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第82話 ギュジットの豪邸

 ギュジットの家は流石、領主から財政面のことを任されているだけあって、領主の館に劣らぬ周囲の建物とは一線を画す巨大さだった。

 ただ、この大陸は基本的に岩石を加工して家や家具を作る様で、色合いとしては特別派手なものではなかった。


 俺はギュジットの家の前の道に仰向けに倒れながらもそんな風に目の前の家について思っていた。


「ジ〜ン〜。大丈夫かの?」


 チサが倒れ込む俺の隣にしゃがんで、心配そうに俺の顔を覗き込んでくる。

 その可愛らしさに俺は少し疲れが癒される気がしてくる。


「大丈夫だ。だが、普段は黒影切よりも重いものを持たないからかなり疲れたな。」


「悪かったのじゃ。妾が我が儘を言った故にジンには辛い思いをさせてしまったのじゃ。」


 チサは、少ししょんぼりしていた。だが俺は咎めることはできない。チサが豪華な食事と聞いてそれを食べたいと思うのは至極当然のことなのだから。


 俺は殆ど料理というものをした事がない。いつも食事は母親が作ってくれて、俺は歳の離れた妹の面倒をみたり、父親の仕事を手伝うのがメインだった。そんなわけで俺はまともに料理が出来ない。


 チサも首長竜であるが故に料理などするはずもなく、結局俺とチサは、いつも簡素な料理しか食べていなかったのだ。


 そんなチサの頭を俺はいつのまにか、無意識のうちに撫でていた。チサは嬉しそうな、そして申し訳なさそうな表情を浮かべてこっちをみてくる。


「チサ、気にしなくていいぞ。確かにギュジットは、重すぎたけど、でも俺はチサの笑っている顔が見られるならそれだけで十分だ。だからそんな顔はするなよ。」


 俺はチサを撫でながら、励ましてやる。


「そんなこと言ってると、妾もっと我が儘を言うようになるかもしれぬぞ?」


 チサは、冗談めかしてそんな事を言ったのだろうが俺には通じない。


「チサの我が儘だったら何だって聞くさ。」


 その言葉にチサは顔を赤く染める。


「ジンは妾に甘すぎるのじゃ。」


「ハァハァ。では、今度からジン様に頼み事がある時は、チサ様を介してお願いさせて頂くのが得策の様ですね。ハァハァ。」


 チサが何か呟いた気がしたが、そんな俺たちの間に、今1番聞きたくなかった声が響く。


「お前は......!」


 俺はその風船の様なボディを見て俺の脳裏に先ほどまでの苦労が蘇る。俺は体力的には回復している筈なのに、俺の体は地面に縫い付けられていた。


「貴方達がジン君に、チサちゃんね! 主人から聞いていた通りに可愛い子達じゃない! とりあえず中に入って頂戴! 色々とお礼も―。それに聞きたいこともあるしね。」


 俺は突然聞こえてきた明らかにギュジットのものとは違う女性の声に驚いて俺は地面に縫い付けられた体を起こす。


「ハァハァ。急にすみません。紹介します。こちら家内のミリアです。私が今日起こった事を軽く妻に説明したところどうしても会って礼がしたいと言うもので。」


 俺はその言葉を聞いて、ゆっくりと体を起こしてゆく。自動回復の技能には感謝しなければいけないなと心の中で思う。


「私はミリア。こちらの不摂生の極みの様なギュジットの妻よ。よろしくね。」


 そこにはギュジットの妻というには、信じられないほど美人で、しかも線の細い女性が立っていた。俺は分身を介して見てはいたのだが、改めて隣に並んだ時の体格差のギャップに驚かされる。


「ジン何を驚いておるのじゃ? 普通の夫婦ではないか。」


「......ッ! ああ、いや。なんでもない。ちょっと思うところがあってな。」


 そしてそんな驚きの余韻が俺の中に残っているもひとまずチサとともに自己紹介を済ませる。


「妾はチサなのじゃ。よろしくなのじゃ!」


「ジンだ。よろしくな。」


 お互いに紹介が終わったところで俺たちは、この大陸では豪邸と言えるギュジットの家の中に入る。


 その中は内装はやはり岩石であるが故に色感的には単調で物足りないのだが、華美ではない分何処か落ち着いた雰囲気を纏っていた。


「ジン君にチサちゃんはここで待っていて。今から夕飯の準備をするわ。」


 俺たちはミリアにダイニングと思われる部屋へと案内される。


 ギュジットは、屋敷の中に入ると自身の仕事部屋へと行ってしまった。夕飯の支度が済むまで、書類等の整理をするのだという。

 アルと敵対はしても、領内の財政には責任を持っているのだろう。あんな見た目でも......だ。


 そんな風に考えている俺にこそこそとチサが声をかけてくる。


「のう? ジン、ここに来てからじゃが、廊下からこちらを覗いている子は誰じゃ?」


「ん? ああ、確かにいるな。」


 俺がこのダイニングの入り口へと目を向けると急いで隠れる、チサと同じか、一回り小さな気配があった。


 俺は入り口を見ていると度々目が合うが、すぐに隠れられてしまう。


「確かあの子は、ギュジットとミリアの子で、4歳の男の子だったと思う。きっと見慣れない俺たちの前に出てくるのが恥ずかしいんだろう。」


「ふむ。あの2人子どもがいるのじゃな。妾、子どもは嫌いでないからのう。夕飯を馳走になった後で仲良くなりたい所じゃな。」


「呼ぶか? このままずっと覗かれ続けるのは妙に気になるんだが......。」


 俺はそうチサに提案するものの、チサは横に首を振る。


「いや、向こうから来てくれるか、ミリアが紹介してくれるのを待つのじゃ。ここで無理に距離を詰めて逃げられては辛いからの。」


 そんな風に話す俺たちに夕飯のとても良い香りが漂い始める。匂いだけでわかる。これから出てくるものが間違いなく美味いと。


 そうして俺はチサの言葉に頷くと、男の子の事は気になるものの、意識を逸らす。

 こうしてチサと一緒に夕飯を楽しみにたわいもない話をして待つことになるのだった。


さて、今回はギュジットの家へとお邪魔したジンとチサのお話でした。

ハァ......。こういうお話書いてるとお腹が空いてきますね〜。自分も美味い飯が食べたくなってしまう(@ ̄ρ ̄@)


話は変わりますが、来週中に第3章完結目標で頑張って書いていこうと思います! 

書ききれるかは分かりませんが。第3章長くなってきましたが、もうしばらくお付き合い頂けると嬉しいです。


では、第83話お楽しみに〜


20/12/13


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