表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私立・神楽椿学園探偵部の事件ノート  作者: サトル
2.神楽椿学園のお嬢様
19/71

2-8


 二人ずつで向かい合う格好のテーブル席。一番奥に座っていた楓李さんの目の前に華澄が座る。そしてなぜか当然のように真琴がその隣に座ってしまったものだから、僕は楓李さんの隣へお邪魔した。


 やってきた店員に対して華澄は“とりあえず茶を出せ”なんてぶしつけな注文をしている。

 真琴はというと、その横でそれらしいメニューを選びなおして、通訳のような形で店員へ指示をする。

 “人の心を読む”真琴の新しい活用法を見つけてしまった気がした……って、これだと僕まで利用するみたいになってしまう。やめよう。


「ここで必要になるのが最初の暗号。あれは六文字の単語を点字表記に置き換えて読ませるものだったな」

「確か、置き換えた“南無阿弥陀仏”の文字の中で、線になる部分だけを書いていた、ってことだっけ?」

「ああ。あれは本来の“二銭銅貨”とは逆だ。風見は攪乱の意味ではなく、わざとそうしていたんだ。また別の解き方があるぞ、と。“点部分にあたる文字を消し、読ませる文字は横棒へ”とな」


 店員がメニュー表を片付けるや否や、華澄は紙切れをテーブルに置く。

 それは、最初に出された暗号と最後に解読した分――それぞれ、答えを導き出した後のメモ紙だ。


 無弥

 南弥陀


 弥・

 ・無

 ・・


 弥南

 陀・

 ・・


 あきまち ・・ のあ・ろ・ ・・ はは ・・や く・ ・・ ・き・て・


「そこでもう一度、二つ目の暗号文を取り出す。同じ解き方で消す文字……つまり結語の“けいぐ”を点に置き換え、残った文字は横棒に――」


 “---- ・・ --・-・ ・・ -- ・・- -・ ・・ ・-・-・”


 二つ目の暗号の紙きれ、そのさらに端に華澄が記号のようなものを書き連ねていく。

 ああ、なるほど。そういうことだったのか……。


「これ、点字にしては形が不ぞろいなような」

「真琴、お前はしゃべらなくていいと……まあ、良いか。ああ、こっちは点字ではない。モールス信号だ」

「モールス信号……って! “魔法探偵・小日向めぐるの事件譚”で悪役の京さんが組織とやり取りに使用してい」

「そう、昔の軍隊や航海士が実際に使用していた単音と長音、間隔を符号表と照らし合わせてやり取りをする電信システムだ」


 早口で喋り出した真琴を無視して、華澄は仕切り直している。

 だけど、多分真琴も見当違いじゃないのだと思う。楓李さんはあえて“魔法何とか”の小説を用いることで“モールス信号を用いている”と伝える意味もあったんじゃないだろうか。

 ここまで、二銭銅貨に準えた解き方を示したりするほど親切な問いかけを作った人だから。


「使用頻度としては“SOS”が有名なように、アルファベット符号が主流。だが……五連続の文言が使用されているから……これは和音だと分かるな」

「いや分からないけどすでに」

「そして、本来の決まりとしては……例えば“たんてい”と打ちたいときは“たばこのた、おわりのん、てがみのて、いろはのい”となるのだが、これはそれを省略してしまったということだ」

「めっちゃ俺置いていくね」

「つまり……」


 ----() ・・() --・-・() ・・() --() ・・-() -・() ・・() ・-・-・()


「ごじょうだん」


 ――そうか。ここまで準えていたのか。

 華澄がペンをテーブルに置くと同時に、店員が人数分の飲み物を持ってきたようだ。

 華澄にはハワイのお茶を、僕にはトロピカルなジュース……僕の好み、把握されていて、少し怖い。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