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碧眼の彼女  作者: さんれんぼくろ
最終章 雪の降る街―活動編―
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第二五四話 法律

挿絵(By みてみん)  

挿絵(By みてみん)  

挿絵(By みてみん)


 襖を閉じて、相談を始めてからそろそろ一時間。見るたびに顔色が悪くなっている総理大臣に、俺は汗をかいた。

 つい最近かわった総理――(たに)総理大臣と、四十万谷(しじまや)司令官と俺での青いパネルを使ったテレビ電話。俺が師走に襲われながらも助けたいと願っていることを凪さんから伝えられた司令官が設けてくれた話し合いの場。


『初対面の私が、こんなことを言うのは気が引けるのですが』


 谷総理は指を組み直してから続ける。


土屋(つちや)君は、その彼に殺されかけています。恩があるならともかく、助けたいと思うその気持ちに、私は共感することができません』


 司令官がなにも言わないので、総理は自分の意見を遠慮がちに述べていく。

 現段階では、産月という組織がなにを目的にしているかがわからない。とても危険なことを目論んでいる可能性もあるし、未来ひとりが狙いなのかもしれない。人を簡単に殺せる力があると知った以上、思いやりだけで助けようとしてはならない。


『土屋君の気持ちは……慈悲深く、すばらしいものだと思います。しかし相手を人とみなした場合、その者は法によって裁かれねばなりません。そしてその法が、恐らく通じない相手であると私は考えます』


 産月という特殊な相手でなくとも、俺にした行為をなかったことにすべきではない。その間違いは正さなくちゃいけないと、総理は遠回しに告げる。


『いまの話を踏まえた上で、あなたは無条件で助けようと言うのですか』


 総理の糸目が少し開いて、一瞬ドキリとした。

 言いたいことはよくわかる。わかるけど。


「俺には……あいつが悪いやつだとは、どうしても思えないんです」


 糸目の周りに、苦渋でシワが寄った。総理に失礼ではないかと緊張しながら言葉を探す。


「目的がわからないのは、たしかに危険です。でもそれって、こちら側の対応次第じゃないかと最近思うんです」


 まじないの影響を避けようとすると、具体的な話ができなくて伝えられない。だから論点がズレないように気をつけて、ケトが味方になる前のことを総理に話してみる。


 ケトだって最初は、死人として未来を攻撃したのだと。それは自分のことを伝える術を持たないからで、言葉の通じない相手が自分についてわかろうとしてくれるはずがないと思っているからだと。そんな拒否の姿勢を気持ちだけで突破してしまったのが、心優しい幼なじみであると。


「聞く気のないやつに、誰も語ろうとはしない。俺たちは、ただ危険を遠ざけるために、無知のままあいつらを敵と思い込んでるんです」


 ――人間も産月も、世の中の全部を変えなくては、私たちは戦うしかありません。人間を簡単に殺せる生き物を誰も認めない。


 師走は自分たちがどんな存在であるか自覚していた。どんな扱い方をされるかわかっていた。なんの策もない俺の手助けなんて受け取るわけはなかったのだ。

 あまり感情的にならないようにと自分に言い聞かせながら、けれど前のめりに話すのをやめられない。


「助けたいと思うのは行き過ぎかもしれません。だけど、理解はしたいんです。手を取り合えば変わるかもしれない関係を、ただ怖いという理由で拒否するのは、俺は嫌です」


 総理は深刻な顔をしていた。司令官は机に置いた資料を見ているのか視線を下に向けていた。

『あのお方』に逆らえないために仕方なくやっていることかもしれない。そこまで言えたらいいのに、まじないがすぐそこまで来ていて口には出せない。


『四十一番』


 煩わしくて眉間にシワを寄せていると、司令官が俺を呼んだ。目が合った気がした。


『お前の気持ちだけを問う。お前は殺されかけた。それでも、助けたいか』


 厳しくも優しい瞳が、俺の真意を見抜こうとしていた。迷わず「はい」と答える。


「危ない目にあうのは日常茶飯事なんで、それが理由で助けないってことはないです」


 これが俺じゃなくて、別の誰かが同じことをされたならこうは言えないかもだけど。

 総理が、ふぅ……と息を吐き出した。


『これが、常に戦いの場にいる子の考え方なのですね』


 きっと俺と同じ気持ちにはならないのだろう総理は、悲しげな顔をしていた。司令官が『ああ』と暗い表情で同意する。


『償わねばならん。手の届く範囲から、少しずつな』


 俺がなにか言おうとする前に、司令官はわかったと頷いて話をまとめていく。きちんと伝えられたかどうかわからないまま、答えを出さずに通話は終了した。


「隆」


 襖を開けてこたつのある部屋に戻ろうとすると、未来が廊下に出ようとしたところだった。俺が終わったのに気づいて、振り向いて声をかけてくれる。


「凪たち、戻ってきたみたい」


 未来は小走りで駆けていく。俺も迎えに行こうとスリッパを履いて、再度時計を見る。もうすぐ正午。凪さんたちが朝出ていったのが九時過ぎ。往復の歩きを考えると、臨世への尋問は司令官の指示どおり二時間で切り上げたのだろう。

 けれど、いざ俺たちが出迎えた三人の様子は――特に国生先生の様子が、今朝とは全く違って見えた。

【第二五四回 豆知識の彼女】

法律とか大人の喋り方とかいっぱい調べたけどわかりませんでした


執筆についてでごめんなさい。どれだけ調べても話し方あってるかとか、法律か法か罪かとか、わかんなかったです。間違ってても許してください……そして違うなって思ったら誤字報告お願いします。助けて。


とりあえず話の内容は、隆が司令官と総理に対して『霜野さんに虐められたけど助けたいよ』って伝えたということでした。まじないがあるので、まだ『師走』とは言えていません。『あいつ』『彼』としか表現できない二人でした。


お読みいただきありがとうございました。


《次回 お母さん》

未来視点に移ります。凪とあいか先生の不仲の理由。

どうぞよろしくお願いいたします。

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