第95話 チサVSベガ
こうして迎えた準決勝。
チサの前に現れたのは馬面の男だった。
「やはり、お主が上がってきたのじゃな。ベガ。」
「あアッ。1、2回戦の相手は弱すぎたからナッ。俺にダメージを与えることも出来ずに勝手に散っていっタッ。」
ベガの相手は、決して弱いわけではなかった。寧ろ、初参加のチサやジンよりも対策されていたこともあって普通であれば勝つのはかなり難しくなるはずだった。
だが、結果としてベガの圧倒的なまでの耐久力の前に屈してしまったのである。
「妾もじゃ。皆レベルが低すぎて話にもならなかったの。」
「フッ......。そんなことを言えるのはチサとジンくらいダッ。だが、その慢心、私が打ち砕いてやルッ!」
ベガがチサに向かって走り出す。観客からはどよめきが起こる。どんな相手であろうとも動かずして勝つベガが自分の背丈の半分ほどしかない小さな少女よりも先に攻撃に移ったのである。
極限まで体を硬くしたベガの突撃は、シンプルでありながら、並の技能の数倍はダメージが出そうな一撃だった。
「水陣・受水」
だが、チサにベガの攻撃は届かない。チサは目の前に展開した透明な水でベガの攻撃を受け止めたのだ。
「ナッ......! 馬鹿ナッ!!?」
「どうした? そんな受け止められたのが想定外じゃったかの? ほれ、歯を食いしばるのじゃ。」
「水陣・流水」
その瞬間ベガがチサの目の前から、明らかに突撃の数倍はあろうかという勢いで吹き飛ぶ。
「ぎゃおおおおおおおおす。これはイッタアアアアインの!」
数瞬の後、チサの視線の直線上にある壁から鋭い破砕音が闘技場全体に響き渡る。ベガは壁に大の字でめり込み埋め込まれる。
その瞬間、会場からはブーイングではなく大歓声が巻き起こる。
会場にはもはやチサの力を批判する者はいなかった。チサが勝てば大半の者が損をするものの、チサが、チサの2倍以上も大きい相手を易々と吹き飛ばす姿は観客の心を動かしたのだ。
「ベガ、妾はもう笑わないのじゃ......! まだ戦えるのであろう? 妾にその温存している力を使うが良いのじゃ。」
ベガは、そのチサの声に呼応するかのようにめり込んだ壁から抜け出す。
その姿に会場からは先程のチサのカウンターの数倍の歓声が上がる。
「クッ......! これは決勝でジンと戦う為のとっておきだったんだがナッ。だが、これを使わねば勝機さえも見えないのなら使うしかなさそうダッ。」
「かまをかけてみたが正解だったようじゃのう。では、妾も一つ礼の意味も込めて少し本気を出そうかの。」
「フッ......! その慢心が敗北に繋がると教えてやルッ!」
その時、ベガの体からみしみしと不穏な音が辺りへ響き出す。そしてベガの背丈は変わっていないにも関わらず、その肉体は筋肉で数倍にも膨張していた。
「ベガ、お主、魔力が無かったのでは無いのか?」
「あアッ。この技はジンという俺では到底敵わない存在を知った1ヶ月と少し前から、なんとしてでもジンに勝ちたいと思い必死に体得したんダッ。とはいえこの技は魔力を使わないだけあって体への負担がデカすぎるんダッ。ここで勝っても決勝ではまともに戦えんだろうナッ。」
「そうか。ベガはあの時とは違うようじゃな。それをくらえば妾もただでは済まなそうじゃ。」
「水竜天女の法衣」
「ほウッ......!」
ベガが息を呑んだように、会場もまたチサの変化を見て鎮まり帰る。
皆がチサの変化に目を奪われたのだ。チサは流水でできたその衣を身に纏っていた。
「さあ、ベガ来るが良いのじゃ! 妾が完膚なきまでに叩き潰してくれよう。」
「フッ。見ただけで格の違いがわかルッ。だが、私は王者のプライドにかけてそう易々と負けるわけにはいかんのだ!」
「暴馬の撃鉄」
ベガは空中に舞い上がると、その異常なまでに隆起した肉体から隕石を彷彿させる勢いでチサへと飛来する。
「水波・竜水樹!!!」
チサがベガへと伸ばした腕の先から、水の竜が現れ、飛来するベガへと飛び立つ。
ベガとチサの竜が空中で激突した時、周囲に物凄い衝撃波が巻き起こる。
観客達は沸き立つ者と、その想像を絶する衝撃に腰を抜かす者や逃げ出すもので大混乱に陥る。
そんなことなど気にすらせずチサとベガはお互いの技をぶつけ合う。
だが、決着は、そう遠くはなかった。拮抗したのはわずか数秒程で、次第にベガが押され、チサの水竜が天へと突き抜ける。
その時、全ての力を使い果たしたベガは、あの言葉を発することもなく、闘技大会の会場の地面へと落下するのだった。
会場は大混乱ではあったものの、そこはマキラの治安部隊が何とかしたようで、数分ののち、大歓声が巻き起こる。もう会場にはチサへとブーイングをする者はおらず、王者を倒したことによる賞賛の声だけが巻き起こるのだった。
「さて、次はジンとの戦いじゃの。ここで一つどちらが強いのか決めるのも悪くないのじゃ。」
そう言ってチサは笑う。その笑みは普段のチサが見せることのない、野性的で交戦的な雰囲気を醸していた。
そんなチサとベガを熱狂する観客達とは明らかに違う雰囲気で見守る者達がいた。
だが、闘技大会の熱狂でそんな二人を気にする者はいない―。
「アレを倒せるか?」
「本気で戦うとなれば厳しいかもしれませんが、決勝であの二人が消耗した後であれば負けないかと。以前の私ならわかりませんが、今は貴方様から貸していただいた力がありますから。」
「そうか。まあ、精々頑張ってくれよ。あの二人を殺ったらあの約束忘れるなよ?」
「ええ。勿論です。私は約束は守りますからね。」
二人はそれだけ言葉を交わすと静かに闘技大会の趨向を見守る。
こうして大陸全体を巻き込む陰謀が誰からも気付かれることなくその姿を現しつつあるのだった。
さて、最近、日記を書き始めたので、後書きはもういいかなあと思いました。重複すること書くのも何だかなあって話ですから。ですので、後書きを書く頻度減らします。
もし楽しみにしてくれた方が居たらごめんなさい...。
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ではでは〜
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20/12/21




