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第3話。

「では、スタートです。

鬼の宮沢みやざわ 莉乃りの先生と前田まえだ 史也ふみや先生が追いかけます」


俺らよりも明らかに遠くに藤咲中1年1組のみんながいるはずなのに、すごく近くにみんながいると思うぐらい、叫び声が響いている。

2回目の俺と紫織は口を噤んで1年2組の先生の教卓の下に隠れている。

藤咲中学の1年1組の生徒の人数は40名だ。

ここら辺に公立中高一貫校はあまりない。だから、ここら辺に住んでる公立中高一貫校希望者の殆どは藤咲を受検する。

だから倍率はかなり高かった。

1クラス40名、計120名で1学年だ。

受験者数は男女合わせて1080人だ。

つまり倍率は9倍。

普通の公立中高一貫校よりも高い数値だ。


その40名全員が死ぬ恐れがあるなんて、考えただけでもぞっとする。

心ヶ丘の時の死亡者数よりも圧倒的に多い。1.5倍ぐらいだ。


ガタンッ!


その音に、反射的に俺と紫織の体が跳ねる。

誰だ……?

ジッと息を潜めて、耳に全神経を集中させる。

こんなところで死ぬなんて、シャレにならねぇ。

少なくとも、俺らは、絶対に。

これじゃあ皐の死を無駄にしただけじゃねえか。


「あれぇ〜?

さっきここに一誠君とシオリン入らなかった? え・い・と・くん? 」

「……」

あぁ。この声は絵糸と冬坂か。

ビビった。先生かと思ったぜ〜。


「おっす、絵糸と冬坂」

「随分と落ち着いているのね、2人とも」

確かに2人ともやけに落ち着いている。特に絵糸。

わかる人いないと思うけど、

ラインのスタンプの

“真顔くん。”ってスタンプがあるんだけど、絵糸はその真顔くんの顔にそっくりな顔をしている。

ちょっと調べてみ。


「ねぇ、一誠君、シオリン、

2人とも、こんな感じのやつを昔に

体験したってことだよね?

ツイッターとか掲示板とかで見たけど、大変だったよね。

でも今は人ごとじゃないか」


俺らがしゃがんで隠れていたから、

冬坂も一緒になってしゃがむ。

こうしてまじまじと冬坂を見てみると、案外冬坂も可愛いよな。

なんつーか、流石にまだ中1だし、

化粧はしてないだろーけど、

肌はシミもニキビもほくろも一つもなくて綺麗だし、

目はぱっちり開いていて大きい。

よくみると二重だ。

いつも甘ったるいようなフニャっとした声を出しているが、

目元はキリッと引き締まっていて、

なおかつ可愛くて、

鼻の形も整っている。


逆に絵糸が惚れないのが少し不思議なぐらい。


「ん? どうしたの、一誠くん。

そんなに私の顔じっくり見つめて。

なんかついてる?

そんなに見られたら照れるよ……」

冬坂が少し顔を赤らめて伏せる。

その冬坂の行動を見て体の隅まで熱くなるのを感じた。


「わ、わりぃ……」


横から紫織の視線を感じる。

「あ、紫織、これは、えっと、その……違うんだ、下心とかがあったわけじゃなくてだな、その……なんつーか、いや、えっとー……」

よく考えてみれば、なんでこんなに焦ってんだ?

ただ見てただけだろ?

別に目が胸のほーに行ってたわけじゃねぇし、仮に行ってたとしても、

第1紫織と付き合ってるわけでもねぇ。


「え? なにが? 下心?

え、本田くん……あなた……」

ちょっと……。

なんか勘違いされてね!?


「だぁぁ! 違くて、その!

いや、今のは聞かなかったってことで! 」

俺は思わず叫んでしまった。

その途端紫織の目つきがキッとなる。

「本田くん、そんなに大声を上げないで。気づかれてしまうでしょう? 」

「あ、す、すんません……」

俺は思わず、負け越しになってしまった。

絵糸がギロッと睨んでくる。

心の奥に何かがぐさっと刺さったような気分だ。


「で? いつまでたっても動かないってわけにはいかないでしょう。

バレるのも時間の問題よ。

移動しましょう」

紫織は相変わらず大人びた言い方で言う。

絵糸も冬坂もうなづいている。

俺も「そーすっか」と言い、立ち上がる。

ゴンッッッッ!

