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くじ引き転生  作者: ブラックシュミット
19/32

12裏

詐欺師達を憲兵に引き渡し、僕らは街に戻って食事を取ることにした。

「はあ~…………結局私たちの痺れ損だったね…………」

ウサリィがハチミツジュースを飲みながら、溜め息混じりに言う。

その言葉に僕はニヤリと笑いながらあるものを取り出した。

「いや、無駄じゃないよ、ほら」

「それって……………」

テーブルの上に置かれたのは、前金として受け取った10,000ゴルドが入った袋だった。

「か、返さなくて良いんでしょうか…………?」

「元々悪党の金だし、殺されかけた慰謝料とでも思っとけば良いんじゃない?」

「クロミネ…………意外に強かだね」

「誉め言葉と思っておくよ」

「それじゃあ、好きなだけジュース飲んでも良いってことだよね!

おじさん、お代わり!」

金があると知ったウサリィが調子に乗り始めたので「三杯までね」と釘を刺しておく。

まあ確かにこれで当分の食事と宿代は確保できたな。

と、そうだ。

「カノン」

「は、はい…………?」

「はい、これ。この間借りた分」

僕はカノンの手に袋から出した金貨を渡す。

「え…………で、でも、少し多いですよ…………?」

「その他にも色々助けてもらったから。

まあお礼と思って」

僕の言葉にカノンは遠慮がちながらも「…………はい」と頷く。

実際、カノンがいなかったらクレアを探すどころか、この世界での生活すらままならなくなるところだった、本当カノンには世話になりっぱなしだ。

「じゃあお金があるってことは………早速ギルドに依頼しに行くの?」

「うん、クレアがどこにいるのか探してもらわないと」

合流した後どうするか、そこまではまだ考えてないが。

まあそれは追々考えていくことになるだろう、帰る手段があるならそれを手伝うし、ここで暮らすのならクレア達も依頼をこなしてお金を稼がないといけないだろうから、その手伝いもできるし。

「もうすぐで会えるのかぁ…………楽しみだなー」

「前も言ったけどあんまり期待しない方が良いよ」

「神様…………なんですよね………?

き、緊張してきました…………」

「緊張もしなくて大丈夫だよ。

威厳の欠片もないから」

僕らに関わってからか、あいつは昔よりだいぶ俗っぽーー人間っぽくなった。

見た目は成長してるが、威厳ということに関して言えばむしろ退化している。

「でも…………やっぱり神様ですから…………」

「本人が聞いたら喜びそうだ」

「よーし!じゃあさっさとご飯を食べてギルドに行くよ!

おじさん、もう一杯おかわり!」

「早く行くなら追加注文しないでくれるっ!?

というか、それもう四杯目!」

さり気なく限度を超えて飲もうとしたウサリィを慌てて止める。

気をつけておかないと三日四日で全部ウサリィに食い潰されそうだ。

ジュースが飲めなくて文句を言ってるウサリィを見ながら、注意しておこうと改めて思うのだった。

ーーーーーーーーーーーーー

食事を終えた僕たちはカノンの案内でギルドに向かって歩いていた。

その途中、僕は前から思っていた疑問を二人に言ってみることにした。

「そういえば二人はさ、クレアに会ったらどうするの?」

「ん?どうするって?」

ウサリィが目を瞬かせ、カノンが首を傾げる。

「いや、僕は二人には話した通りクレアの手伝いをする気だけど、二人はそこまで付き合う理由はないでしょ?

