とか 辞めちまえ
とか 医者失格だ、とかでした。
統合失調症の幻聴は9割が悪口や批判です。
私はこの幻聴が聞こえた時、精神科医として
認めざるを得なかった。
・・・自分は、統合失調症に感染したのだと。
私は幻聴に悩まされながら精神科医を
続けました。毎日その日を乗り越える事に
必死でした。それと、社会全体も
精神疾患に対する理解が行き届いてるとは
到底言えない環境だったので、
私は依然として、
誰にもこの悩みを打ち明けられずに
独りで抱え込んでいたんです。
きっとそんな私の世間への不満も
影響したのかも知れませんね。
ある日から幻聴の内容が変わって行ったんです」
相棒
「・・・どんな風に、変わったんだ?」
□□
「世間に復讐してやれ、とか
お前の苦しみを奴らにも味あわせてやれ、とか
攻撃の対象が自分ではなく
世間や周囲に向いていきました。
それと、仲間を増やせとか、
自分以外を巻き込むような幻聴も
徐々に増えて行きました」
相棒
「・・・あいつら7人を操ったのも
その仲間を増やせとか言うげ、幻聴のせいか?」
□□
「それも理由の一つですが、出来るだけ
自分では手を汚さずに安全圏に居た方が
確実に結果を出せると思いませんか?」
相棒
「幻聴に脅迫され、彼ら7人を操った。
それがこの連続強要事件の、お前の動機だな?」
□□
「その通り。ようやく最後の答えに
辿り着きましたね」
相棒
「・・・統合失調症は、治るのか?
あ、あいつら7人は治るのか?」
□□
「おや、彼らを心配してあげれるとは
さすが刑事ですね。貴方を率直に尊敬しますよ。
・・・統合失調症の治療法は、
主に薬物治療とリハビリテーションです。
完治するには個人差が非常に大きいですね。
数年かかる場合もありますよ。
・・・質問は以上ですか?」
相棒
「・・・取り敢えずはな」
□□
「さて、刑事さん。私の動機は幻聴なんです。
というか、今も私には聞こえてるんですよ。
よくやった、とか お前の勝ちだ、とか
私を祝福する幻聴がね」
相棒
「・・・何言ってる?」
□□
「刑事さん、この後裁判が始まれば、
私は統合失調症の幻聴による心身喪失状態を
主張します!」
相棒
「お前!いい加減にしろよ!?」
□□
「私だって感染した被害者なんですよ!
責任能力無しと判断され、
無罪になるでしょう!」
相棒
「だまれー!!」
□□
「あー裁判がたーのしーみだなーー!!」
相棒
「うるせー!!やめろーーー!!
やめろって言ってるんだーーーーー!!!」
□□
「・・・刑事さん?・・・はは、
そ、そうか・・・貴方も?・・・
は、ははは!これは傑作だ!最高だよ!」
相棒
「だまれ!だまれ!だまれーーーーー!!!」
□□
「それは私に言ったんですか?
それとも自分にですか?」
相棒
「やめろーーーーー!!!」
□□
「ははは!ははは!ははは!ははははは!」
自分の統合失調症という病気を盾に、
□□は裁判で心神喪失状態を主張すると
言い出したんです。
この国の裁判の前例から考えても
被疑者□□が責任能力無しと判断され
無罪になる可能性は高いでしょうね。
俺も悔しいですが、ここから先は
俺達刑事にも、どうする事も出来ません。
□□を任意同行した時に俺が感じた
捕まる事を恐れてないような、
隠し玉を用意してるような印象、
あの正体はこれだったんでしょうね。
□□は精神科医なので、
心身喪失状態と判断される条件や
基準を良く知ってたのかも知れません。
□□を送検し、俺達の捜査は終了しました。
ですが、皆さんにまだ伝えたい事があります。
俺の相棒の事です。
あいつの事を伝えきるまで
この話は終われません。
どうか最後までお付き合い下さい。
つづきます




