就職
幸子が求人情報をみながら言った
「一緒にここで働こうよ!」
街中に8階建ての大きなホテルがリニューアルオープンするのに募集していた。
正社員か。なれるかな?
あまり深く考えず父に付き添ってもらい面接を受けに行った
面接をしてくれた課長は
何の経歴もない履歴書を見てこう言った。
「学校も辞めてしまうくらいなんだから、仕事も続かないんじゃないですか?」
悔しかった
見返してやりたい
そう感じた
面接は採用だった
その日の夜、家族皆で
「就職おめでとう!」そう言ってもらいお祝いした
父が缶ビールを渡してきた。
一緒に飲んで乾杯した
ホテルまでの車の運転を母が心配し、行きと帰りと助手席に父を乗せていく日があった
ホテルのラウンジでサイフォンでコーヒーをたて高級なソファーに座るお客様に跪いて提供する
白いブラウスに金のバラのコサージュをつけ、長い黒のロングスカートを履く
当時考えられない何と一杯1200円という料金だった
ロングスカートは丈が長すぎて短く切ってもらった。
ラウンジは身長160cmからという募集だったようだが
私は150cmしかないチビだった
課長は「いやぁ。失敗したなぁ、こんなに小さいと思わなかった」
ラウンジは交代勤務で正社員は私と平田という40代くらいの男性だった
昼の2時から夜の1時まで
「未成年の女の子をそんな時間まで働かせるなんて」
母が文句を言っていた
朝から夕方の勤務もあったが平田さんは自分を昼の勤務にして私を夜に入れることが多かった。
幸子は私と同じ所で働きたがったが友達同士はダメという理由で
近くにある和食店に配属になった。
私は真面目に働いているのに幸子は、度々ラウンジまで来てはお喋りをしていく。相手をするのが嫌だった
幸子が休みの日はラウンジに電話がかかってきて長々と彼氏の話を聞かされる
仕事中。迷惑!
でも言えなくて相手をしていた
幸子は朝食の勤務で朝6時から仕事していた。
私は深夜に帰り朝は遅くまで寝ていた
毎日朝早い時間に幸子から電話がかかってくる
「マキちゃん家にいますか?」
お母さんは「うちの子は遅くまで働いているんで!まだ寝てます!
」そう答えたと言っていた。
自由を奪われているようでうんざりし始めていた
平田さんは変わっていて皆に嫌がられていた
メモに平田さんの文句を書いてはロッカーに貼り付けて読む
そんなことをしていたある日
その手紙が貼り出されていた!
相当驚いた!
「ねえ平田さん女子の更衣室に入ったってこと?」
気持ち悪い!
平田さんと働くのがどんどん嫌になっていく
「楠本ちゃん、体調悪くてさぁ。帰らせて貰ってもいい?」
遅番を代わって夜仕事をしていた。その時だった
「楠本ちゃん!頑張ってるぅ?」
平田さんが真っ赤な顔で現れた。酒臭い!
「ディナーに彼女と行ってきたんだぁ」
呆れて物が言えなかった
課長に報告した
課長はラウンジのホワイトボードにこう書いて行った
平田くん奥さんに報告しておきます
その次は父が亡くなって。と平田さんから連絡が入り仕事を休んでいた
課長が香典をもち平田さんの家に行った。
何とお父さんは生きていて玄関先に出たという。
「息子は出掛けていておりませんが」
課長も「ダメだなあいつは」と文句を言っていた
平田さんはとにかくサボってばかりいて、裏で座ってタバコばかり吸っていた。
頭にきて私は言った
「平田さん!ちゃんと仕事して下さい」
平田さんは怒りはじめ口論になった。
「お前みたいなアバズレその辺のキャバクラでも働いてろ!」
課長に興奮したまま言いに言った。
「平田さんとは働けません!」
「私辞めさせて貰います!」
引き留めてくれるだろうと思った課長の一言はこうだった
「どうぞお元気で」
悔しかった
後から課長にもう一度働かせて下さい!と頭を下げた
平田さんは首になったが、私はラウンジには残れなかった
配属はもう一つあるホテルのフランス料理店だった




