21/39
第二章、⑨
「それで間違いない」
背後で警部の愉悦の時間を壊す声がした。
「誰だ」
警部が振り返る。
「ユン師!」
「姉様」
颯爽と黒のチャイナドレス姿のユンが現れた。
「どうしてここに」
驚くシスコに、
「私は常にあなたの側にいます」
「えっ・・・」
シスコは、それはそれで怖かった。
「どういう事だ!」
叫ぶ警部に、
「こういうこと」
ユンはロープに縛った鈍器を持ち、ロープを引っ張った。
「何度やっても同じ事」
警部は鼻で笑った。
「ふ」
ユンも嘲笑する。
彼女はロープから手を離すと、鈍器は動きだす。
「破」
ユンは鈍器目掛けて、手をかざした。
失速し勢いを失う鈍器が、光の圧に押され加速を増し、被害者の倒れていた場所を軽々と通り過ぎた。
呆気にとられる一同。
「な」
ユンは無表情に言った。
「恐らくこれで鈍器があたり被害者は即死。そのまま仰向けに倒れ、衝撃で飛び散った血が部屋の奥の方まで飛んだ」
「すごいユン師!」
シスコはすでに見る側の人間と化していた。
苦々し気に親指を噛む警部。
「怪しげな術を使いおって、さては貴様が犯人だな!」
彼は怒鳴り散らした。
「私じゃない」
「お前だろ!」
「違う。これは闇の者の仕業」
「闇の者?」
「彼には十分な動機がある」
「誰だ。そいつは!」
「ヤンという男」