クレアに会ったらやっぱり自分の場所へ帰る?」

もちろん、そうだったら寂しいが仕方ない、二人には二人の居場所があるだろうから。

「いや、私はこのまま付いていくよ」

「私も…………」

「そうだよね、やっぱり付いてーーーえ?」

今度は僕が目を瞬かせ二人を見る。

「えって、付いていったらダメなの?」

「い、いや、そんなことはないけど……………二人は良いの?それで」

「だって私、元からあちこち移動しながら暮らしてたし。

それに一人でいるよりクロミネと一緒の方が楽しいし、クロミネは私を売ろうとはしないしね」

ウサリィは瞳を真っ直ぐ向けながら言う。

ウサリィにとって僕は信頼できる人だと思ってくれてるらしい。

嬉しい気持ちになりながら僕はもう一人にも理由を聞いてみる。

「カノンは?ギルドにも入ってるんだよね?」

「私も…………元々はあの人を探すために…………入ってましたから…………」

カノンの言うあの人って言うのは、例の忍者の人か。

「それに…………私の入ってるギルドは………各地に支部があるので……………大丈夫です………」

二人ともどうやらこのまま付いて来てくれるらしい。

「ありがとう、二人とも。

嬉しいよ」

「でしょ?だから今度からハチミツジュースを五杯までにーー」

「それはダメ」

「ちぇ」

「…………ふふ………」

そんなこんな雑談をしながらしばらく歩くと

「あ、ここです…………」

カノンが一見普通の宿屋のような場所を指差した。

「ここ?」

「はい………」

「何か思ってたより地味だね~」

ウサリィの失礼な発言にも頷きそうなぐらい、見た目にはギルドがあるようには見えない。

「まあとりあえず入ってみようか」

「うん」

「…………」

僕は木の扉を開け中に入るーー入った瞬間、僕は素早く剣を抜き自分の体を守るように構えた。

直後

ギインッ!!と僕の剣と何かがぶつかり火花を散らす。

「わわっ!?なに!?なに!?」

「く、クロミネさん…………!」

「…………よくぞ、俺の剣を受け止めた」

ウサリィとカノンが驚きの声をあげる中、突然襲撃してきた人物はそう言って武器を離す。

とりあえず追撃はなさそうだと判断し、僕も剣を納める。

「ヴァ、ヴァルトさん…………!?

………何で………こんなことを………!」

「カノンか」

カノンにヴァルトと呼ばれた男は鋭い視線でカノンを射ぬく。

カノンはその視線にビクッ!と身を震わせるが…………それでも視線は逸らさず非難するような目をヴァルトに向けている。

そんなカノンにヴァルトは驚いたように一瞬目を見開き…………カノンから視線を外す。

それでもカノンはジーとヴァルトから視線を外さず…………ヴァルトは溜め息を吐くと僕に視線を向ける。

「…………外から尋常でない気配がしたのでな。

気絶させて縛ってから話を聞くつもりだっただけだ、悪かったな」

ちっとも悪いと思ってなさそうな声で口早に言うと、奥へ歩いて行った。

「もー!何あいつーー!

嫌な感じ!」

「まあまあ、あの人も悪気はなかったんだよ」

たぶん。

「すみません…………」

「いやいや、カノンが謝ることでもないよ」

「うむ、中々の器量の持ち主じゃな」

「うおっ!?」

突然、老人の声が聞こえ後ろを振り向くと、いつの間にかがっしりとした体格の、白い髭が見事な70歳ぐらいの男が立っていた。

それだけではなく、誰もいなかったはずなのに、ギルドのメンバーと見られる男女が出現し、何事もなかったかのように食事を取ったり、依頼にだろうか、出る準備を整えたりしている。

「こ、これは…………!?」

「わ、私にも見破れなかった幻術…………!?」

「ほっほっほっ、驚いたかね?

どうやらいつもの客と違う気配を感じたからのう、念のためにとしておったのじゃ、気分を害したのなら謝ろう」

さっきの老人が髭を撫でながら言うのに辛うじて「あ、いえ…………」とだけ返す。

と、カノンがその老人を見てポツリと言った。

「あ…………マスター………」

「マスター?じゃあこの人がここの…………?」

「うむ、ワシがここのギルドマスターじゃ」

髭の老人はそう言うとカノンの方に向いた。

「カノンよ、しばらく出てこないから心配したぞ」

「す、すみません…………」

「まあ無事で安心したわい。

まさか、男を連れてくるとは思わなかったが」

「ち、違います…………!

クロミネさんは…………違います…………!」

「ほっほっほっ、冗談じゃ」

「うう~…………」

老人の言葉に赤くなったり頬をむくれさせたりすっかり手玉に取られているカノンだった。

ひとしきりカノンをからかった老人は今度は僕の方を向き、少し目を見開く。

「……………お主、その若さで相当な修羅場をくぐってきてるようじゃな。

一体どんな人生を歩んできたのじゃ?」

「え、いやまあ、ははは…………」

色々と説明が面倒くさいのでそう誤魔化すと老人は「まあ良い」とあっさり引いてくれた。

「さて、ここに来たと言うことは何か依頼があるんじゃろ?

