24時間テレビ
作業していたら、制服を新しいのに着替えてくるように言われた
着替えて戻った
丁度24時間テレビの収録であった
前に出るように言われて4人で、行く
ジャニーズの男の子が、スケッチブックを片手に、今からこの歌、歌って下さい!お願いします!と言った
「ビリーブ」という曲だった
「私、その歌知らないんで」そう言って厨房に戻ろうとすると
「待って!カンペ出すから!口パクでいいんでお願い!」
口パクで出る意味あるのか?
そう思いながらバームクーヘンを持たされ、前に立った
歌に合わせて、バームクーヘンをこうして!
言われたままバームクーヘンを持ち歌が始まる
小声で「次は上に!」皆でバームクーヘンを両手で上へ。左右に揺らしながら歌うのだった
放送を見たママ友からは、早速ラインがくる
「見た!!いつもと雰囲気違ってカッコいい!」
そう言われた
撮影を見ながら後は仕事に戻ったが、不思議だなと思ったのは、食べるシーンから始まり、次にショーケースを眺めて選ぶシーン。最後に入り口から入ってきて「いらっしゃいませ!」と、やるのだった。
何故に逆??と思った
仕事は開店前は緊張感を、和らげるためかいつも、ガンガンに激しい音楽が流されている
開店するとクラッシックに変わる
「今日も1日よろしくお願いしまーす!オープンします」その掛け声で扉をあける
パティシエは皆若い人ばかりだ
特に太っちょの野田さんという男の子がやたらと目立ち、面白い人だった
フルーツを隣で剥いていると、わざと足を踏む
「あの、足を踏まないで下さい」
そう言うと「誰がデブだよ!」と笑う
勝手に冷蔵庫の中の物を食べ、入ってきた私の口に、食べかけを無理やり突っ込む
「おい誰か食ってるだろ!!」シェフが言っていた
スーシェフはショコラティエで、乾燥部屋という場所で、スプーン1本を巧みに操りチョコ細工を作る
ガラス越しにお客様が、興味深く見ている
「俺、動物園にいるみたいだよ」
そういい笑う
冗談が多く楽しい職場だった
よく来ていたさっちゃんは、ショコラティエの大ファンになった
ガラスに張り付いてガン見する
「ママ!見て!」
「あの人魔法が使えるんだよ!スプーン1本で、こうやってこうやってね!」
いつもスーシェフはさっちゃんに手を振ってくれていた
「たったん!お手紙書くね」
書いた手紙はコックコートに白い帽子をかぶった絵
こくさんえ
おいしいけえきありがと
そう書かれていた
翌日スーシェフに渡すと、「もてますねぇ!」と言われて嬉しそうに手紙を、ホワイトボードに貼ってくれていた
野田さんは「さっさとやれよ!ババア!」と私にだけいつも絡んでいた
「ほんとのババアには言えないもんね!」と言うと
「カーッ!幸せなやつやなぁ!お前は!」そう言う
野田さん当時26歳、私が37歳だった
仕事が終わるとさっちゃんを保育園に迎えに行くのだった
そして毎晩焼酎を飲み続けて、夜は一人でいつも考え込んでいた
「家まで建てるとか喜ばせて置いて一気に突き落とすとは」お母さんが嘆いていた言葉を思い出す
表面では明るくしていても病んだままの気持ちは、ずっと変わらないでいた
豊くんに酔ってメールした
連絡先からは削除してあるし、ラインも繋がっていないが電話番号は覚えている
「私に謝ったことはあるのか」
そう送ると、謝ればいいの?
じゃあ多分俺が悪いと返事があった
多分どころではないだろう
メールしなければ良かった
考えて考えて寝れず、ひたすら眠くなるまで焼酎を飲むのだった
特にお母さんは、酒をやめろと何度も言っていた
「マキ、お前は毒を飲んでるんだよ」そう言っていた
やめなければならない
焼酎のパックにマジックで大きく「毒」と書いた
さっちゃんはまだ小さい
まだ飲んでもいいだろう
そう思っていた




