第39話 協力関係
顔を苦痛に歪めながらも、俺のもとへ、トリスはやってきた。俺も情報を聞きたかったから、腱を切られて立ち上がることも出来ないトリスのもとへ行っても良かった。
だが、チサを攫ったこと。
俺とチサを引き離そうとしたこと。
その2点において俺は下手に出るような真似は絶対にしたくなかった。
そうしてトリスが這う這う俺のもとへやってくる。だが、苦痛や、このエルフを倒した事で歪んでいると思っていたトリスの顔は非常に晴れやかだった。
そうしてこう言う。
「少年!恥を忍んで頼む!そっちの嬢ちゃんを攫ったのは本当にすまなかった。謝っても許されないことをしたっていうのは重々承知はしている。だが、少年だけが希望なんだ。再度言う。俺の頼みを聞いてはくれないか?」
俺は驚く。あっさり謝罪と頼みをしてくるトリスに対して。俺は驚いた顔を一瞬で元に戻す。
(この辺りやっぱり年の功なのか、経験からなのか。ポーカーフェイスは難しいね....。)
そうは思いながらも俺は聞く。
「その頼みを俺が聞く必要はあるのか?」
トリスは待ってましたと言わんばかりの表情を浮かべる。
「ああ、もし頼みを聞いてくれるならこの大陸のことや俺の知ってることなら全て話してもいい。
見たところ少年は、この大陸の出身じゃないんだろう?つまりこの大陸について何も知らない訳だ。こう見えて俺はここ以外の集落にも顔が利く。外から来た少年ならこの意味が分かるだろう?」
俺はその言葉を聞いて思う。たしかにこの提案を受ける意義は大きい。たしかにこの大陸のことを俺は知らないしつてだって無い。
そんな中でチサを攫わねばならぬ程の逼迫した状況に近いであろう他の集落で同じ条件を得られる可能性はかなり低くなる。
そこへバッツが口を挟む。
「ちょっと待ってくださいよぉ。トリスの旦那!いいんですかい?彼の連れを僕が攫っちまったんですよ?彼が裏切ったらどうするんですかい。」
トリスは言う。
「バッツ。なら今から来るであろうエルフの制裁に俺達は耐えられるか?どの道この少年の助けを得られねば我らはあいつらの餌だ。さっき真っ先にエルダーラフに少年を殺す提案をした手前、怖いんだろう?攫ってきたのもお前だしな。」
バッツは真っ青になって黙り込む。
恐らく図星だったのだろう。
「そんなわけで重ね重ねにはなるが言う。少年よ!今までのことは一旦水に流して、頼みを聞いてはくれないか。この通りだ!」
トリスは、エルダーラフには怪我人のフリ...いや実際怪我人なのだが、下げなかった頭を年下である俺に向かって下げたのだ。俺にも特に異論はなく、
「頼みを聞いても良いのではないか?どの道妾とジンもどこかで情報は集めねばならんしの。」
チサにも異論が無いようなので、俺は言う。
「分かった。頼みを聞こうと思う。」
するとトリスは頭を上げてジンに言う。
「ありがとう....!感謝する。」
そうしてその場にいた、俺、チサ、トリス、バッツは改めて自己紹介をする。
地面から立ち上がれないトリスはかなり可愛そうではあったが、自業自得ということで納得してもらうしか無い。
そして大陸のことや、協力内容の擦り合わせにはかなり時間がかかりそうだったので今日は軽く俺達のステータスや、チサが実はモンスターであることを教えると勿論トリスは驚いていたが、バッツは目を白黒させて仰天した。後、脛を例の台座にぶつけて転げ回っていた。
本当に忙しい奴である。
そのあと、トリスは俺に袋だけ返して欲しいと言うので俺はインベントリから袋を取り出して渡す。バッツの袋は、チサを拘束するのに相当苦労したようで、空になっていたので取っていない。
今の状況を収集しなければいけないということで、トリスは袋から何かを取り出すと精一杯上を向いて吹き鳴らす。
ピーーーーーーーーーー!!!!
吹き終わった後に聞くと、これを吹くとトリスの部下がやってくるのだそうだ。そうして数分後にやって来たトリスの部下は、荒れに荒れた空間に驚き若干混乱はあったものの、トリスとバッツが何とか収集し、俺とチサの紹介がされる。
その後、気絶しているエルダーラフを拘束し、トリスはバッツとその他数名の部下に運ばれて先に行ってしまう。朝が来るまでに地上に出ている部下を地下へと呼び戻さねばならぬということらしい。
ちなみにだが、トリスの剣は返そうとしたら、協力する報酬の前払いにと受け取りを拒否された。俺としては武器があるととても助かるので、素直に受け取った。
そのあとは俺達が泊まる部屋......チサが同部屋を希望したので同部屋となり、俺は3年ぶりとなるベットで横になる。俺の懐にはチサが入ってくるので腕枕をしてやり、眠るのを見届ける。
俺はそんなチサを見ながらも、こんな平穏な日々がいつか迎えられたらいいのになと心から願いつつ、眠りにつくのだった。
そうして夜が来る。寝たのは昼前だったから夜に起きるのはある意味当然ではあるのだが、まあ、時間感覚なんて平気で徹夜したり、日の当たらない空間で過ごす俺には今更だ。
俺が目を覚ますと、俺の腕を枕にしていたチサもまた目を覚ます。
「おはよう。チサ。」
「んー。まだ眠いのじゃ。」
今は夜なのにおはようか...なんてどうでもいいことを考えるも、特に気にせずに身支度を整える。
実は俺はズボンしか履いていない。
上半身は気配遮断で、誰からも俺が裸であることが分からないようにしている。寝ている時は別に来てなくても問題無いし。
下半身も別に無くていいんだけど、万が一が起こるといけないからね。
そして起きてチサと一緒に外に出るとトリスが待っていた。
「おう!起きたか少年。これから俺達の協力関係とこの大陸についての話をさせて貰うぜ。エルダーラフを捕らえておくのに以前の会議用のトープをつかっちまったからこっちに新しく会議用のトープを建てたんだ。」
(へー。あのドーム状の家トープっていうのか。)
そんなことを俺は思いながら、チサを今日は左肩に乗せて、トリスの後に続くのだった。
第39話でした!
一気にPV増えて嬉し〜!
それと同時に次で40話ですね!また一つ節目を迎えるっていうのもまた嬉しいものですね。
もうすぐ12月。個人的には寒いの嫌いなんで一気に4月くらいまで季節進まないかなあ....
では!次回で第40話!引き続き宜しくお願いしますm(__)m
20/11/23
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