失せ物探しか?それとも人探しか?」

「後者です。実は………」

僕は異世界のことや、神龍ということを伏せて、老人にクレアを探していることと、クレアの外見の特徴を話した。

「……………ということで、クレアを探して欲しいのですが」

「うむ、依頼じゃな。

報酬はあるか?」

「はい」

僕は手持ちの金貨袋からカノンに教えられていた相場の700ゴルドより高い1000ゴルドを出した。

「ほう…………少し高いが?」

「色を付けた方がやる気が出るかと思いまして」

「ほっほっ、若いのに中々心得ておる。

では依頼として受諾した、この街にいるのなら明後日にはどこにいるか分かるであろう、幸い特徴的な外見のようだしの」

「お願いします」

依頼し終え、ふうと一息つく。

二日なら手持ちの金額で十分だろうし、その間はのんびりと待っていれば良い。

「終わった?」

「うん、終わったよ」

ウサリィが退屈そうな顔で欠伸をするのを苦笑しながら見る。

次は宿探しかな、と考えていると一人の女が足早に僕らの方へ向かってきて

ドンッ!!

「きゃっ!?」

「か、カノン!?」

カノンに真っ直ぐ突き進み、カノンを突き飛ばした。

咄嗟にカノンの後ろに回り、勢いを受け止める。

「大丈夫カノン?」

「は、はい…………」

「ちょっとそこのあんた!

今、わざと突き飛ばしたでしょ!謝りなさいよ!!」

激昂しているウサリィがそう怒鳴ると、カノンを突き飛ばした女はピタッと止まり、ゆっくり振り向いた。

金色の髪をいわゆるお嬢様ロールにしているその子は、性格をうかがわせるキツそうな目を僕らに向けている。

「何かしら?羽虫ごときがぶんぶんうるさいわね」

「何ですってーーーー!?」

「まあまあ、落ち着けウサリィ」

両手をぶんぶん振り回し怒るウサリィを捕まえて特攻を阻止する、たぶん払われて終わるだろうし。

「ふん、あの泣き虫カノンがお仲間を連れてきたから見てやろうかと思いましたが…………やっぱり下品で野蛮な連中ですわ、カノンにはお似合いでしょうけど!」

「おい」

「あら?口答えする気ーーーっっ!!?」

俺は瞳を女に向けて少し怒気を含ませて言う。

「調子に乗るなよ、さっきの突き飛ばしで相当腹が立ってんだからな」

「な、なに…………?目が紅く…………それにこ、この殺気……………!?」

女は涙を浮かべ、ガタガタと震えながら俺から距離を取るように後退る。

「ひ、ひぃ…………ごめんなさい、た、助けて…………!!」

「そこまでじゃ」

その時、マスターがパンと手を打った音にハッと冷静になり、女の様子を見て少しやり過ぎたかと思った俺は目を閉じ、冷静さを取り戻してから僕は目を開けた。

カノンにやったことは許しがたいが、脅しに力を使うのは良くないな、それにこんなことで龍の力を使ったなんて言ったらクレアにも怒られてしまう。

僕の様子が変わったことに気づいた女は、一目散に逃げていってしまった。

「ほっほっほっ、お主もまだ青いのう」

「すみません、止めていただいてありがとうございました」

「いや、なに、お主にここで暴れられてワシのギルドが壊されてはかなわんしのう。

それに今のはあやつの自業自得だしの」

ギルドマスターが快活に笑うのを聞いてホッと息をつく。

「でも酷いよね!

わざとあんなことするなんて!」

ウサリィはまだぷんぷん怒っていた。

確かにあの女の態度はカノンに対して明らかにおかしかった。

厳しいを通り越して敵にでもするような態度だったし。

「あの人は何でカノンにあんな態度を取るんですか?」

「ふむ、前にあやつとカノンで依頼を頼んだことがあるのじゃが、その時にいつもの通りカノンのドジで依頼が失敗したんじゃ」

「あう…………」

カノンはギルドマスターの言葉に耳をうなだらせ、顔を俯かせる。

「まあそれはいつものことじゃからの、それだけならあやつもあんな態度にはならなかったのじゃが」

「何があったのですか?」

「その時、見つかってしまった敵の攻撃を見事に捌いて反撃し、その場を切り抜けたらしくてのう」

「あー…………なるほど………」

「え?なに?なに?

