幻想の中心で絶望を叫ぶ【番外編SS】
<前置き>
『外敵女騎士のわたしが竜王様の寵妃に!? 降伏から始まる溺愛生活』番外編ショートストーリー
時間軸は本編最終話前。
単話で読めます。※今回は敵サイドのひとり語り注意
タイトルは聞き覚えのあるものを拝借してつけています。
(※ランティス視点。レラがランティスを成敗した以降の話)
斬激を受け、地面に倒れ込む。
剣を握るどころか、起き上がることすらできなかった。
もう、終わった。
俺を見下ろす女騎士に今生の願いを伝える。
「くっ、殺せっ……」
最悪の結末だが、やっと終えることができそうだ。
血で血を洗う糞みたいな人生。未練などなかった。
このまま惨めに生きていくのが恥ずかしい。
拷問や懺悔させられるために生かされ、苦痛を与えられるくらいなら、潔く今ここで死んだ方が……。
その想いもなきにしもならず。
だが、俺の想いは……。
レラの手で俺の全てを終わりにして欲しい。
ただそれだけだ。
「断る。わたしの剣をこれ以上穢れた血で汚したくない」
俺の望みはあっさりと打ち砕かれた。
「くっ……、くぅ……、うううぅ……、うぉーー、くそーーっ!」
うめき声が叫びに変わっても、女騎士は振り返ることなく、俺を置いて去っていく。
動くこともできず、ただ横たわっているだけの俺は惨めだった。
そう、あの時よりもずっと惨めだ。
司祭の慰みものとして体を捧げた幼少期。体の奥で覚えたあの痛みよりも、ずっと。
歪められた性愛により、自分が愛する人間が男だと悟った。
愛する騎士に体を捧げ、結ばれた。そこまでは良かったが、関係を明るみにしないため、口封じの代償として男達に体を弄ばれた騎士見習い時代よりも、ずっと。
俺が仕えた愛する騎士が目の前で外敵に殺された。それを何もすることができずに見ていた時よりも、ずっと。
ヘスティア王国の騎士団員となり、レラを見つけた。愛した男の面影を見て一目惚れ。
レラが女だと知り、勝手に心が打ち砕かれたあの時よりも、ずっと。
強く、頼もしく成長していくレラに、愛する男の幻影を見てしまい、お前が男であったならとひとり法悦に浸る虚しい夜よりも、ずっと。
ずっと、ずっと、ずっと、ずっと……。
今の方が惨めだ。
ジョアン。
目の前でお前が殺されるのを見たあの日から、俺の地獄が始まったんだ。
大切な人が死なずに済む世界にするために、武力を持って周辺国を平定し、全世界を統治する。
途方もない野望が始まった。
戦いに次ぐ戦いも、この野望があるからこそ乗り越えられた。
……だが。その野望が断たれた今は、俺に生きる価値などない。
いっそのこと殺して欲しかった。
やっとジョアンのところに逝けるのに。
くそ。レラのやつ……。最後の最後まで腹が立つ女だ。
俺が女を抱けたのなら、ぐちゃくちゃにして泣かせてやるのに。
ジョアンの面影を見ていたのが馬鹿馬鹿しくなるくらい、今のお前は別人だ。
今のお前の姿を見れば、夜の妄想のお供にすることはなかっただろうし、騎士団に誘うこともなかっただろう。
ジョアンの幻想を夢見て、ジョアンが居ない絶望に嘆く日々がまた始まってしまうのか……。
憎たらしいほど綺麗な朝焼けの下で俺はさめざめと泣いた。