その途端、鈍い音が上がる。

「ぐ、ぁぁぁぁぁ!いってえ! 」

俺は思わず大声を出す。

たったと同時に、教卓に思い切り頭をぶつけたのだ。

俺はしばらく小刻みに震えながらしゃがむ。

紫織は一緒になってしゃがんで、

「本田くん? 大丈夫? 」と言う。

冬坂は「いったそぉぉ……」といいながら、顔をしかめる。


そして絵糸は……。

「ま、自業自得だな。

日頃からふざけまくってる一誠はこのぐらいが丁度いいんじゃねぇの? 」

と、鼻で笑いながら俺を見下す。


「くっそが……」

俺は思わず声を漏らす。

そしてゆっくり立ち上がる。

さらにさっきの絵糸のウザいぐらいの

見下しを仕返しするため、

絵糸よりも8センチほど身長が高い

この俺が絵糸を見下す。


その俺に少しムッとした表情を

見せる絵糸。

少しスッキリした気分。


そして俺らはとりあえず1年2組から出る。

「ちょ、わり。俺一旦トイレ行くわ。

別行動していいよ。てかしよ。

俺からちょっと離れてくんね」

絵糸は急にそんなことを言った。


え、そんなに上から目線がウザかった? え? なした?

でも絵糸の口調からして

対して怒ってもいなそうだ。

どうしたんだろう。


ちょっときになる。


「ちょい俺絵糸の様子見てくるわ。

悪いけど紫織と冬坂だけで隠れに言ってくんね。あとでこっちから探す」

そう言うと紫織は、

「そうね。ちょっと片桐くんの

様子がおかしい気もするわ。

わかった。私は冬坂さんと隠れるから。なんかあったら、まぁ頑張ってね」

と優しい口調で言ってくれた。

やっぱり紫織のこう言うところが

好きだったりする。


「えー、シオリンだけぇ?

そんなの華がないよぉ。

絵糸君が居なくなっただけでも

華がなくなったって言うのに、

一誠君まで居なくなったら

シオリンだけとか、つまんないぃ」

と冬坂。

それは紫織に失礼だろ。


俺はかなりイラつきながら、

絵糸の入ったトイレの近くに行く。

そうするとなにやら話し声が聞こえる。

ん……。なんつってんの?

聞き取れねぇ。

俺は思わずトイレに耳をくっつけてしまう。


「……だから、前も言っただ……。

か……がと……わた……べは……だから……になって

……って、今は伝える必要ないだろ。

こっちは殺人ゲームの真っ最中なんだから。

そんじゃまたあとで」


な、なんだ今の……。

かがとわたべ? 誰だその人たち。

しかも電話の相手は誰?

なんでこんな緊迫した雰囲気の中電話なんかできるんだ?

なんか少し、嫌な予感がする。

まさか……な……。


でもなにか、怖い……!

俺は思わず、その場を立ち去った。

そして、運よく学校に持って来ていたスマホで、天才カルテットのグループラインに、こう送った。



一誠『紫織と冬坂今どこいる? 』

一誠『それと絵糸も早く戻ってこい』



そう送って10秒も経たないうちに

再びスマホがブルリと震えた。



シオリ『私達は今三階の二年一組にいるわ』

さくらんぼ『あれ? 一誠君絵糸君を

探しに行ったんじゃないの? 』



うっわ。

冬坂余計なことを。

絵糸にバレるじゃねぇかよ。

俺が盗み聞きしてたこと。



一誠『それが探してもいねぇんだよな、英とどこにも』



そこで絵糸から返信が来た。



エイト『“英と”じゃない。

誤字ってる。絵糸な。』

エイト『あと俺はトイレから帰って来て、今二年一組に向かってる。

ちょいまち。』



おっと。誤字。


そんじゃ俺も二年一組に行くか。

その時の俺はすっかり、

さっきの変なとっかかりは消えていた。けれど心の奥のどこかで、

絵糸に対する不安があったりした。

だが、それは深く考えないことにした。

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