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0-44 絶剣


 ※※※※※


「最終ラウンドだ」


 オレは再び剣を握りしめる。


 オレの人生は生まれた時から地獄そのものだった。

 暴力、軽蔑、いじめ、まるで人では無いかのように蔑まれるような人生になるはずだった。


 魔術の才が無い時点でゴミのように扱うライトマン家じゃあオレの居場所なんて部屋を与えられるだけで十分すぎる仕打ちなんだ。


 どれだけ努力しても報われない。

 周りからはどれだけ倒れても倒れたところを強引に踏まれ、出された料理はまるで餌かのように不味く、あたかも「ノア・ライトマン」という一人の人間がいなかったかのような、そんな地獄が毎日続いた。


 終いにはライトマン家を追放され、唯一慕ってくれた妹を泣かしてしまった。


 そんな地獄をフレイは、ハズラークの皆が救ってくれた。

 今までに味わった事もない料理が出され、その料理をフレイ、アズバングさん、リンさんと笑顔で一緒に食べる。


 今思えばこれが幸せなんだと思う。


 オレはフレイの修行に耐えながらもこの楽しみはずっと変わらないだろう。そう思っていた。


 なのにその幸せは突如として消える。


 ――――お前のせいだ。


 お前さえいなければその先の人生、ずっと笑えていただろう。

 オレがやっと手にしたこの幸せをお前が潰したんだ。


 これは復讐じゃない。

 これは先に逝ったフレイがくれた、オレが魔術師であるという証明。

 これは魔術師となった最初の物語。


「この一撃でオレは魔術師になる」


 さあ、幕を閉じよう。

 この剣術は光の剣術史上最高の出力の剣術であって、唯一の詠唱剣術。


「生点と死点が締結する。

 孤高の口笛。高鳴る一心の雄叫び。 

 世界を統べる大地はこの一刀に震え

 世界を統べる大海もまたこの一刀に震える

 画して我、ノア・ライトマンはこの一刀に全てを集約する。

 怒り、悲しみ、絶望、虚無、あらゆる負の感情を断罪する。

 希望よ。

 自由よ。

 この一刀にて全てを解決する。

 さあ、我が一刀で全てを照らせ――――」


 奴も動く。


「そうか。貴様が、貴様こそがクインテットか!! ならばおれも最強の一撃で迎え撃つ。この魔術は貴様でも殺せるぞ!!」


 両者ともに不足なし。

 己の実力のみがこの勝敗を喫する。


「魔界術《悪魔の極致(デーモンロード)》――――!!」


 黒い謎の魔力が徐々に黒煙としてオレのもとに向かう。


 ありがとう。

 オレを支えてくれて。


 ありがとう。

 オレを助けてくれて。


 ありがとう。

 オレを強くしてくれて。


 ありがとう。

 オレを魔術師にしてくれて。


 今、この地この場でオレは二人に『恩返し』する。


『……行っちゃうのね』

『ああ、行ってくる』

『……絶対にこっちに来ないでね』

『オレを誰だと思ってんの。オレはフレイ(お前)の弟子なんだぞ』

『……』

『心配なんかすんなよ。絶対に道半ばでそっちに行かねえって。だから――――』



 ありがとう。そして――――。



「死にやがれ!! ノア・ライトマン!!」


 偉大なる魔術師フレイ・ハズラークとその夫、アズバング・ハズラークに敬意を込めて。


「光の剣術“【絶剣】永劫の十字架”」


 襲い来る黒煙を奴の《超速再生》の根源たる核ごとぶち抜き、潰れた教会ごと《煉獄》の消滅と共に光の十字架がこの森一帯を眩しく照らした。



 ――――さようなら。



「おい、起きろお前たち!」

「……な、なんですか?」

「『魔術師殺し』が死んだ! ノア君が討伐してくれたぞ!」

「……!! 本当ですか!?」

「それは一大事だ!!」

「すぐに彼のもとに行くぞ!! 彼を帝都まで我々が安全に連れ戻す!」

「「わかりました!!」」


 ダンベルたちがこっちに来る。


「ノア君! ……!!」


 オレは立ち膝で星々が鮮明に澄み渡る夜空を眺めていた。


 やった。

 オレはやったんだ。


「くっ、っははははははははははは!!」


 オレは『魔術師殺し』を殺したんだぞ!!

 フレイ、見てるか!! お前を超えたんだ!! なのに……。


「はははははっ、あっ、あぁあ、ぁぁぁああああああああああああああああ!!」


 フレイと過ごしたこの六年間が、思い出が込みあがる。


『こら、ノア好き嫌いしない!』

『うるせえ、無理なもんは無理だ!』

『いいじゃないか、フレイ。彼の好きにさせてあげなよ』

『ダメ! そうやって甘やかしてたらダメな大人になっちゃうでしょ!』

『オレはもう大人だ! 自分の食うもんは自分で決め――――んっ!』

『おいしいでしょ……?』

『くそっ、鬼師匠め……』


「あああああああああああああああああああ!!」


 ずっと溜めてきた涙がここで零れ出す。


 ちゃんと、ちゃんとお別れをしたはずなのにオレはまだ――――


 フレイとアズバングさんとこれからも一緒に居たかった。




 新星暦二九九七年五月十日


 魔術師ノア・ライトマンによって『魔術師殺し』討伐、成功。


 オレは今日で十五歳の誕生日を迎えた。

次回

序章 完結


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― 新着の感想 ―
[一言] 彼が行った事は、「復讐」なのか、「恩返し」なのか...。それは本人にしか分からない。 でも、彼が倒したのは、紛れも無く「国の最高魔術師」を何人も葬った人物である。 異能の力に頼って戦って…
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