再開の再会は災害と災禍の始まり
わらわたちはプレートの協力によって白の国を脱出し、アイリスの天使魔法で最初の場所にやって来た。この下にキッシュが存在している…どうせ、また物作りに夢中で出て来ぬのであろう…
しかし、解せぬ問題が1つ…キッシュともう1つの反応。つまり、クロバーの持つ神魂の欠片が地の鎧とは別の場所にあるという事じゃ。機械人が子を成すという話はあるにはある…が、ただの鎧と化したクロバーがそれを出来たとは思えぬ。後継者か、あるいは……
どちらにせよ、確かめれば良い問題じゃ。
「じゃあ、掘削していくよ。ミミズ、モグラ、キツネをインストール……ミモギフォーム。更にしっぽをドリルチェンジ…一気に掘り抜くよっ!」
イルムはキッシュに早く会いたいのか…いや、わらわたち全員が同じ気持ちではある。他所の世界だからというのもあるが、何度この世界を滅ぼしてキッシュを迎えに行こうかとまで考えたものじゃ。だいぶキッシュに毒されておるな。
そんな事を考えている間もなく、イルムはその場所へと一気に掘り抜いた…有言実行とはいうが、さすがキッシュのペットじゃの。
そして、辿り着いたその空間には……ボロボロの白骨に膝枕をする女が1人居っただけじゃった。
◇
マスターが生命活動を終えて、425日と数時間……マスター以後、初めて来訪者があった。
「警告。それ以上近付けば敵対行動と見なし攻撃します」
カンナは浸入してきた5人に対し警告を発する……しかし、その中にデータ登録されていた個体認識を確認。カンナがフォーマット後にも残されていた個人情報と判断。登録者名、年齢詐称の魔族で斧の勇者チェリア・ブロッサムと判別。但し、フォーマット前の情報は消去済み。従って味方と断定出来ず。
「ま、待つのじゃ。聞きたい事がある…お主はクロバーなのか?」
年齢詐称魔族の問いにカンナは解答を請求されたものと判断……フォーマット前の個体名にクロバー・スリーフリートの登録名を認識。問いに対する正答可能率82.9%…隠匿すべき情報でないと判断。最適解を言語構築…
「解。カンナはカンナであると判断します。但し、カンナに使用されているコアのフォーマット前の登録名にクロバー・スリーフリートの名があります。従って、かつてクロバー・スリーフリートであったという認識に違いはありません」
「えっ…カンナって、あのカンナなの?」
「解。どのカンナか判断しかねます」
一番小さき個体の問いに即時返答を行う。その小さき個体の歪さを確認………照合データあり。左右の耳と歯、しっぽに特徴あり。マスターのペットたちとの適合率96.7%…マスターのペット、及び関係者と特定。マスターの遺言を伝えます。
「マスターの遺言を再生……『俺はこいつと旅に出るん…………』以上です」
「そんなふざけた遺言……まさか、その白骨って…」
「解。カンナのマスター、キッシュこと桐生柳の遺体です」
◇
その言葉を聞いた時、足の力が抜けたのを感じた。それは他の全員も同じだった…
「そんな……キッシュさんが……嘘だ………」
「キッシュ殿が……そんな………」
「ご主人……嘘だ。嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だっ!」
「解。嘘ではありません。この亡骸は間違いなくマスターキッシュのものです。カンナの最適化直後に昏睡、その後心音が急激に低下し心肺停止…蘇生処置を行うも心拍再開ならず絶命と判断。マスターの死亡を確認し既に425日と数時間が経過しています」
3人が否定したい現実を……あの時に感じた以上の絶望をわたしたちは感じていた。パパが死んでいた。しかも、わたしたちがここに来るずっとずっと前に……
だけど、そんな絶望にそまる中で1人だけ諦めていない人がいた。
「426日前には生きていた…それは間違いないのじゃな?」
「解、間違いありません」
「ふむ……ギリギリかの。お主ら、キッシュを失うくらいなら他のものを全て失う覚悟はあるな。嫁であるならば当然」
ママのその言葉にわたしたちは顔を上げる。ママのしようとしている事は分かる…けど、それは……ううん。分かってる。
「おそらくわらわたちは平気じゃ。キッシュだけを限定的にする…いや、そうやってもここに居る全員でも足りぬ。カンナとやら、お主にも手伝ってもらうぞ。キッシュを救いたいであろう…当然」
「解。当然です」
「うむ。では、始めるとするかの……キッシュの、わらわたちの為にもな」
◇
意識が覚醒してきた。よく寝た…死んだように寝ていたと思う。腹減った、餓死しそうでやんす…とりあえず、起きよう。起きて何か食べようと思う。あ、何にも無かったんだった……地下だから何もありゃしないよ。さぁ、どないしよ。勿論、カンナをカニバるのは無しで…
「朝だ、朝だよー。朝ごはん食べて学校行くよ」
とりあえず起きた。何か食べよう…おや、ある意味食べれる嫁たちが何故か揃ってここに居るん?
