第42話 キラークィの試練
「ようこそ、ブラウンエルフの街『グリーンソウル』へ。私の名はキラークィ。ブラウンエルフの族長をしている。」
キラークィは特に表情を変えることなく静かに俺を見据えて自己紹介をする。
キラークィは俺を観察していた。その細部に至るまでの挙動全てを。俺はその視線を受け流しながらも自己紹介をする。
「俺はジン。こっちの女の子はチサ。よろしくお願いします。」
流石に場を弁えているのか、チサは俺の肩に乗ってはいない。ただ、その見た目を利用してかどうなのか、俺の手は話そうとしない。もしかしたら先日の件は俺が思っているよりもチサには堪えていたのかもしれない。
そう思いつつも俺は隣を差してキラークィへとチサの紹介も済ませる。
そして俺への観察を終わらせたキラークィはゆっくりと口を開く。
「ジンよ。どうして服を着ておらんのだ?それがお主の大陸の文化なのか?」
俺は驚く。俺が服を着ていないのに気付いたのはこの老人が初めてだった。更に一瞬で俺はこの大陸の人物ではないと見抜かれていたのだ。
辺りを見回すとトリス、バッツ、エルダーラフが物凄い表情をしている。
「揃いも揃って皆気付いておらんのか。こやつ自分の体の気配を完璧に消しておる。」
しかし、トリス達は目を擦って、一生懸命に俺を見るも何がおかしいのかに気づけない。エルダーラフも同様である。俺の体は認識すらできず意識の外にあるはずなのだから。
寧ろこんな早々に見破ったこの老人を俺は警戒していた。
「フハハハハ。何を警戒しておる。そんなもの少し目を凝らせば見えようて。さてどうやらあ奴らはまだわからん様だな。少年よ少しばかりその術を解いてやってはくれぬか。」
俺は特にキラークィから害意は感じなかったので、上半身にかけていた気配遮断を解く。俺の傷痕だらけではあったが、鍛え上げられた身体が顔を出す。
それにトリス達は驚きバッツに至っては腰を抜かしていた。
俺は再度気配遮断でその体を隠す。
「どうやら少年、ただならぬ過去を生きてきたのは間違いなさそうだな。面白い!エルダーラフの馬鹿もたまには良い仕事をするな。」
エルダーラフは心外そうな表情をするもののキラークィはそれを無視して話を進める。
「では少年よ。一つ試練を与えようか。」
俺は試練という言葉に反応する。
(試練....?まさかこれが神が言う試練だとでも言うのか!!???)
俺とキラークィとの間に緊張が走る。
「試練の内容は、私の背後を取ることだ!!」
「......へ?」
俺は呆気に取られた顔をする。
隣を見ればチサもまた不思議そうな顔を浮かべていた。
こうして外に出て試練が始まる。
なんでもエルダーラフによると今いるブラウンエルフの中で、キラークィの背後を取れるものはいないらしい。
本当かどうか分からないので、まずはトリスがやっても良いか聞くとキラークィは頷く。
トリスは張り切って挑戦したものの結果は一目瞭然。キラークィに近づいた瞬間に勝手に地面を転がっていた。
そして俺の順番が回ってくる。俺は気配遮断を使う。
「虚像分身!!」
こうして現れた俺の分身100体以上にキラークィは驚く。
「なんだと???」
こうして俺は焦るキラークィへ分身を使いながら距離を詰めてゆく。途中何十体か分身が転んで消えるも、俺は気にせずに近づいてゆく。そうして目の前の分身が転んで消えた瞬間に加速してキラークィの後ろからキラークィの肩を叩くのだった。
キラークィは背後にいるジンに尋ねる。
「何故私の攻撃がわかった?」
キラークィは楽しそうな表情をして聞いてくる。
「地上でそれと似たモノと戦わされましたからね。」
ジンは皮肉を込めてキラークィへと言う。
「ああ、あの台座のトラップのことか。確かにあれは私の技を中心に数十年前に作ったモノだな。
私の全盛期に近いあのトラップを破壊する腕があるならこれも余裕で突破されるわけだ。」
キラークィは上機嫌そうに言う。俺は拍子抜けしていた。ブラウンエルフは人間を見下していると聞いていたのに。事実エルダーラフはそうだった。
「何を不思議そうな顔をしておる?」
キラークィが尋ねるので俺は答える。
「ブラウンエルフが人間を見下しているという話を聞いていたもので。事実エルダーラフはそうでしたから。」
俺は正直にいう。
「ああ、その話か。それは仕方ないだろうて。今この大陸の人間は数も少ないし私達の技術で何とか生き延びているという状態。しかも、今まで出してきていた世界樹の巫女さえも出せなくなってきておる。いくらあの蟻どもが地上には居るからと言って、そういう考えに私達が至っても仕方なかろう。」
そこで一息つくとキラークィは続きを語る。
「もっとも、我らとて困ってはおるのだ。あの蟻どもは世界樹をも食らおうとするが故に、私達の中でも強いものはほとんどが世界樹の守りについておる。故にフォレストアントの大元を叩く為の戦力が足りないのだ。」
「そこを俺に任せられるかどうかの試練だったと?」
「そういうことだ。私が見る限り、そこの隣に居るチサとやらも強いのであろう?少なくともエルダーラフなどよりはずっと。もしかすると私よりも強いかもしれぬな。」
するとその会話の片隅にいたエルダーラフが激怒する。
「確かに我はそこの少年ジンには負けました!だが、そこの少女にまで負ける筈がありません。どうやらキラークィ様は我がそこまで弱いと言われるとは思いもしませんでしたよ。」
キラークィは溜息をつく。そこでもっとしっかり敵の力を見極めることが出来たのなら、もう一皮剥けるのになと。
「すまぬがチサよ。エルダーラフと戦ってやってはくれぬか?奴は自分の力を過信しすぎておる。本当はさっきの試練をやってやれば一目瞭然なのだが、私も年でな...1日に一度が限界なのだよ。」
チサは待ってましたとばかりに口を開く。
「うむ。妾もあの物言いには思うところがあったからの。それにジンだけ試練とやらがやれるのはズルいと思っておったのじゃ!妾もちと試したいことがあったしの。」
こうしてキラークィとチサとの模擬戦が行われることになるのであった。
作者は意外と音楽も好きだったりするのですが、最近は小説書きながらBUMP OF CHICKENの『Gravity』を聞くのが個人的に流行りだったりします。他にも聞いてる曲はあるんだけど、この曲が一番聞いてるかなあ。何度聞いても心を震えさせてあったかくしてくれる様なそんな気がしてます。
では、43話もよろしくお願いしますね!
20/11/24
これから先が気になる!面白い!と思えた方は是非是非評価とブックマークをよろしくお願いします!




