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「なっ。東の貴族の暗殺?それがあなたの望みだというの?」
「人殺しの手伝いをあんたは出来るのかい?お姫さん」
薄暗い部屋、2人入れば狭く感じるその場所で2人は向かい合って座っている
葵は正座をし、美麗はあぐらを崩して右足を立てている
「東の貴族って白蓮の家でしょう?芙蓉姫もさらわれたかもしれないっていう」
「あの一族が何をやっているか・・知ってるか?姫さん」
首を横に振る葵
「あんたは何者だ?芙蓉ではない、けど芙蓉にそっくりだ
あの王様はそれを知っているのか?西の高台の両親や兄弟もあんたが偽物だってことは?」
「知ってる。それでも優しくしてくれるの」
くっと笑う美麗
なぜそのタイミングで笑うのか全く分からない葵は黙っている
「愛される人間には絶対わからないだろうよ」
顔は笑っているのに目は全く笑っていない
仄暗く揺れる黒い瞳には怒りを含んでいるようで、ぞっとする
「私は血がつながっていても、家族と認められたことは一度もない
それどころか使えないと分かった時点で捨てられ、殺される運命だった」
美麗は、ぱちんと指を鳴らす
その指先に赤い炎が揺れる
熱くもないその炎の揺らぎを葵はじっと見る
「私は東当主の庶子、白蓮は腹違いの妹。そして父の性のはけ口であり、暗殺者」
葵は心臓がえぐられたように痛かった
美麗の言葉が目が表情が、炎に照らされて
刺さった・・
「それで殺すほど憎んでいると・・?」
「おや同情してるのか?それとと諭すか?そんなことで人を殺すなんてって」
葵は首を左右に振る
「あなたの人生はそれは大変なものだと思う。私が想像するよりずっと・・
美麗さんは優しい人を助ける心がある。それだけが理由ではないでしょう?」
葵の言葉に黙る美麗
「優しい?馬鹿なことを言うな、ただの人殺しだ。
芙蓉の従者、あの背の高い…
華原といったか?あの男を殺したのは私だと言ったら?」
葵の目が大きく開かれる
「え???」
「私の邪魔をしたから殺した。それだけだ」
葵は涙が流れていた
華原を殺した人を許せないと思っていた
目の前にいて
怒りはもちろんある
けど、その人物の命まで取ろうとは思えない
「私は目的のためなら人を殺すことをためらわない」
美麗は立ち上がる
「あんたみたいな、甘っちょろいただの小娘が・・何ができるっていうんだ?」
冷たい
一切の感情がない表情に声
本当にそう思っているのが伝わる
「あんたは芙蓉じゃない、
芙蓉の代わりとして王につくしてお前はそれで満足だと言うのか?」
葵は何もいえなかった
「私は確かにただの何も出来ない身代わりよ…」
葵は自分の顔を覆う
肩が震えていた
「ふっ…ふふふ」
泣いているのではない、葵は笑っていた
「ありがとうございます」
「…は?」
「貴女は、私の欲しい言葉をくれる・・」
そう言って、くすりと葵は笑うのだった
「私をただの私としてみてくれた人は初めて」




