第1話01
目覚めたとき、志藤 雅鷹はそこにいた。
一面に白い景色、周りには何もない。
『何だ・・・?俺はいったい・・・』
見渡しても誰の姿も声も見えず聞こえず・・・。
「誰か!誰か居んのか!?」
遠くで反響する自分の声。
ここが限りなく広い世界であると判断した。
コツ、コツ、コツ・・・
突如後ろ足音が聞こえてきた。
高いヒールの音、女性なのだろうか。
「誰だ!?」
雅鷹は勢いよく降りかえった。
しかし誰もいない。
「・・・気のせいか」
足音は自分の気のせい、そう思った雅鷹は
どうすれば元の自分のいた場所に戻れるのか
考えていた。
しかしその考えをさえぎるように、
少し低く大人びた、されど暖かい雰囲気の声が聞こえてきた。
「マサタカくん・・・志藤雅鷹くんですね?」
「!」
声は上から聞こえてきた。
雅鷹はとっさに上を見上げた。
そこには男性、というにはどこか女性らしさがあり
きれいに伸びた黒髪、そして焼けるような紅い瞳をもった人が
雅鷹の姿を見降ろしていた。
「初めまして、雅鷹くん。私は雨鼓、上の世界の監視官です」
「は・・・・はぁ」
何を言ってるのだろうか。
上の世界、監視官。
雅鷹は目の前にいる人物のいってることが理解できなかった。
「えーと・・・よくわかんないけどさ、雨鼓さん?ここはどこなわけ?」
「ここですか?ここは境目ですよ。上と地上の、ね」
その言い方があまりにも恐怖心を抱かせたので、
雅鷹は続きを聞くのをやめた。
『上というのはどういう意味ですか?』
しかし自分は元の場所に変える方法を知らない。
頬をつねっても痛くはない、すなわち夢なのだが、
起きようと思っても起きられないのだ。
「あ・・・1つ聞きたいんだけど、俺は何でここにいるんだ?
俺は自分のベットで寝ていたはず・・・」
「それは簡単ですよ。ここは”夢の中の世界”なのですから」
「そんなん知ってる。だけど起きれないんだよ。夢はさめるもんだろ?」
「では、あなたは”覚めることのない夢”の中に迷い込んだ、
それならつじつまが合うでしょう?」
雅鷹は背筋あ凍る思いをした。
雨鼓は笑っている、確かに笑ってはいるが、
目は全く笑っていない。
雅鷹は腰が抜けて、そのまましゃがみこんだ。
「んだよ・・・それ。・・・そんなんの信じねぇぞ・・・!」
「あぁ、良いですよ。だって、嘘ですから」
「は?」
雅鷹は自分の耳を疑った。
しかし、今確かに雨鼓は”嘘”だと言った。
『なんだよ・・マジな顔で言いやがって・・・』
腰が抜けた自分をあきれながらその場に立ちあがった。
「大丈夫ですよ、あともう少しすれば目が覚めるでしょう」
「あ、そう」
もう何も言い返す気がしない。
あきれながら座った時に少し汚れた膝やお尻をはたいていると、
自分の足が消えかかっているのを見た。
「んな!?何だこれ!」
足だけではなく、下半身も消えかかっている。
「お別れです雅鷹くん。また会う時を楽しみにしていますよ」
「また?またってなんだまたって・・・!」
「あ、それから」
雨鼓は先ほどの”わらっていない顔”を作り
静かな声で呟いた。
「鷹尋くんによろしく伝えといてください」
「!?」
その時視界が真っ黒になった。
そして、自分の体を襲う違和感のある感覚。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
落ちていく感覚。
下は真っ黒の世界。
どこにもつかむところはない。
『死ぬ!』
雅鷹はそう確信し、目をつむった。




