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第63話 ジンとユキグマ

 俺の視界の前方180°がユキグマによって覆われる。俺は、ユキグマを十分に引きつけてから黒影切を横薙ぎに振り一撃を放つ。


「影・ジン」


 その瞬間俺の視界を覆っていたユキグマが全て胴を境に2つに分かれる。俺の視界は淡いクリーム色から、鮮やかな赤そのものへと彩られる。俺の体は返り血に染まってゆく。


「ガオオオ!!??」


 彼らは驚きのまま絶命する。ユキグマ達には分からなかっただろう。俺が攻撃する瞬間、俺の周囲は今地面に倒れているユキグマによって覆われていたのだから。


 意味が分からないままにやられた。そんな十数匹の仲間に明らかに同様するユキグマ達。各々の表情には、何が起こったか分からない怯えと、仲間を殺された怒りとに染まっていた。この動揺によって彼らは致命的なミスを犯すこととなる。


 なんと目の前にいるユキグマが全て俺へと襲いかかってきたのだ。俺だけなら打ち取れるとでも思ったのだろうか?


 俺は駆け出す。たしかに背面が崖であった先程の場所の方が後ろからの攻撃を気にする必要がなかったが、そこには笑いすぎて腹筋が崩壊したチサと、満身創痍のベガがいた。

 いくら気配遮断をかけているとはいえ、これだけの数のユキグマの一斉攻撃は、後ろに俺が攻撃を漏らすかもしれない。


 俺は駆け出す。俺とすれ違いそうになるユキグマは全て首を落としてゆく。


「はああああああああああ!」


 ユキグマはついていけない。俺の全力の動きに。


 ユキグマは防げない。俺の黒影切の刀身を。


 ユキグマは逃げられない。俺の斬撃から。


 俺は駆け出し向かってくるユキグマの首を次から次へと切り落としてゆく。俺の動きは雑だ。型が無いから全て我流で、きっと本当の達人からしたら、あくびが出るような動きだった。


 だが、俺のこの4年の中で過ごした激動の日々で得たステータスの前にユキグマは無力だった。


 気配遮断を使うまでもなかった。このユキグマ達は今の俺には弱すぎた。何百匹かかってこようとも負ける気がしなかった。


 そんなことを繰り返すうちにユキグマは残りを十数匹まで減らしていた。そうなった時遂に逃げ始めるが、もう遅い。


 俺は二本の黒影切を振りかぶる。


 そして全てのユキグマの背後に向かって、黒影切でなぞるようにその刃筋を描いてゆく。


「追・ジン」


 その言葉と同時に逃げるユキグマへと黒色の斬撃が走り出す。

 ユキグマ達は必死だった。ジンと逃げるユキグマの間には十分な距離があった筈だった。


 ユキグマ達は油断した。これがただの斬撃であると。ユキグマ達は全員がその刃筋を交わした筈だった。そう筈だったのだ。


 その瞬間全ての斬撃がそれぞれのユキグマへ向かって軌道を変える!


「ガオ?ガオオオオオオ!!??」


 その一撃を受けたユキグマはしばらく苦しんだ後、全てが絶命する。流石に距離があった為、真っ二つという訳ではなかったが。


 俺は黒影切についた血を辺りにある雪で洗い流すとインベントリへと収納する。


 そうして戻ってきた俺にベガは馬面でありながらも、信じられないといった表情を浮かべていた。


「本当ニッ......。本当に全て、しかも1匹も(こぼ)さずに倒してしまったヨッ。」


「どうしたベガ? 何か問題でもあったのか?」


「あったヨ! こんな数のユキグマが一気に出てきたのも、しかもそれを全て倒してしまうジンモッ! 前例が無いんダッ。そんな強いやつを私は知らなイッ。君達は一体何者なんダッ。」


「普通の青年男性と、少女だが、どうかしたのか?」


「そんな筈はなイッ!普通の青年男性にそんな真似はできない!ま......まさカッ......!さっきのこの崖を消しとばした一撃もジンの......いや、君達の仕業カッ......?」


 ベガは自分で話していて遂に気付く。自分が巻き添えを食らった崖を抉り消しとばしたその一撃を誰が行ったのかを。


「だったらどうした? とりあえずユキグマはこれでもう近づいてこないだろうし、片付けを手伝ってくれるか? いくら雪が降っていて気温が低いとはいえこれだけ死体があると臭いからな。」


 俺は、まだ何か言いたそうにしているベガに言う。ベガもひとまず諦めて言う。


「わかっタッ。だがこれだけの死体どうすると言うのダッ。持ち帰る手段が無いのなら海へ捨てるしかないゾッ。」


 俺は近くのユキグマ死体の側に行くと言う。


「こうする。インベントリ!」


 その瞬間ユキグマの死体が消える。


「まさカッ! さっきの刀といい何処から出し入れしているのか分からなかったが、技能:インベントリ持ちだったとハッ。ンッ? 待てヨッ。ジン! 君はいくつ技能を持っているんダッ!!??」


 いちいち話が長いやつだ。俺はその質問をスルーして、ユキグマの死体を収納してゆく。


「おい!! ベガ。喋ってないで早く集めてくれ。全部しまったら一気に海へ捨てるから。」


「捨てルッ? ジン正気カッ! これだけユキグマがあれば、軽く1年は遊んで過ごせるくらいの金になるゾッ!」


「ふーん。なら持っておくか。金はいくらあっても困らないからな。」


 まあ、この大陸の通貨を沢山持ってても俺はこの大陸に長居するわけじゃないから無駄になりそうだが。そう思いながら適当に返事をしておく。


 一通りユキグマを集めた後、俺はベガへと向き直り、話の続きを聞くことにする。


「じゃあ、ユキグマも片付いたことだし、アル・フォー・ラーゲルについて話を聞かせてくれないか?」


 俺はベガの疑問に結局一つも答えないままに俺の聞きたいことを聞く。まあ元々交渉の条件に俺のことを教えるなんてのは無かったしね。


 そんな俺にどこか釈然としない表情をしながらもベガは語り出すのだった。





第63話お疲れ様でした! ジンの戦闘シーン書いててやっと主人公らしくなってきてる...!

と、しょた丼は嬉しく思いながら書いております。


ただ......。ベガの喋り方書くのめんどくさい! お前のセリフだけ書くの2倍くらい時間かかるんだけど??(激おこ)


しかもお喋りさんとかマジで勘弁してよ!設定考えた自分を殴りたい。殴りたい!なぐりたあああああい( ゜д゜)クワッ


はい。しょた丼の悲痛の叫びでした。


ではでは、第64話もよろしくお願いします!


20/12/3



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