第二章、➉
「ヤンさん!」
モエは先程すれ違ったヤンを思い出し驚きの声をあげた。
「ヤンさん・・・あのヤンさんが・・・」
シスコは唖然とする。
「媛は謎解きをしていたのではないのですか?」
「・・・う」
思わぬ展開をみせる事件に、シスコは白旗とばかりに手をあげた。
「では、私が引き継ぎましょう」
ユンは話を続ける。
「殺された被害者であるオ婦人は、世界で暗躍する闇の一族に抗する政財界に通じる人物。半月前のある事件・・・おほん・・・をなかった事にする為に尽力された。それを快く思わない一族の一部が暴走したのが、この事件の真相」
「じゃあ、ヤンさんは、あの時襲いかかって来た人達の仲間なの?」
シスコの問いかけにユンは頷いた。
「そんな」
シスコは黙々と家の仕事をこなすヤンを思いだした。
「それも演技」
ユンは平然と言う。
「・・・・・・」
「ちょっと待て、どういう事だ」
話が警部の思いもよらぬ方向へと傾いている。
「身内話に付き合っている暇はないのだが・・・」
警部は自らの威厳を保つ為、話へ割って入る。
「それはこういうこと」
ユンは静かに下を指さした。
床から煙が立ち込めてきた。




