第34話 チサの行方②
俺は村の中を走る。走る。走る。
チサの気配のする方へ。
既に時間は明け方...ではあるのだ。あるのだがこの集落の中にもやはり巨木は、村に入る前と同じくらいの感覚で生えており、辺りはまだ深夜のように暗かった。
そんな中を走る俺の様子に気付く者はいないどころか、この村の住民はまだ眠っているのか誰も外を出歩いてはいなかった。
「そういえば、この森って動物やモンスターはいないのか?くる途中でも全く気配を感じなかったけど。」
ジンはふとそう思うものの、すぐにチサの事に考えを移す。すると、先程太った見張りからの指示を受け、村の中へと走っていった村の見張りの片割れに追いつく。
俺は追い抜こうかと思った。村に入った瞬間はそのまま村を抜けてチサのところまで走るつもりだったのだから。だが、手がかりを得られそうな人物が今目の前にいる。このまま闇雲に走ってチサを助け出そうとして何か罠でもあっては堪らない。
俺はそう考えを切り替える。いくら不死身でも罠にかかれば、脱出や解除には相応の時間を要するのだから。
チサを助け出したい逸る気持ちを抑えて、走る見張りの跡をつける。当然気配遮断の達人である俺の姿には気づかない。
そして周りのドーム状の布でできた家よりも一回り大きな家が見えて来た。
なるほど。そこに入るのか。と思いきや、その男はその大きな家の手前にある小さな家の方へ入ろうとする。俺は入り口の布で出来たカーテンが揺れるのを防ぐべく、男の背中にピッタリとくっついて内部へと入る。
そこには階段があった。地下へと降りる階段が。
俺は内心冷や汗をかく。
(マジかよ...この男について来て正解だったな...まさか地下への階段が隠されていたとは。闇雲にチサを追っていたら大幅に遅れるところだったね。)
そして俺は目の前の男の後ろにピッタリと付き、階段を駆け下る。階段の中は真っ暗で灯りひとつない。だが、チサの本体である首長竜の胃の中で生活していた俺にとって外よりもさらに暗い暗闇の中でも全く問題なく周囲を把握出来た。
すると途中で幾つもの通路に枝分かれした踊り場に出る。数えてみれば俺たちが降りてきた階段以外に7本の道があった。俺は内心舌を巻く。
(これはまた...さっきこの男を追い越さないで良かった。)
そして目の前の男は通路を迷わずに進んでゆく。右から2本目の通路だった。俺もそれに付き従う。
その後も3回ほどこのような抜け道を経由する。
(なんか昔、本で見た蟻の巣みたいだね。)
そう俺は思いながらも、漸く通路の先に人の気配がするのを感じた。
通路から出るとそこには松明によるものではあったが、多くの灯りが周囲を照らしているかなり大きな空間だった。
そして目の前には数百人という人がそこら中で身を寄せ合っていた。
(な....!!?)
俺は急に目の前に広がった光景に驚く。
(なるほどね...。上で全く出歩く人が居なかったのはみんなが寝ていたんじゃない。みんな地下にいたのか。)
俺は先程の地上の村の様子に納得する。それと同時に疑問が生まれる。
(ならば何故、村の外に見張りが必要なんだ?これだけ入り組んでいる地下ならば誰もここまでたどり着けないまたは辿り着いたとしてもごく少数になるはずだ。それに見張りがここへ逃げ込んだら敵に居場所を知らせるだけな気がするけど。)
そして俺は男を見失わぬようついてゆく。するとこの地下空間の奥に、地上にあった通常の家と同じドーム状の家がいくつかあるのが見えてくる。
男についてそのうちの一つへ入ると、そこには妙齢のだが体は鍛え上げられた筋肉が目立つ1人の男がいた。
「ゼェ...ゼェ...トリス様...!先ほどバッツが捕まえてきた少女を探す男がこの村の入り口までやってまいりました..!」
ここまで全力で走った見張りの男は息を切らしていたが、流石見張りというべきか。伝えるべき報告は詰まることなく流れる様に行う。
「なんだと?その男はなんて言ってるんだ?」
「その少女を引き渡すようにとのこと。渡さない場合はこの村に直接入ると言っているようで....。」
そうして男は外へ見回りへと行っていた2人がなす術もなく倒されたこと、そして、男とは言いつつもその者の姿は見えず、聞こえた声だけで男と判断しており、その男の容姿は一切分からないが外への見張りに出ていた2人がなす術なく負けたことを報告する。
それを聞いたトリスは言う。
「不味いな。今は非常に不味い。今年はこんな生活をしているおかげで誰一人女の子がいない。もう差し出せる者は皆差し出しちまって、今流れ着いた希望であるあの女の子を返すわけにはいかねぇ。だが、あいつらに引き渡すまで時間を稼がねばこの村は本当の意味で終わっちまう!くそっ。何とかならねぇか!おい。」
トリスは数秒愚痴を零しながらも悩み、報告へ来た見張りの男へと指示を出す。
「おい!今眠っている全ての見張りを叩き起こして地上へ向かわせるんだ!そしてお前はなるべく遠回りしながら、ここへ奴を案内しろ。2時間だ!2時間でいい。時間を稼げ!俺は万が一に備えてバッツと少女の元へ向かう。無事に取引を為さねば。その気配が全く感じられない男の怒りで滅ぶかもしれないが、我々は少しでも生き延びねばならんのだ!」
そう追い詰められたかの様な顔をしてトリスは言う。
俺は当の本人が全て聞いているとも知らず必死で指示を出すトリスがかわいそうでありながら、とても滑稽に思えていた。
(さて、あいつらとか、村が滅ぶとか気になるワードがあったけど、ひとまず俺はこのトリスとやらについていくとするか。俺には全く気付いてないみたいだし。)
チサを救う為の大きな手がかりを得られたことに笑みを浮かべつつ大慌てで装備を整えるトリスと、再度走り去ってゆく見張りの男を見送るのだった。
最近色んな作者さんの作品を読んでて思うんだけど、自分が面白いと感じる作品やブックマークが多くつく作品とそうでない作品とではやはり目に見えて大きな差があるんですよね。
それはわかるんだけど、いざ自分の作品を言葉にしようとすると中々に難しいものですね...
最近、この作品を書き始めた時よりかは成長してる気がするけど、どうでしょうか?そんな事を思いながら書く作者でした。
第35話もよろしくお願いしますね!
20/11/22
これから先が気になる!面白い!と思えた方は是非是非評価よろしくお願いします!




