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第62話 ベガ

 俺が交渉を持ちかけると馬面の男は反応する。


「グッ......。お前ハッ......。はっ思い出したゾッ。この私のみぞおちにあそこまで的確に拳をぶつけるとハッ! これでもこの大陸一の闘士の筈だったのだガッ。」


 男の言葉に俺は驚く。


「大陸一だと?? これでか?」


 俺は「弱すぎじゃないか?」という言葉を飲み込む。もう既に殆ど言ってしまったも同然なのだが。だが、このタフさを考えればそれもあながち間違いでは無いのかもしれない。


「あアッ。間違いなイッ。いくら負傷しているとはいえ、私にここまで完璧な一撃を決められた者はこの馬面になってからはお前で二度目ダッ。」


「二度目?」


「ここから先を話すのなら交換条件ダッ。私を無事にアル・フォー・ラーゲルまで護衛することを条件とさせてもらウッ。」


「それは情報次第だな。」


「フッ......。まあいいだろう。お前は私から情報だけ引き抜いて置き去りにするなどという真似ができる目はしていないからナッ。」


 俺はその言葉に若干顔が引きつる。本当に置いて行こうか。そう思ってしまう。


「そこまで言うなら情報は諦めるしかないか......。じゃあな。」


 俺はその言葉に若干思うところがあったので、踵(きびす)を返して森へと向かってゆく。情報はあればあるほどいいが、何もこの偶然会った馬面の男が全てでは無いだろう。


「待テッ!待っテッ......!今置いていかれたらユキグマに食われちまウッ!悪かっタ!私を置いていかないデー!」


 俺はその言葉を聞くと気配遮断を使う。


「ナッ......!消えただっテッ......!そんな馬鹿ナッ......!」


 絶望の表情を浮かべて男は雪の中に顔をうずめる。


 そして数十分俺は男の背後に控え見守っていたが男は一向に顔をうずめたまま動かない。それなのに、身体の様子に全く変化が無いのだ。


(おいおい......。こいつなんで凍傷とかならねぇんだ。俺みたいに不死身を持ってるわけじゃ無いだろうに......。一体どんな体してやがる。)


 倒れている馬面の男の上に座る。


「ナッ......!いつの間に私の上ニッ。」


「次余計なこと言ったら本気で置いていくからな。で、ユキグマってのはなんだ? アル・フォー・ラーゲルとやらは何処にあるんだ?」


「まずは自己紹介をしませんカッ......! お互いの名は知っておいた方が良いでしょウッ!そんなわけで、私の名前は、ベガダッ...。宜しくお願いしまスッ。」


「ああ、宜しくな。ベガダッって言いにくい名前だな?俺はジン。背中で眠ってるのがチサ。」


「ジンにチサだナッ......。いや、ちょっと待テッ! 私の名前はベガダッでは無イッ!! ベガであルッ。」


「紛らわしいな。もっとわかりやすく頼むぞ。ベガ。」


 俺はここは引き下がることにする。このままからかっても良かったのだが、話が進まないからな。


「すまなイッ。この口調は馬面の呪いとでも思ってくレッ。私も好きでこんな喋り方ではないのダッ。」


「ん? 元から馬面じゃないのか? そういえば、さっき、馬面になってから―。とか言ってたな。」


「あアッ。これは呪いダッ。私はこの馬面を剥がす為にも、この馬面を私に被せた女を10年探し続けていルッ。」


「なるほどな。複雑な事情がある様だが、それは俺たちが聞くことでは無さそうだ。とりあえず、さっきの質問に答えてくれ。」


「あアッ!それは勿論だが、こうして自己紹介し合った仲ダッ!そろそろ退いてはくれないカッ!」


 俺はそれを聞いてベガから立ち上がると、ベガもまた立ち上がる。


「ではまずはユキグマについてだったカッ! あれがユキグマ......ダッ。普段群れで行動し、弱った獲物を見つけると周囲を包囲してジワジワと距離を詰めてしとめルッ。この大陸の中でも危険で生態系の上位に君臨する様になったモンスター......ダッ。対象の敵の危険度に応じて、数が多くなるのが特徴ダッ。」


「って、もう来てるじゃねぇか!はあ......。数が多い分面倒さも割増しだな。」


「あああああアッ。私もここまでカッ。流石にここまでの数を相手にハッ。」


「ベガ、とりあえずお前は死んだフリでもしとけ。流石にその傷で戦うわけにはいかないだろ。こんなの一瞬で終わるから。」


「し......しかシッ。」


「いいから。」


 俺はそう言うと、俺たちを包囲するユキグマに向き直る。見てみれば、100を超えるであろう、雪よりは少しクリーム色の混じった様な暖かみのある白の毛皮を持つ大量の熊がいた。大きさは1m程度だが、上顎から伸びる牙は非常に鋭くナイフのようであった。常人なら噛まれれば一溜りも無いのは間違いないだろう。


「チサちょっとごめんな。冷たいだろうが、我慢してくれ。」


 名前:ユキグマ

 lv:40

 体力:80/80

 総合:D


 ユキグマ達はこんな風にレベルこそ40前後だったが数が多い。見えるだけでも優に100を超えていた。


 俺は愛刀を呼び寄せる。


「黒影切」


 そして俺は気配遮断をチサとベガへとかける


「気配遮断」


 その瞬間全ての熊の意識が俺へと向かう。


「さあ! かかってこいよ熊ども! 死ぬ覚悟ができた奴から順に料理してやる!!」


「ガオオオオオオオオオ!!!」


 熊たちは雄叫びを上げると一斉に俺へと飛びかかってくるのだった......!



というわけで、馬面の男の名はベガだったわけですね。名付けの理由はとても単純。この名前は、ベガという名前の競走馬から取らせて頂きました。


まあ、僕が生まれるよりも前に活躍してた馬で、リアルで走ってる姿は一度も見たことがないのですが。

ただ、小さい頃にやってたファミコンのダビスタで1番印象に残ってる馬でしたので、このキャラを出すと決めた時にはパッとこの名前につながりました。ベガは牝馬なんだけどそこはまあツッコまないで頂ければと。


ではしょた丼は、第63話執筆に向かいます。


20/12/3

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