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凡人探索者のたのしい現代ダンジョンライフ 【書籍6巻発売中!】  作者: しば犬部隊
味山只人のはるやすみ:モテ期

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84話 アレ? 本能寺が変。その1

 

「あの、総理、これなんすか。なんか、めちゃくちゃ馴染みのある名詞が聞こえたんですけど」


「私には何も聞こえなかったね」


「嘘だ!! がっつりアンタの部下が音読してくれてただろうが! 政治家はすぐ耳が遠くなりやがる!」


 味山の指摘に多賀が大きなため息をつく。


「はあ……やはり、()()()その文言は記載されたままだったか……」


「そのようです……明智密書の変異は変わらず、ですね」


「……()()()?」


 味山の問いかけに総理が頷く。


「ああ、今日も、だよ。味山君、単刀直入に説明しよう。この”明智密書”には本来、”味山只人”という名所は存在していなかった」


「……ん? どういう、意味ですか? 誰かが書き加えたって事?」


 味山の問いに、多賀は力なく首を横に振る。


「そのまま事実のみを伝えるよ。この”味山只人”に関する文言はつい先日――君がトゥスクの民との交渉を成功させた日から出現した」


「……」


 どうしたものか。

 事実をそのまま聞いたのに、総理が何を言っているか理解できない。


 ぽかんと口を開ける味山。


 しかし、ゼロが付け加えるように――。


「味山只人。貴方の選択によって世界の歴史が変わった事による改変現象」


「え? え?」


 それでも理解できていない味山。


 ゼロは無表情のまま、少しだけ首を傾げて――ぽんっと拳を手のひらに打ち付ける。


「――某耳の無い猫型ロボットの劇場版ストーリーが現実で展開されている」


「!!!!!」


 味山が目を開く。


「ぜ、ゼロ君、急に何を言っているんだい? それは一体どういう意味で――」


「なるほど。要はタイムパトロールが出動する事態が発生しているけども現実にゃタイムパトロールはいねえから、簡単に歴史が変わっちまったんだな?」


「その認識でおおむねは正しい」


 急に物分かりのよくなった味山。

 味山のIQ3000の脳みそが稼働する。

 一気に、今起きている自体を把握。


 つまり、ゼロが言う通り、味山はこれからその遡行ダンジョンとやらに向かい歴史に登場する事が確定している訳だ。


「え、ええ……あ、味山君、今の説明で状況が理解できたのかい?」


「はい、総理。要は、トゥスクの民との交渉を成功させるまでの歴史とそれ以降の歴史がはっきり変わってる訳っすね。で、俺がその遡行ダンジョンとやらに向かう事がもう確定している訳だから、


「え、ええ……上沼君、これは……」


「味山氏の見解と、学術会議が出している意見書の内容はほぼ一致しています。SFなどで言えば既にタイムパラドックスが起きている状態と言うべきでしょうか」


「ああ、だいたい理解できたぜ。某嵐を呼ぶ幼稚園児の劇場版戦国時代みたいな事が起きているって事っすね」


「「……??」」


 多賀と上沼、そして政府関係者たちが首を傾げる。


 そして、ゼロだけが味山の言葉に頷く。


「その認識で間違いない」


 ややこしい話だが――これから自分が天正1582年6月に向かう事が確定している。

 これだけ理解出来れていればいいだろう。


 だが、いくつかの疑問が残る。


「でもよ、ゼロさんや。こういう歴史の改変ってだいたいお約束じゃ誰も気づかないもんじゃねえの? 知らん間に世界だけ変わってたりとかよ、それにこれ、若干話が通ってねえ、俺が天正10年の二ホンに登場するのなら……もう目的は達成できているんじゃねえか?  なんか連れて帰る神性だったっけ? ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 味山らしくない鋭い指摘。


 総理や上沼も同意なのだろう、同じく頷く。


「それは、学術会議の御用学者からも出ていた疑問だったね。過去と現在の連続性が一貫していない。密書の内容が変わっているという超常現象が起きている割には、それに伴うべき成果を我々が認識出来ていない」


 多賀の言葉、ゼロが少し耳をぴこりと動かした。


「貴方達が感じている疑問は、当然。そして正しい。これは現在、地表に満ちつつある”神性”の影響とトゥスクネットワークは結論づけた」


「神性? あのインチキクソメタパワーが?」


「そう。神性とは神秘種が持つ人類への絶対優位権。しかし、これは正確な説明とは言えない。神性を分解して結論すると――神性とは”世界をあいまいにする力”でもある」


「……総理、まだ話について行けてます?」


「難解な話を聞き、ついていくのが仕事だからね」


 味山の軽口に総理はにこりともせず答える。

 いじれる雰囲気ではなかったので素直に黙る事にした。


「神性は世界のルールを歪め、曖昧にする。本来であれば人類が神に従う道理などない。だが、神秘種は神性によって曖昧になったルールを己の都合の良い形で再定義する。……すまない、話が少しややこしくなったと思う、現在、トゥスクネットワークによる言い換えを検討中――検討終了」


