第40話 フォレストアント
俺たちはトリスによって会議用のトープへと案内される。そこは人が10人入れるかといった会議用としては物足りない場所だった。中央には俺の胸ほどの高さの木製の楕円形テーブルが置かれている。椅子は無いことから立ったままで話をする場所のようだ。
トリスはトープ内に設置してある松明に火を入れてゆく。こうして室内は明るくなり、トリスと共に机のある場所まで移動する。
「さて、じゃあまず何から話すかだが....話すことが多そうだ。何から聞きたい?」
トリスはそう尋ねる。
そこで、いつもの定席である俺の肩から降りないチサが言う。レベルが上がった影響なのかチサが肩に乗ったままでも殆ど動きに影響が出ないので、チサが乗っていても特に問題は無いのだが。
「なら、まずはこの大陸についてじゃの。今この大陸はどういう状況にあるのじゃ?見たところずっと地下で暮らしておるわけではないのであろう。」
「ああ、勿論だ。そうだな....まずだが、今この大陸には大きく分けて3つの勢力が存在している。一つ目は我々人間。二つ目は昨日台座から現れ少年が倒したブラウンエルフ。最後に三つ目はあいつら......フォレストアントだ。」
「フォレストアント?」
俺は最後にトリスの口から知らない名が出たので、尋ねる。
「そうだ。外見は緑色の蟻で、大きさは1m〜3m。3年前突然現れて、俺たち人間はなす術なく蹂躙された。だからこそ藁にも縋る思いで我々は、当時同盟関係だったブラウンエルフへと頭を下げたのだ。ブラウンエルフは人間を遥かに超える寿命と人間には真似できぬ技術を持っている故にな。」
俺は思う。3年前...それはつまり俺がゲチスから逃げ、神と出会った時期に符号するし、チサの言うモンスターが現れ出した時期に一致する。つまり、フォレストアントはモンスターである可能性が高い。
そうやって考えている俺を横目にチサが尋ねる。
「同盟関係であるならば、どうして今はこうも下手に出ておるのじゃ?昨日のエルダーラフとやらの時のバッツのアレはやりすぎの様な気がするがのう。」
「ああ、最初はそうだった。だが、この3年でその力関係は変わった。我々は唯一勝っていた数の力を失い、ブラウンエルフの技術が無ければ、生きていけなくなった。それを利用して奴らは俺たち人間を下に見るようになったんだ。最初のうちは断れたが、俺たちもこの地下に居られないとなると話は変わってくる。何故なら地上に住めば俺達は常にあいつらと戦わねばならんからな。そうなればそう遠くないうちに俺たちは全滅だろう。」
「俺たちが来た時はフォレストアントは見なかったがそれはどうなっているんだ?」
ふと疑問に思った俺は尋ねる。
「それは奴らが昼行性だからだ。奴らは昼は餌を探して大陸内を徘徊し、夜になれば巣へと戻っていく。奴らは習性からなのか、自分達が通った後に糞を残し、そいつを目印に活動している。だから、夜は見回りを兼ねて糞の回収をしているんだ。ここを悟られたら終わりだからな。拾った糞は乾燥させた後こうして松明の燃料にしている。」
俺は周囲の松明を見渡して驚く。糞なのに臭いがしないこと、何処から燃料を持って来ているのか疑問にも思ったがそういうことだったのか。
チサは尋ねる。
「ここで糞を使っては、フォレストアントに知られるのではないのかの?糞を目印にやって来るのなら。」
「それは問題無い。奴らは目や鼻は利かないからな。つまり近くにある糞と糞を繋いだ線上を移動し、行先に糞が無くなれば新たに設置するのだ。だから、夜のうちに村の見回りと周囲の糞の回収をするわけだ。」
俺は納得するが、そうなるとブラウンエルフは何処に住んでいるかという問題が出てくる。
「なら、ブラウンエルフもどこか地下にいるのか?」
「違う。ブラウンエルフは樹上に住んでいるのだ。この地上にある100mを超える木の上に。ブラウンエルフ達はあいつらが出た時、最初は倒そうとしていた。だが、数が多く、倒せないと悟った時、転移台だけを地上に何箇所か残し、蟻が登って来られないように木から地上に近い枝を切り落としたのだ。」
トリスは悔しそうな顔を浮かべていた。
あのブラウンエルフ達に頭を下げねば命を繋ぐことは出来ず、それを自分達の力で為せないということを。
「ん....?なら、ブラウンエルフはフォレストアントがいた方がいいんじゃ無いのか?トリス達を支配できるし、自分達は人間が居なくても困らないんだろう?」
俺が口にする疑問にトリスは答える。
「それがそういう単純な話でも無いんだ。ブラウンエルフと人間はずっとずっと昔から共存しなければ生きていけないのだ。特にこの大陸ではな。」
トリスはため息をつくと言葉を紡ぐ。
「この大陸のか中央には世界樹があるんだ。世界樹はその木全てが貴重な道具や薬を作る素材となる。また、世界樹はこの大陸の植生を護ってもいる。だが、この世界樹が生きてゆくのに必要なのがエルフと人間の無垢の乙女の心。即ち、幼い少女というわけだ。今少年の肩に座っている少女をバッツが攫ったのもそういう事情があったわけだ。」
トリスは心からすまなそうにして言う。
「さて、他にも聞きたいことはあるだろう。だが、ここからが今回協力してほしいことなんだ。」
トリスは俺とチサの顔を見て言う。
「まずはあのブラウンエルフの族長にあってもらう。そしてあいつらを倒せると言うことをそこで証明して欲しい。ブラウンエルフだって、今の関係では不味いことはわかっているはずだ。だが、ブラウンエルフにも現状維持が限界であいつらを討つ力が無い。だからこそ、少年達にはその技能を以ってエルフと対等な関係を結びたいんだ。元の生活を取り戻す為にもな。」
俺は即答する。
「わかった。協力する。」
「ジンが協力するなら、妾も異論はないの。」
こうしてジンは、フォレストアントとの戦いに巻き込まれてゆくことになるのだった......。
ここで第40話...
このお話は大陸についてのトリスのお話がメインでした。この大陸でどういう風にジンが動いていくかは決まってるんだけど、いざ話を作っていくと中々悩ましい部分がありますね。
これから先も頑張って書いていきますのでお楽しみに!
では41話もよろしくお願いします。
20/11/24
これから先が気になる!面白い!と思えた方は是非是非評価とブックマークをよろしくお願いします!