「キッシュ」
「パパ」
「キッシュさん」
「キッシュ殿」
「ご主人」
「マスター」
「何なのん、おはーでマヨチュッチュなのん…オラ、ケチャラーやで。ポン酢派やで」
そんな言葉も虚しく、何故か全員に抱き締められたん。チュッチュされたん…いや、カンナはしてなかったし、イルムのは唇は阻止したん。タン塩はあまり好きでねえが嫁のタンは格別やで…いや、噛んだり噛みちぎったりしとりゃせんぜよ。
落ち着きを取り戻した嫁たちから事情を聞いたん…オラ、仮面○イダースカルになっとったん。え、お前にハードボイルドは似合わないだって。ボイルしたソーセージには粒マスタードたっぷりつけて食いたいんなー。
とりあえず、俺は生き返ったらしい…というか餓死したらしい。菓子でもええから食いたいんなー。でも、麩菓子は遠慮するん…飽きるわ。あの量想像しただけでお腹いっぱいっす。あれ?
で、最愛の嫁が中心となって使ったらしいんですよ…ほら、魔王な嫁さんは魔族での。特性みたいなのがあるんさ……レベルと引き換えに時を巻き戻せるらしいん。ほらほら、最初にチェリアと出会った時、全ては無かった事にされとったやん。リンドウとかもそうなってたやろ。あれ、実はチェリアがこの手法で時を巻き戻してたんや…だから魔王なのにレベル30だったわけよ。つまり、ロリババアの実年齢はもっと上なんやろな……まあ、ロリだから許す。
で、今回はそれを全員が1レベルになるまでやったらしい。ギリギリ足りたって言ってた。愛されとるな、俺……だから、チュッチュしまくって腰砕けとる嫁なわけですが。俺も愛してますぞ。
しかし、俺の愚行が招いたとはいえ嫁たちがレベル1まで下がったのはいただけない…また女神の仕業か。でなければ1年以上も差異など転移では生じないはず。やっぱ殴る…
というか、嫁のステータスって今まで自己申告以外に確認してなかったなと。後でざっくり確認しておこうか。後、床でレベル上げするん…イルムはどないしよ。
とりあえず、頬にキスさせられて比較的ポワポワしとる幼女嫁候補のイルムから今までの経緯聞くん…でも裏ストーリー準拠な気もするん。虐げられていた機械族の為に立ち上がった機械生命体こと地の鎧「ラ・フレシア」は次々と国を制圧していくん。でも、黒の国だけは回避したん…驚愕の事実。機械族の方が人間を虐げていたんだっ……え、知ってた?
いつの間にか人間が淘汰され機械族の世界に変わってしもてた各国……え、地の鎧は太陽に突っ込まにゃならんの。お尻にバルカン仕込んどんのと…あの仕様は無いわ。ケツワンア○ムって嫌やわ。カンナにそんな仕様はありませんよ、当然。
とにかく、この世界のテーマは機械族の支配から解き放て、あの子は人間だぞって事なん………でも、紫の国の女王なロリは故人らしいん。ちょうど1年前かどうかは知らんがこの上の王都があった夜に突然闇に落とした悪夢のようなゲーム時代の俺によってタイムパラドックスとか起きずに倒されたん。しかも、英雄扱いでんねん……俺はド○モ派やっちゅうに。
つまり、俺は自らタブーを犯していたのだ…ロリキャラ惨殺とか、死にたくなるんですが。俺、街を崩壊させて悪くねぇとか言ったかしら……確かに紫の国の女王はネクラそうでしたけども。俺、生まれ変わっても赤髪ロン毛にだけはなりたくない。ヒロインが巨乳とか死んでもお断りっす。
さて、紫の国の現地妻は諦める。もはや存在しないものを出してくれとは言えん…チェリアたちも最弱化してしもたわけだし。おのれ女神め…また殴る理由が増えたではないか。
さてさて。俺たちは今後しなきゃならない事は……やっぱり、地の鎧の回収っすかね。チェリアの収集癖は仕方ないが、今回は助けられた身ですわ。従いますとも、勿論ですとも。さあ、嫁たちに作った鎧で頑張ってもらおうではないか……レベル上げしてからやけど。というか、嫁たちが来てる量産型の鎧がとっても魅力的なん。4つを合わせたら……熱く蘇れそうなん。いや、実際蘇ったんやけどね。というか、色的にはタッチして変身する方なん……え、ドエムゴンと契約して魔法使いとか嫌っす。というか、そもそもコア無かったわ。
まあ、どうにかなるやろ。英雄らしいし、俺………子作り出来ない奴らにモテたって嬉しゅうない。機械族の子作りはパーツの一部を子ども用に作られた新しいボデーに移植するだけの作業なんすわ。人間で言えば生体肝移植とかの類いでっさ……カンナみたく改造してもNPCに萌えない。特にブランとか胸以外にも色々と無いのはあかん奴や。むしろ、萌えないロボ娘はただのガラクタやねん……俺ありがとうって2回言うポジションになったんやろか?
とにかく、お腹がなんだか背中と吸収合併しそうなん。余った肉で焼肉パーチーするんす…イルムが開けてくれた換気口あるから地下でもどうにかなるなる。でも、無理なら諦めるん。というか、肉食ったらある程度レベル上がるんでね?




