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Vermilion noon ,indigo sunset  火星コロニー「リトプス1」の日常  作者: 蘭鍾馗


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20.生物屋の仕事(アリシア バンデラスの寄稿)

 ローランド、失礼よ。


 私は動物園にいる白黒模様の珍しい動物じゃないんだからね。

 ま、いいけど。自分で言うのも何だけど気持ちはわかるわよ(笑)。


 アリシア バンデラスです。生物屋よ。


 専門は細菌類なんだけど、ここではみんなそうしてるように、専門以外の周辺分野も扱います。

 私だったら、とりあえず生きてるものは、人間以外全部私の担当。人間はパコとオリヴィアにお任せね。私は無理。


 じゃあ普段は何やってるのかって言うと、主に食糧生産部の依頼で畑の人工土壌の菌類叢を調べたり、あと地球から持ってきた種子の管理なんかも担当してる。種子は、寿命の短いものは定期的に播種して新しい種子を採らないといけないからね。

 あとは新しく育てる作物の提案なんかもします。時々リオコが手伝ってくれるけど。あの子本当に器用だし不思議なくらい何でも知ってる。この間「リオコ、実は千年くらい生きてるでしょ。」って聞いたら、「何で知ってるの?」だって。


 この食糧生産部からの依頼は大事な仕事。食糧生産が軌道に乗らないと、火星のコロニーは長期的に持続可能な生存空間にならない。スウェーデンの姉御とギリシャの肝っ玉母さんが仕切るこの部署が、火星で人間が暮らしていけるかどうかの、一番大きなカギを握っている。だから頑張ってね。


 ◇


 水の検査も大事な仕事。フローレスやテオドーロ達が掘って来る新しい地下の氷は、管理部からの依頼で生活用水に回す前にまず検査します。理由は火星由来の微生物が入ってる可能性がゼロじゃないから。このあたりは溶岩台地だし地表のレゴリスなんかには生物が生きている可能性はゼロだけど、地下の凍った水には古い時代の火星の生物が生き残っている可能性がある。


 火星の生物は未だに見つかっていないけど、思い切り地下深くの地殻は地熱で暖かいし、硫黄なんかを利用する嫌気性の微生物がいる可能性は大いにある。これが地下の氷の中に紛れ込んでいる可能性は考えておくべきよね。これは「新発見」とかいう意味だけじゃなく、人間の体内に取り込まれて悪さをしたりしないか、という意味からも大事。手間はかかるけど、これ抜きで生活用水の新たな調達をするのは危険。


 もう一つ大事な仕事は、コロニー内の微生物のモニタリング。

 人に害をなすような種が増えたりしていないか、やっかいな変異株が出来たりしていないかのチェックね。これを怠ると、最悪の場合は伝染病が発生する。ロビーからトイレまで、あらゆる場所から定期的にサンプルを取って調べます。コロニーの中、実は結構な数の酵母がいるって知ってた?


 ◇


 種子更新用の株を育てているファイトトロンでは、今、色々と面白い植物が沢山育っている。ちょっと紹介しようか。


 コーヒーは面白い位良く育って、今、白い花が咲いている。エアポテトはこの間新しい作物に選ばれたしね。イワタバコも地球の3倍くらいの大きさに簡単に育つ。栄養価も高くて、レタスの代わりになりそうだって、この間アニタに報告したら喜んでたわね。もとは湿った岩の上に生えるやつだから、水耕栽培との相性が抜群。これも今、紫色の花が咲いている。


 どうやら、地球では日陰に育つような植物は、火星での栽培に向いてるみたいね。


 ◇


 じゃあ、次ね。

 生物屋はこれで済んだから、次は化学の担当者にお願いしましょうか。

 有機系の話はアリ君が既に書いてるから、無機系の分析と合成やってるダニエル君、よろしく。

 レゴリスでロケット燃料作ってるって本当?

 

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