クロミネだけで納得してないで教えてよ」

「今まで下だと思っていた相手が実は自分より実力があったと知って嫉妬してるってこと」

確かにカノンは先の魔物との戦闘でもドジでピンチになったものの、見事なカウンターを返していた。

本来、秘めてる実力相当高いと言って良いだろう。

「えーと……………それってつまり逆恨み?」

「まあそうとも言うね」

「ますます許せないわ!」

「まああやつは元から気位が高かったからのう…………」

「おじいさん、ここで一番偉いんでしょ?

だったら止めさせれば良いじゃない!」

「妖精よ、ここは保育所ではない、自分達の問題は自力で解決してもらわんとの」

ギルドマスターの言葉は厳しいが、確かにその通りだ。

だが、ウサリィは納得いかないらしく、不満げな顔をしている。

「まあまあ、あそこまで脅したし、当分はカノンにちょっかいをかけることはないと思うよ。

それより今日の宿を決めに行くよ、ほらほら」

「うー……………」

「カノンも行くよ」

「はい……………」

「お主の探し人が見つかれば、こちらから連絡する。

それまでのんびりと過ごすと良い、何ならここの依頼を受けてくれても良いぞ?」

「いや、それ休みになりませんから。

それに僕はギルドに入ってないですよ」

「お主なら二つ返事で了承してやるぞ?」

「慎んでお断りします」

「残念じゃのう…………」

入ったら最後、こき使わされそうな気配を感じたので丁重にお断りする。

あの陰険メガ…………あの人と同じような目をしてるし。

ギルドマスターの勧誘をあしらいながら外へ出る。

辺りは茜色に染まっていた。

もうそろそろ宿を決めとかないと。

「カノン、ここらで良さそうな宿はない?」

「…………あそこの宿屋は………すごく有名ですよ…………?」

カノンが指差したのは明らかに高級そうな装いをした宿だった。

「ごめん、もうちょっと安そうな宿はない?」

「…………それなら………ここから少し歩きます…………」

「うん、頼んだよ」

カノンが先頭に立って歩き始め、僕たちはその後ろを付いていく。

「カノン、何でさっきの人に怒らなかったの?

どう見てもあの人が悪いのに」

ウサリィはさっきの話にまだ納得できてないようで、カノンにそんなことを言う。

「でも…………私が、依頼を失敗しなければ…………解決できてた問題だから…………」

「でもだからってあんな仕打ちはないでしょ!」

「ウサリィ、その辺にしとこう。

マスターも言ってたけど、これは本人達で解決するべき問題だから」

こういう問題は他人が介入すると話がややこしくなる。

それに向こうは失敗ばかりするカノンが自分より実力があるとは認めたくない、カノンは自分が失敗ばかりするから悪いのだと、それぞれ自分の解決するべき問題は見えてるんだ、後は本人達次第だろう。

「でも、さっきみたいなことがあったら言ってね、今度は冷静に話し合うから」

「クロミネ…………何か顔が怖いよ………?」

「そうかな?」

ごくごく普通の顔をしてるつもりなんだけど。

「…………ありがとう、ございます…………」

ギルドから浮かない顔をしていたカノンも少し笑みを浮かべる。

まあ向こうはともかく、カノンの問題を解決するのは少し難しいかもしれない。

相手がカノンの実力を認めてくれれば良いのだが、ギルドマスターが最後にボソッと言った気位が高い、と言うことはそっちの解決も望み薄だろうな…………。

ウサリィも言いたいことを言って溜飲が下がったのか、それ以上は何も言わず大人しくついてくる。

「あ、着きました…………ここです…………」

カノンは今度は普通の民宿みたいな宿屋の前で立ち止まった。

「うん、ここで良さそうだね」

「私、さっきの宿の方が良いな~」

「ウサリィのジュースのお代わりがなくなっても良いなら」

「あ、やっぱり良いです…………」

木の扉を開けて中に入ると、正面に受付があり、階段を上った所に部屋があるようだった。

「いらっしゃいませ」

受付にいる女の人が会釈して出迎える。

「すみません、今部屋空いてますか?」

「はい、何名様ですか?」

「三人です」

「え?三人…………?」

女の人は訝しげにキョロキョロと辺りを見回す。

「僕と、この子と、あとこれ」

「これって何よ!?」

「よ、妖精も………?

