表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
93/162

第90話 マキラ・マーマレード

 ここは、マキラ領、領主の館執務室。

 そこには葉巻を吹かせた妙齢の女性が居た。


「へぇ。思ったより遅かったじゃないか。何があったんだい?」


 その場に響く声は辛うじて女性が話していると分かるダミ声だった。


「どうやら、本日マキラ領へお見えになる予定だったアル・ロックバレー様が昨日から突然行方知れずになったとのことで―。」


「はあ!!? 何だって? アルが失踪した?」


「ええ、使者のリリエット、ジルヴィエの連名で連絡が来ており、また、入領手続きをした門兵もアル・ロックバレー様がいないことを確認しております。」


「あの男が失踪かい。俄には信じがたいことだねぇ。私の脳が何かあると騒いでいるよ。なあ、少年もそう思うだろう?」


「え!!? 少年?」


 この部屋にいるのは、報告する自分と目の前にいる自分の主人だけのはず。報告する男は既に少年と呼べるような歳ではなく、顔にだってそれなりの皺が入っていた。


 男は周囲を見渡すも誰もいない。視線を主人に返すも、主人は自分を見ていないのは確実だった。


「へぇ。マキラ領の領主はどんなもんかと思って見に来たが、やはりこの大陸一の領地を収めるだけあるな。アルは全く気付かなかったのに。」


 男は声は聞こえるがどこにいるかさえも分からない自分以外の人物の存在に恐怖すると同時に、自分がこの部屋に侵入者を許してしまったのではないかと顔を青く染めてゆく。


「報告はもういらない。ここにもっと有益な情報をくれそうな子がいるからね。さがりな。」


「し......しかし!護衛を呼んだ方が―。」


「さがりな。護衛も要らないよ。治安部隊隊長でもこいつを捕まえるのは無理だ。安心しな。この子に殺意は無い。それにあたしを殺す気があるなら既に殺されているさ。」


「し......失礼しました!」


 男は物凄いスピードで踵を返すと執務室から出て行こうとする。


「待ちな!」


 鋭い声が去ろうとする男へと突き刺さる。


「ヒィ! な......なんでござりますでしょうか?」


 男はこの異様な雰囲気と化した執務室から早く出ていきたい気持ちと、急に主人から呼び止められた驚きとで、明らかに口調がおかしくなる。


「お前私にあたしに恥をかかせる気かい? お客様が来たのだからお茶を持ってきな!」


 男は困惑していた。明らかな存在すらも認識できない侵入者を客だと言う自分の主人に。

 だが、男は同意するしかない。


「かかかか......かしこまりましてございます!急いでお入れ差し上げます。」


 男は壊れた機械の様に不自然な言葉をその場に残して急いで去ってゆく。例えどんなに理不尽であっても自分の主人に恥をかかせる訳にはいかないのだから―。



「さて、もう少し姿を見せてくれないかい?少年。流石に今の状態だとあたしでも話しにくいからね。」


 俺は、老婆からそう声をかけられて、気配遮断を解除してゆく。


「急な訪問にも関わらず、歓迎頂き感謝します。急ぎお話せねばならぬことがありましたので、この様な夜中になってしまったこと申し訳なく思っております。」


「堅苦しいのはいいよ。さっきの口調で話しな。それに少年だけじゃなくて可愛らしい少女まで居たとはねぇ。気付かなかったよ。」


「当然じゃ。ジンは、妾にはより強く技能を使っておったからの。」


 俺の肩から飛び降りたチサは華麗な着地を決めて目の前のただならぬ雰囲気を持つ老婆へと言う。


「とりあえず簡単に自己紹介だ。俺はジン。こっちはチサ。こんな夜中に忍び込むことになって申し訳ないが―。」


 俺が言い切る前に目の前の老婆は口を開く。


「アルのことだろう? そうでなければ明日改めて来るはずだからね。」


 俺は驚くこともなく頷く。


「あたしの名前は知っているだろうが、念のためにな。マキラ・マーマレードだ。この領の領主をしている。さて、アルの話を聞かせて貰おうか。その様子だと隠していることもあるんだろう?」


