2-7
店の場所を思い出そうとしている真琴と急かす華澄と。
――二人の後を追いかける僕の頭には嫌な想像が駆け巡っていた。
どうして彼女あてに警察を名乗る男から連絡があったのか。“妹の事”と言っていたけど……。
本当に、ただ試されているだけなんだろうか。実は……なんて考えていると、真琴の足が一軒の店舗の前で止まる。
目の前には、長身の真琴よりも一回り大きい花輪が入り口を飾っている真新しい木の香りが漂うお店。看板には確かに“aloha”の文字が見える。
「――遅かったですね、あと少しで帰ろうと思っていたところでした」
「……下らない茶番を仕掛けてくれたものだな」
――店内へと足を踏み入れる。時刻はもう夕食の頃、流行っているだけあって店内は混みあっているように見えた。
「皆さん! こちらですわ」
店の奥にあるテーブル席からおしとやかな声が聞こえた。
上品な仕草で手を叩き、称賛するように微笑んでいる楓李さんの姿を見るや華澄が胸倉を掴みにかかっていたけど……僕は内心で安堵していた。
「ちょっ……え、どういうこと!? って、言うか水野やめろ」
あ、そういえば図書室に行っていたから真琴はまた話の流れについていけていないんだった。
安堵している場合じゃない。
「“二銭銅貨”に準えていたんだよね……?」
僕が問いかける……思ったよりも全然声が出なくって、賑やかな店内に紛れてしまったんじゃないかと不安になった。だけど、楓李さんには届いたらしい。
「……作中で登場する暗号は……頭の切れる友人に対して、主人公が仕掛けたイタズラだったんだ……。手紙に二枚の銅貨を仕込んだのは、それになぞらえた挑戦状ということ、だよね」
華澄に解放され、襟を正すと楓李さんは僕の方を向いてにこりと笑いかけた。
「この度の入部打診にあたりまして、僭越ながら……実力を見極めさせていただきました。非礼、先にお詫び申し上げます。……ですが、さすがのお手並みでしたわ」
睨みつけている華澄の剣幕に怖じる様子もなく、楓李さんがそう言葉を並べている。見た目のわりに怖いものがないのだろうか……少し羨ましくさえある。
だけど、華澄も単純なもので“さすがだ”なんて素直な言葉で褒められてしまうと起こる気もうせてしまったらしい。真琴の顔を見上げている。ここからではよく聞こえないけど、真琴も“本当にほめているみたいだ”なんて補足したのだろう。華澄は咳ばらいをしていた。
「……手の込んだ暗号を仕掛けるわりに、それが一目で暗号だと分かる……随分と苦しげで不自然な文字の途切れ方だと思ったんだ」
「ええ、とっさに思いついたもので、夕方までの半日ほどで仕上げないといけませんでしたから」
少し落ち着いたらしい。腕を組んだ格好のまま、華澄がため息を落とす。
「最後に出された暗号。あれは移動場所を伝えるだけではなかった。もう一つ別の解き方で、メッセージを仕込んでいたのだな」