いえ、失礼しました、三名様ですね。

お部屋はどうされますか?」

「二部屋で」

「かしこまりました。

それでは鍵をお渡しします。

食事のサービスはありませんので、ご了承ください」

「はい」

鍵を受け取り、僕は階段を上り始め、カノンとウサリィも続く。

「ご飯は食べに行かないといけないんだね」

「ほとんどの宿屋さんは…………そんな感じです………」

「食事がついてる所の方が珍しいんだよ。

その代わり凄く高いらしいけど」

今の僕たちには夢のような話だな。

それにしても、この世界で妖精も数に入れるとことごとく驚かれるな。

獣人等も普通に街にいるから、亜人に対して偏見がある訳じゃなさそうだけど………。

カノンやウサリィに聞けば分かるのだろうが、下手に聞いてウサリィが嫌な気持ちになってもいけないと思い、聞かないことにした。

考えてる内に階段を上り終え、鍵についている番号の部屋に行く。

「じゃあ僕はこっちに行くよ」

「あ、じゃあ私も」

「ウサリィとカノンは一緒の部屋ね」

「えっ、何で?」

「いや、何でって……………ウサリィもカノンも女の子でしょ?

僕は男なんだから男女別々にした方が良いじゃないか」

「別に気にしないのにー」

「私は…………ちょっと………恥ずかしいです…………」

二人それぞれの反応を聞きつつ、僕は手を隣の部屋にひらひらと振った。

「とにかく二人はそっちだからね」

僕は自分の部屋に入り、その後ウサリィとカノンも部屋に入る音が聞こえた。

二人で一部屋になるが、まあウサリィが小さいから大丈夫だろう。

「ふう、疲れた…………」

僕は剣を外し、ベッドに寝転がる。

やっとクレアと合流できそうな目処がつき、気持ち的にも若干の余裕があるのを感じる。

思えばこの世界に来てまだそんなに経ってないのに何だか色々あったなぁ…………ウサリィと出会ったりカノンと出会ったり、SS級モンスターと戦ったりSS級モンスターかと思ったら盗賊達と戦ったり…………何だか戦ってばかりのような気がするが。

でも何だかんだありつつも右も左も分からない異世界で、これほど早くクレアと合流できるのも二人に出会ったおかげだ。

「そういえばあの人は大丈夫かな…………?」

クレアと一緒に異世界に飛ばされた確か連夜という名前の男の人を思い出す。

クレアがレンテに言われて、くじ引きで選んだとてつもなく運の悪い人だ。

この世界の人に助けられて、クレアと一緒に泊まらせてもらえたところまでは知ってるが、その後どうなったかは分からない。

まあクレアと一緒ならたぶん大丈夫とは思うけど…………あいつはトラブルの元でもあるから体より精神の方が心配ではある。

そんなことを考えていると、眠気が襲ってきた。

今日だけでも盗賊達と戦ったり、ギルドでは不意打ちを受けたりで大変だったからだろうか。

「明日は…………何を………しようかな…………」

そんなことを呟きながら僕は眠りについたのだっ

「クロミネー!遊びに来たよーー!」

ーーようとした時に、扉の外からそんな声が聞こえてきた。

「う、ウサリィちゃん…………クロミネさんはもう寝てるんじゃ…………」

「そんなことないよー。

だって私は眠くないもの」

どんな理屈!?

「クロミネー早くー。

またクロミネの世界の話を聞かせて欲しいよー」

「……………」

流石に眠いのでウサリィの言葉を無視する。

しばらくすれば、眠ってるだろうと諦めるだろうしーー

「あのチトセ?とかミラとの恋愛話も聞きた」

「今すぐ開けるからそれ以上は言わないでくれ!」

僕は慌てて飛び起きて扉に向かいつつ、どうやら今日はゆっくり休めそうにないな、とため息をつくのだった。

ーーーーーENDーーーーー

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