第33話 チサの行方①
俺はひとまず俺自身の力を見せた方が良いだろうと判断する。もし、勝てない相手であれば、そのまま気配遮断で村まで急行すれば良い。勝てるのであれば、屈服させて案内してもらえば良いだろうと判断して。
男達は背後から聞こえた声に即座に振り返る。
....が、そこには誰もいない。
「こっちだ。」
2人が見ているのとは逆側からまた声がする。
男達はその度に声の方を振り向くも何もおらず、次第に恐怖し始める。そうして、見張りだった男のうちの片方が言う。
「おい!こいつは俺達の手に負えない。夢だと思いたいがここまで声が聞こえるってのは間違いなく現実だ。2人で別々に撤退するぞ。」
「おう。」
この辺りの連携の速さは、流石見張りに選ばれた者達だったのだろう。そういうや否や一目散に別々の方向へ逃げようとした。
だが、呆気なく2人は地面を拝むこととなる。
いくら連携が速かろうとジンにとってはチサの体内で戦ったモンスターの何倍も遅く、2人の動きを見てから足をかけ、転ばせるには十分だった。
こうして走り出した瞬間に転ばされることになった彼らは、盛大に地面に顔をぶつける。
「ホゲッッ!!!」 「グファッッ!!!」
人間、予想していない攻撃には滅法弱いのもあるが、ジンの足払いの速さもまた強烈だった。
俺は少し驚いていた。この男達は見張りを任されるだけあってかなり強そうに見えた。なのに実際には俺の動きを捉えることさえ出来ず、剰え、この2人の逃走の瞬間ですら俺にとってはスローモーションにしか見えなかった。
(あれ?もう終わり?)
しかし、俺はきっと2人以外にも助けが来るだろうと思い尋ねてみる。
「おい、助けを呼ばなくていいのか?」
勿論気配遮断を使っているので彼らに俺の居場所は分からない。地面に顔を打ちつけてそれどころでは無さそうだが。
痛みと地面に衝突した顔を歪めた片方の太った見張りの男は言う。ガリの方は気を失っているようで動かない。
「助けはよばねぇよ。呼んだら村の場所が割れちまうからな。特に今は絶対に呼ぶ訳にはいかん。例え俺達が捕まったり、殺されるとしてもな!」
「なら、俺の質問には答えてくれるか?」
「いいぜ。村に関係ないことならなっ。」
俺は単刀直入に聞くことにする。
「真紅のワンピースを着た、背丈は俺の腰より少し高いくらいの女の子を見なかったか?もし見ていたら何処へ向かったか教えてほしい。」
「しらねぇな。」
「本当に知らないのか?」
「ああ。」
どうやらこの男、シラを切り通すつもりのようだ。それならそれで此方にもやり方というものがある。
「仕方ない。嘘をつくのなら、俺はその集落とやらに直接向かうしか無いな。」
俺は敢えて足音だけ気配遮断を解除して、チサのいる方向へと向かうフリをする。この3年間の間で、俺は消す気配をも選べるようになっていた。まあ、虚像分身の応用だから、全部消すよりも魔力は使うんだけどね。
そして俺の足音の向かう方角を悟った男は焦る。
「待て!!!待つんだ!!」
俺は足音を立て続ける。
「話す!全部話すから!それに俺を殺したっていい。頼むからそっちにいくのだけは勘弁してくれ!」
太った見張りの男は必死になっていう。
「なら、さっき言った女の子は何処へ向かったんだ?」
俺は焦りでイライラする気持ちを抑えながら尋ねる。
すると男はかなり悩むようなそぶりを見せていたものの、諦めたような表情をする。
「仕方ねぇ...どうあっても村へ行くのを止められそうにもねぇな。だったら案内してやる。」
「次からは最初からそうしてくれよ。」
「お...おい!こんな得体の知れない姿も見せない奴を村に入れるのか???」
このタイミングで目覚めたガリの男は纏まりかけた話を再度振り出しに戻そうとするので、急いでいた俺は顎に一撃入れる。
「ぐぁっ。」
太った見張りの男は何が起こったか分からぬうちに再度気絶した男を見て苦虫を噛み潰したような顔をする。
「じゃあ邪魔も無くなったし案内してもらおうか。君達が俺に不利益を加えない限りは俺も手を出さないと誓おう。」
「なら、こいつを背負って行ってもいいか?頼む!」
太った見張りの男は言う。
「駄目だ。足が遅くなるだろう。一刻も早く村へ案内するんだ。そこで倒れてる奴は他の見張りか村の奴に迎えに来させるんだ。」
男に渋々同意させると、俺は太った男を走らせる。今の俺にとっては非常に遅い歩みであったために、ガリの方に案内させるべきたったかなと思うもとりあえず急がせる。村から違う方向にいけば―。と脅しながら....。
そして30分ほど行った先には丸いドーム状の布のようなものでできた家が立ち並ぶ村へとたどり着く。
太った見張りの男は村の入り口で番をしていた2人へと話にいく。息を切らして、しかも顔から血を流して帰って来た男の姿を見て焦る様子が見えたが、太った見張りの男は事情を伝え2人のうち1人をガリの方の見張りを助けにいかせ、もう1人を村の中へと村長を呼びにいかせる。
だがこの時俺は、感じ取っていた。チサが離れ始めたことを。この村にたどり着くまでは、近づくいっぽうだったチサの気配が、ここに来て急に遠ざかり始めたのだ。
「おい、話が違うじゃないか。」
俺は気配遮断を使っていながらも、声に殺気を乗せて太った見張りの男に告げる。
「おいおい...俺は...何も...してねぇ...ぞ。」
男は俺の急な殺気をギリギリで耐える。
「ここまでだ。俺に不利益が生じた可能性があるから、村へ入らせてもらう!!」
俺は急に村があると思われる敷地からチサが離れて気が気でなかった為に、そう言うや否や飛び出していた。
「チサは絶対に護るんだ!」
そう呟いて。
第34話でした〜そろそろこのお話も9万字です。結構書いたなあ...と思いつつも少しずつ書き進めております。
1000PV突破感謝です!これからもジンの物語を見守って頂けたら嬉しいです。
20/11/22
これから先が気になる!面白い!と思えた方は是非是非評価よろしくお願いします!




