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異民族の友人 (☆☆☆☆)

 竜王に手を握られ、また頭に熱がのぼってくる。


「お前の好みは我らと異なることは心得た。苦手なものは用意しないと誓う」


 一転しての高待遇に面くらい、疑問がわいてくる。


「……教えて欲しい」

「なんだ? 何でも答える」


 竜王の直視できないわたしは握られた手に視線を落とした。


「わたし生かしたのは気まぐれではなかったのか?」


 その問いかけに竜王は言葉を詰まらせた。


「……その言葉を覚えていたか。確かに俺はそう言った。だが、俺の真意は違う」


 真意? なんだろうと思いながら質問を続けた。


「……確かにわたしは降伏した。竜人族に従って、ここで生活すると言った。……しかし。わたしは竜人族の土地や資源を奪いにきた侵略者の手下だ。なぜ生かす? ……なぜ手厚く迎え入れようとするんだ。」


 心のどこかで信用できない。

 相手の問題ではなく、自分の問題だ。

 降伏して大事に扱われた例など聞いたことがないからだ。


 竜王の瞳が切なそうに潤む。


「正直に話そう。……確かにお前は侵略者の手下だった。だが、降伏するならお前は特別だ。……最初はお前のことを手荒く扱ってしまった。それは降伏させるように差し向け、お前を我が手中に納めるための手段であって、本意ではない。もう一度言う、レラ、お前は強くて、美しい。俺の女になって欲しい。大事に扱う。……これでも不満か?」


 要するに、一目惚れした女だからと言うことか……!?


 これは降参だ。降参しかない。男の告白を断る方法は心得ていない。

 何より、竜王の熱意と向けられる眼差しに耐えられそうにない。あれこれ考えてもひとり相撲になってしまうだけだ。


 信用するしか、ない。


 もうひとつ、わたしの中で解していない疑問が残っている。


「俺の女って……。恋人のことか?」


 そんな単語を初めて口にしたので、はっきり喋べれずモゴモゴしてしまう。


「恋人? お前の国では恋人と言うのだな。」

「えっと……」


 意味はわかっているのだろうか? 辞書に載っている記述を伝えた。


「恋愛関係にある男女のことを恋人というんだ」

「恋愛?」


 竜王は首を傾げたのでわたしは驚いた。

 一目惚れも恋のひとつだと思うが、本人は恋をしている自覚がなさそうだ。欲しい物を手に入れたい純粋な欲求のようだ。


「よくわからないが、恋愛とやらをすれば、お前は俺の女となってくれるんだな」


 この展開をようやく理解した。

 わたしは竜王に全力で口説かれている。降伏したことで、竜王の中ではわたしが「俺の女になる」ことを了承したとみなしているが、改めてわたしの口からある台詞を引き出そうとしているのだ。「あなたの女になります」と。


 考えを巡らせていると、一瞬のうちに竜王がこちらに寄ってきた。

 竜王に押され、わたしはどさっとソファに倒れ込んだ。見上げると竜王の顔が近くに……。


(わ、わーー!!)


「この匂いだ……。たまらないな。俺を誘っているのか?」


 熱を帯びた鋭い瞳が、わたしを恋の穴に落としてやろうと襲い掛かる。


 唇に覆い被される前に、ちゃんと言わなくては……!

 わたしは竜王の顔面に向けて叫んだ。


「れ、恋愛とは、互いのことを知ることから、始めるんだ……! わ、わたしはまだ、あなたのことを何も知らない。わからないことだらけだと、相手に心許すことが難しい……。だから、ま、まずはあなたのことを教えてくれ。まずは友人から初めていこう……!」


 竜王はぽかんとわたしを見下ろしていた。とりあえず、わたしの貞操は守られたみたいだ。


「友人? またお前はわからないことを言う……」


 竜王は照れくさそうに視線を逸らし、咳払いをした。


「保留されたと言うことか。なかなかに手強いな。……だが、面白い。いいだろう。友人とやらから始めようではないか」


 渋々ではあるが、竜王も納得してくれたようだ。

 やつが友人の意味を理解していないことをいいことに、わたしは竜王に指示をした。


「友人はな、こんなに密着して会話はしないのだ。少し離れて話そう」

「あ、ああ、わかった」


 竜王はすたすた部屋の隅まで離れていきそうになるので慌てて呼び止める。


「ちょ、ちょっと、待て。そんなに離れなくていい」


 わたしはスッと手を差し出すと、竜王は不思議そうに見つめた。


「祖国では、友人と初めて知り合う時に握手をするんだ。……ほら、手を出して。……片手でいい」


 差し出された竜王の右手を軽く握った。


「レラだ。よろしく。ほら、名を名乗って」

「ベルファレス、だ」

「なんと呼べば?」


 竜王は「んー」と唸った。そもそも名乗ったことも、こんなやり取りをしたこともないんだろう。


「……ベル、でいい」


 わたしは、この地に来て、初めて竜王に笑いかけた。


「よろしく。ベル。世話になる」


 ふと、ランティスのことが頭に浮かんだ。

 自分の役目を思い出したせいか、逃避に失敗して降伏してしまった情けなさからか。


 竜人族には悪いが、味方のふりをしながら、彼らのことを調査する機会になるかもしれない。竜王の手から逃れ、この土地から脱出することができれば……。


 でもわたしは“友人”を裏切れるのだろうか。


 心がモヤモヤする。彼らに情があるということか。


 でも、このまま王国に帰らず、役目も果たさず、この地で生きていくとしたら……。

 ランティスに失望されるだろうな。



 胸がきゅっと締め付けられる。わたしがランティスに抱いていた尊敬の念は恋だったのだろうか?


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