 そう言われて俺は再度頷くとアルの不正の事を打ち明ける。


「1200億ラーゲルを稼ぐ出来レースねぇ。アルもよく考えたもんだよ。年に一度の闘技大会という娯楽で、大陸を渡る程の実力者を無名に見せかけて一人勝ちなんてねぇ。バレたらしまいだがね。」


 だが、本題はここからだった。


「ここまでは、問題じゃないんだ。別にアルの不正に関しては部外者の俺たちからすればどうでもいいからな。普通に証拠を闘技大会の後に公表して、その騒ぎのうちにこの大陸を出れば良かった。」


「だが、事は起こってしまった。闘技大会が始まる前にねぇ。」


「ああ、そうだ。だがもっと重要な問題がある。別に俺たちにとっては闘技大会さえもどうでもいいんだ。本音を言えばな。称号には興味があるが、別段無理して取る必要もない。」


「それはなんだい?」


 マキラは俺に向かって聞いてくる。


「話す前に2つ条件があるんだが、それを二つとも聞いて貰えるのなら、この先をお話しましょう。」


「いいよ。」


「はっ? まだ聞いてもいないのにいいのか?」


 俺は何も聞かずに同意したマキラに心から驚く。 


「ふっ。いいのさ。あんたを見てると分かるんだよ。まだ若いのに、その年じゃあり得ない程の何かを決意した目をしてる。そんな目をされちゃあ断る訳にはいかないね。」


 マキラはそのしわがれた頬を口が裂けるのでは無いかというほどに釣り上げて笑みを浮かべる。


 すると、執務室にノックが3度響く。


「いいよ。入りな。」


「はい。失礼しま......おおッ!!?」


 先ほどまでここに居た男だった。男は先ほどまでは見えてすらいなかった部屋の中の俺たちを見て、驚く。


 驚いてお茶の入った容器を落としそうになっていたが何とか持ち堪えると、執務室の中にある、棚の一つを開け、カップを3つとお茶菓子を多めに出してくれる。


 きっとチサと俺の見た目から、お茶よりもお菓子が良いと判断したのだろう。俺の前ではポンコツだったが、やはり領主で近くに仕えるだけあって、有能だった。


「ではお茶を入れたら私は退かせて頂きますね。」


 そう言いながらも、お茶を入れる手前は抜群に上手かった。


「ふん。こいつは、人に対する気遣いやあたしの考えを察する能力が群を抜いているのさ。今日は駄目だったが普段は助けられているよ。」


「マキラ様、私には勿体ないお言葉でございます。」


 そう言いながらも男はかなり照れていた。やはり主人から褒められるのは嬉しいのだろう。


 そんな訳で俺たちは一旦話を辞めて、真夜中のティータイムに移るのだった。



というわけで、遂に第90話ですよ!

第90話ってことは、第100話の大台まであと10話まで来れたって事です。

ここまで読んでくださる人が居たからこそ、ここまで頑張って来られたのだなと10話積み重ねるごとに思うわけです。


そういえば、今日は1万字チャレンジのリベンジをする予定です。これで1/4な訳です。ただ、手を抜いてまで間に合わせるつもりは毛頭ありません。今の全力を以て続きを執筆させて頂きます。



では、10話に1度のしょた丼のお願い。

ここまで読んでくださってありがとうございます。ブックマークまだだけど、続き気になるから読んでるよ〜って方!是非是非、ブックマークしていただけると作者のモチベーションに繋がるので、よろしくお願いしますm(__)m

また、ちょっと下にスクロールして頂くと、「勝手になろうランキング」のリンクがありますので、気が向いたらポチッと押して頂けると嬉しいです!


では第91話でお会いしましょうね〜


20/12/19

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