01. 手紙
そよ風がベージュ色のカーテンを揺らし、午後の陽射しをからっぽの家の中へと運んできた。
少女は部屋中のカーテンをすべて開け放ち、一脚の木製の椅子を窓辺へ運んで腰を下ろした。庭に佇む赤く色づいた楓を眺めながら、その思いは次第に遠くへと漂っていく。
ほとんど毎月のようにここへ戻ってきていた。いつからそんな習慣になったのか、自分でも思い出せない。
戻ってくるたびに、前の住人が遺した品々を少しずつ整理し、それ以外の時間はただこの窓辺に座って、ぼんやりと過ごしていた。
けれど、今日がおそらく最後になる。
家の中はほとんど片づき、この部屋だけが残されていた。最後の引き出しを引くと、底に押し込まれていた古びた封筒の上へ、ちょうど陽光が降り注いだ。
それは飾り気のない、宛名も書かれていない一通の手紙だった。
少女は一瞬息を呑み、そっと封筒を取り上げる。
ところどころ墨がにじんでいたものの、差出人の几帳面な筆跡は今なおはっきりと読み取れた。
少女は黙って手紙を読み進める。
そして最後の一文へたどり着いた瞬間、胸の奥に静かに積もっていた感情が、一気にあふれ出した。
――「帰ってくるまで、待っていて。」
手紙の末尾には、日付が記されていた。
それは十年前の日付だった。
これは、とうとう送り出されることのなかった手紙。
十年の時を経て、ようやく受取人の手へ届いたその手紙は、送り主だけを先に遠い場所へ送り出してしまっていた。




