0-45 受け継がれる意志
※※※※※
新星暦二九九七年五月十五日
オレは皇帝の命により帝都に向かうことになった。
「じゃあ、行ってくるよ。リンさん」
「行ってらっしゃいませ、ご主人様」
「だから、その『ご主人様』はやめてくれ。ノアでいいよ。それに敬語はいらない」
「そうもいきません。あなたは幾ら仮とはいえアズバング様から指名を受けてハズラーク家の当主になったのですから」
アズバングさんは生前、遺書を残していた。
それは次期当主をオレにするものだという。でも、オレはそんな重役は背負えない。
「仮だからな。分家がちゃんと皇帝から爵位をもらうまでだから。せめて、ノアって呼んでくれ」
「わかりました、ノア様」
オレは荷物を持ち、振り返る。
「じゃ、家のことは任せます」
「お任せください。あ、ちょっと待ってください」
リンさん何かを取りに行ったかのか急いでその場を去る。
すぐ戻ってきた。
何やら布に包まれた剣ぐらいの大きさの物を持ってきた。
「これを持って行ってください」
「これは……」
オレは布の中身を見る。すると、それは剣そのものだった。
「それは奥様がかつて天性魔術を覚醒させたときに生まれた奥様の最初の剣です。生前、奥様から『私が居なくなったとき、これをノアに渡して』と言われていました」
そうか。
これはおそらくフレイがオレに遺してくれた魔剣だ。
オレはその剣を手に取る。すると、その剣は光を発生させてすぐに消えた。
「……」
「……」
「これドッキリじゃないよな?」
「……はい」
フレイなら絶対にやりそうな悪戯。
本当にフレイの魔剣か? まあいいや。
「行ってきます」
「行ってらっしゃいませ。あの、いつお戻りますか?」
「……そうだな。次は友達作って戻ってくるよ」
そう言ってオレはハズラーク家の屋敷を出て行った。
※※※※※
帝城アルカナディアに着いた。
城門につくと、すぐにダンベルがやってきてすぐに玉座に案内された。しかし、いつ見てもここは無駄にデカい。
「陛下、かの者を連れて参りました」
「ようやく来たか、フレイ・ハズラークの弟子」
「いつになく偉そうだな、皇帝」
「我は皇帝だ。偉そうにするのは当然だ」
ダンベルが立ち膝をついているのにオレは立ったまま。
周囲の貴族の視線が凄い。
「それでオレに何の用だ?」
いきなり来いというものだから来てやったんだぞ。
しょうもない用ならすぐ帰る。
「用は貴殿に対する報酬だ」
報酬? ああ、そういうことか。
「貴殿は五大魔術師フレイ・ハズラークが成しえなかった『魔術師殺し』討伐を見事成功させた。これは寛大な功績である。すなわち貴殿にはこのぐらいの報酬が妥当だと考えた。持ってきてくれ」
「御意」
側近が何人も荷車を運んで持ってくる。
ダンベルはもとい周囲の貴族も驚愕する表情を見せた。
なんだ?
「これはほんのお礼だ。ぜひ受け取ってくれ」
「は?」
「これは約三十億ゼニスほどの宝石たちだ」
三十億ゼニスはおよそ一番大きい村を買えるぐらいの金額だ。
「陛下、そんなものをあんな子供に渡してはいけません」
「貴殿は我に不当だと言いたいのか? 彼は五大魔術師級の敵を倒したのだぞ? むしろこのぐらいでは足りないぐらいだ。彼がもっと欲しいというのならばいくらでもくれてやろう」
「ですが!」
「ならば貴殿は『魔術師殺し』を倒せるのか。できないだろう? 無論、我もだ。彼には最大限の褒美を与えたい。異論はあるかね?」
「いえ。すいませんでした」
貴族はすぐに手を引いた。
「他に報酬はいらぬか、ノア殿」
「いらねえ」
オレはすでに決まっている。
「ほう、いらぬか。貴殿が一生遊べる大金であるぞ」
「その大金は全部、奴隷買収に使え」
周囲の貴族は騒然となる。
奴隷買収はフレイがかつて行っていた活動。
奴隷を買ってはハズラーク領に招き、自由に過ごさせる。
そのおかげか、今ではハズラーク領の人口の六割が奴隷で村全体が身分関係なく互いを思い合っている。
これがフレイが望んだ理想郷。平等の世界。
「わかった。そうしよう。ほかに報酬はいらぬか」
他……そうだな。
「なら二つある。一つはフレイが『魔術師殺し』討伐成功で殉職したことにしてくれ」
フレイが死んだのはまだ噂でしかない。
なら、皇帝がフレイが『魔術師殺し』討伐で殉職したと公言すれば、フレイの悪い噂は無くなるはずだ。
「良いだろう。後日我からそのことを民衆に向けて公言しよう。もう一つは何だ?」
もう一つは――――
「私立タレミア魔術学園を受験する。それの身元引受人になってくれ」
魔術学園には興味なんて無い。
でも、フレイはオレに同級生がアリアしかいないことを気にかけてくれていたことは知っている。
オレは今年度、高等学校の受験資格を持っている。
一度、行ってみようと思った。
「それだけで良いのか?」
「ああ」
「ならば、良いだろう。了承した。ただし、我からの頼みを聞いてもらえないだろうか?」
「??」
? なんだ?
「偉大なる魔術師フレイ・ハズラークが亡くなったことで一つ、魔術師団に大きな空席ができた。そこに君を引き入れたいと思うのだが、どうだろうか?」
そんなの最初から決まっている。
「もちろんだ」
※※※※※
こうして、オレは私立タレミア魔術学園に入学することができた。そして――――
「どうして、あなたみたいな魔力も持っていないような無能力者がこの学園を、しかも首席で、入学できたの?」
オレは今、最大のピンチに見舞われていた。
これはオレが始めた物語。
――――オレはフレイの意志を受け継ぐ。
序章 追放編 完
長らくご愛読頂き、ありがとうございました。
これで序章は完結とさせて頂きます。
どうだったでしょうか?
学園ものと言ってた割に最初まさかの過去編に入り、追放ものだと言っていたのに追放ざまぁも無い。
しかし、ここまで読んでくださった全ての読者にもう一度、感謝申し上げます。
ありがとうございました。
この作品を面白いと感じたら、僕はやはり書籍化を目指している身なので下の星のマークを★★★★★にしてもらってブックマーク、及びレビュー、感想頂ければ感謝してもしきれないぐらい僕は嬉しく思います。
引き続き、この「魔法学園の無能者〜魔術全盛の時代、魔力を持たない追放者が世界最高峰の魔術師へと駆け昇る!〜」をよろしくお願いします。




