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第89話 恋する少女は難しい

 こうして俺達はマキラ・フォー・ラーゲルへ向かうこととなる。

 道中で聞いてみると、アル・フォー・ラーゲルから半日程で着くんだそうだ。

 ちなみにデウス・フォー・ラーゲルからマキラへは2日ほどかかるらしい。


「不本意ではあるが、今回は初対面の者が多いからな。自己紹介をさせて貰おうと思う。」


 アル領から出て少し経った時、リリエットが少々傲慢な口調で言う。


「リリエット。彼らだって領主様程じゃないにしてもマキラ様のお客様なのよ? その口調は無いんじゃない?」


 リリエットは、使者に選ばれた誇りからかそれとも与えられた任務を完璧に遂行しようと思うからか、口調や行動にそれが表れていた。

 それをシルヴィエに(さと)される。


 リリエットはそれに対して少し不服そうな表情を浮かべるも、謝罪する。


「これは失礼しました。私はリリエット・マキューセン。今回はマキラ様の命により、使者に付きました。普段はマキラ・フォー・ラーゲル第一治安部隊隊長を任されています。」


 リリエットは先程までの態度とは打って変わって、恭しい言葉遣いで自己紹介をする。


「同じく使者のシルヴィエです。マキラ・フォー・ラーゲルでは第七治安部隊隊長をしています! 短い間ではありますが、よろしくお願いしますね!」


 シルヴィエは、同じ使者でありながらも、リリエットの刺のある近寄りがたい印象とは違い、言葉遣いや態度に柔らかさを感じられた。


 そんなシルヴィエを見る俺にチサが悲しげな目を向けていた。

 俺はそれに気づくと慌てて目を逸らす。

 べ......別に胸を見ていたわけじゃないからね?


 その後、俺たちも同様に自己紹介を終わらせた後、2人の使者を交えてここ数日のアルの様子について話し合う。

 とは言うものの、事前にベガとエルスと不正の事についてはマキラ・フォー・ラーゲルの領主に会うまで伏せるように打ち合わせが済んでいるので、最も肝心な部分は話していないのだが。


 そして、アルについての話し合いが終わった後、俺たちは各自の人力車のある場所へと戻ってゆく。

 ちなみにだが、現在一行は、使者の2人が乗る華美な人力車、ギュジットとその家族が乗る大型の人力車、俺とチサとベガとエルスが乗る領主の館から持ち出した人力車の計3台で移動している。


「なあ、ベガ。マキラ領の治安部隊ってのはどういうものなんだ?」


「それはアル・フォー・ラーゲルにおける、都市防衛隊と似たようなもんダッ。都市によって名前は違うがナッ。ちなみにデウス・フォー・ラーゲルは、警邏隊(けいらたい)といウッ。」


 ベガから説明を聞いてふと、気になることが出てくる。


「なら、なんでマキラ領の治安部隊には第◯って付くんだ? 少なくともアル領ではそんなの聞いたことないぞ?」


「あアッ。それは、マキラが、夜も明るいことに起因していルッ。」


「どうして夜が明るいとそうなるんだ?」


「マキラ領は、全部で16の部隊があるんダッ。うち6部隊は日が出ている間、もう6部隊は日が沈んでいる間、そして残り4部隊は休みという風になっていル ッ。アル領とデウス領と違って、人の数も、活動時間も長いからこそ、多くの部隊が必要となるのダッ。」


「なるほどな。そういうカラクリがあったのか。」


「ちなみにだがジンヨッ。マキラ領の治安部隊隊長は16人全員が女性で美人ダッ。私は、こんな顔だからダメだったが、ジンなラッ―。」


 その瞬間、俺の首筋をいともたやすく貫き、その先にいたベガの口を射殺すかのような殺気を帯びた視線がチサから発せられる。


「......すまなかッタ。今のは忘れてくれ。」


 この後、俺は拗ねてしまったチサを宥めるのに必死だった。


「チサ、俺は今は恋愛にうつつを抜かすつもりは無いよ? 何としても神が与える試練とやらをクリアして故郷を救わねばいけないからね。」


「そのくらい妾だって分かっておるのじゃ。」


 俺の一言にチサは更に機嫌を損ねる。


(あれ? なんで?)


 俺は後にチサから聞き出すことに成功するのだが、この時の一言でかなりの失言をしていた。だが、俺は気付かず、しばらく完全にヘソを曲げてしまったチサの機嫌取りに必死になるのだった。


 その後、自業自得とはいえ、ベガと共に地雷を踏み抜いた俺はチサにマキラ領に着くまで口を聞いてもらえず、かと言って何が悪かったのかも分からないまま、とても気まずい時間を過ごすのだった。




 こうしてアル領を出てから半日が経った。雪に足を取られて遅れるかもしれないと思っていたが、俺の分身が引く二台の人力車はともかく、マキラの使者の人力車を引く者も精悍だった。


 こうして、マキラ領の入り口である門の前にやってくる。


「おお......!でかいな。」


 俺は思わずそう声を出す。アル領の門も大きかったが、マキラ領の門は更に大きいように感じられた。


 というのも、昼前に出発した為に現在の時刻は日付が回る直前だった。にも関わらず、門は綺麗な黄色い光で彩られていた。


「ふああ。ん? 着いたのかの? おお! 門が輝いておるのじゃ!」


 俺の膝の上で眠っていたチサが目を覚まし、人力車から身を乗り出す。眠ったからか、門を見たからなのかは分からないが、チサの機嫌がなおっているようで俺は安堵する。


 このままチサに無視され続ける最悪と言える日々が回避されたからだ。

 いくら不死身で自動回復持ちでも精神的ダメージは治療できないのだから。


「チサ、あんまり乗り出してると危ないぞ。」


 そう言いながら俺は、身を乗り出すチサを引き寄せる。

 何が悪かったのかは分からないが、もう絶対チサを怒らせる様なことは言わないと心に誓って。


 こうして俺たちは、マキラ・フォー・ラーゲルへ予定より早い訪問を果たすのだった―。






よし!

漸く、この大陸二つ目の都市に着いた〜。

今週中に第3章終わらせたいとか言ってたけど、無理だ。ごめんなさいm(__)m


最近しょた丼は日記を書き始めました。

後書きでも日記に書いた内容と重複するようなことを書くかもしれませんが、その辺りは大目に見て貰えればなと思います。


次は第90話! 話数3桁へのカウントダウンが、遂に始まる訳ですねぇ。ちょっとウキウキワクワクしてきます。では次話もよろしくお願いしますm(__)m


20/12/18

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