 こほんとゼロが咳払いをする。


「神性は過程と結果をゆがめる力である。簡単に言うと、神性の影響下では1+1は必ずしも2にならない。ありえない事がありえない状況になる」


「おお~……」


 この味山のおお~は理解したという意思表示ではない。


 なんだか考えてもよくわかんないので、もうなるようになれという感じだ。


 味山にとって今大事なのは――


「まあいいや、要は今から仕事の時間って事だ」


 自分はこれから、いつものトンチキイベントに突入する。


 その認識だけでいい。


「味山只人、たった今、全トゥスク、及び女王個体による魔力充填が完了。大規模魔術式の展開準備が完了した」


「え」「は?」「な、なんだ?」


 ざわざわと多賀総理周辺の人間が動揺する。


 しかし、味山只人は――。この探索者だけは。


「了解、まあ、特殊なダンジョン探索って事だろ? 必要なモンを回収して持ち帰る。得意分野だぜ」


 完全に臨戦状態に入っていた。

 状況が急に動く事は慣れっこだ。


「……流石は、ゼウスが唯一敵視した個体。驚異的な切り替えの早さは称賛に値する」


「そりゃどうも。この探索は、仲間は連れていけないんだろ?」


「遡行ダンジョンへの突入には、条件が揃った人物しか適合しない。味山只人以外の探索者はこの時代、この状況の遡行ダンジョンへの突入は不可能とネットワークは判断した」


「……俺は?」


「貴方は現状、全ての遡行ダンジョンに適合している。おそらくこれは――人間1人1人が持つ、因果律や運命力と呼ばれる世界の根幹に影響するエネルギーに起因している。因果や運命、宿命を持つ者は遡行ダンジョン先の歴史に大きな影響をもたらしかねない。故に、魔術式が条件に合わない人物を弾いているとの仮説あり。ただ、適合する歴史や時代においてはその限りではない」


「……いや、じゃあなおさらなんで俺は適合しまくってんだよ――……待て。運命や宿命を持つ者……あっ、もしかして、俺がクソモブだかR――」


 味山の悲しい気付き、それが全て言葉にされる前に。


「術式完了――魔術式”時空探索(ザ:ペイバック)


 TIPS€ 警告――対天使討滅級の魔術式の発動を確認



 多賀総理や関係者の驚愕の言葉。

 まあ、いきなりの展開だが、こういうのは慣れっこだ。


 あっという間に味山の視界は真っ白になって。


 そういえば、割とノリで受け入れてたけど、遡行ダンジョンで神性を回収って具体的にどうやればいいんだ? それに、目的の神性っていったい――。


「味山只人、遡行ダンジョンは目的神性の願いを叶える事でのみ攻略が可能」


「今回、貴方が持ち帰るべき神性は二ホンの歴史の中で喪われ、現在まで残る事が出来なかった神性。神性を滅ぼす神性。第六天より来たりし魔王」


「神性名・第六天魔王波旬――織田上総介三郎信長公」


 ……めちゃくちゃ有名人来たな。


 味山の呑気な感想と共に、気付けば――。


 ◇◇◇◇


 夜だった。

 月はわずかに欠けた満月。

 じっとりと湿度を帯びた空気。

 遠くで、夜鳴き鳥の声が響く。


「……マジか」


 寺だ。

 二ホン人ならば誰でも雰囲気でここが寺だとわかる。


 手打ち水に、石畳。

 白砂が敷き詰められた土地に、屋敷かと見紛う瓦御殿。


 すげえ、寺だ。

 煌々と燃え盛る多数の松明による輝きが、夜の闇の中からくっきりと寺の本殿をあぶりだしている。


 TIPS€ えええええええええええええええやあああああああああああああ


 TIPS€ 天正10年5月31日夜半

 TIPS€ 京・本能寺


 TIPS€ よおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお、ぽんっ


 和風SEいらねえから。

 合いの手じゃねえのよ。ふざけたヒントに味山が舌打ちで返す。


「ん? 待て、5月31日? 本能寺の変は確か6月じゃなかったか?」


 ヒントに問いかけた瞬間だった。


 じゃりっ。

 白砂を踏む音。


「む?」


「あ」


 味山の目の前に、ちょんまげ姿の男が立っていた。


 胴体にだけ剣道の防具みたいなもの――そこまで考えて味山は気付く。

 本物の武士の鎧、具足って奴か。


 動きやすさを重視しているのか、腕や脚には具足は見当たらない。

 長い槍を穂先を上にして構え、腰には二ホン刀を拵えている。


 そんな姿の兵隊――いや、本物の戦国時代の武士が目の前に。


「あ、ど、どうもーー」


 味山が、可能な限り友好的な笑みを浮かべて。



「っ、曲者じゃああああああああああああああ!! 出合え! 出合えええええええ!!」


 絶叫。

 そこまで大きな声を人間が出せるのかと言いたくなる声量だった。


「曲者!! 何やつぞ!!」


「おのれ!! ここが、お館様の宿所と知っての狼藉か!!」


「皆の者おおおおおおおおお、ひっ捕らえよおおおおおおおおお!」


 ダメだった。

 わらわらと集まる時代劇で出てくるような武士連中。

 全員、剣呑な目つきで槍やら刀を引き抜き集まってくる。


 なんとなくわかる。こいつら全員、最低でも1回は人を殺した事がある。

 そんな独特の凄みを感じる。


「ちょ、待って、待ってくれ! 俺は怪しいモンじゃねえ! 俺は――……ダメだ、言い訳が思いつかねえ」


「――ひっとらえよおおおおおおおおおおおお!!」


「「「「「おおおおおおおおおおお!!」」」」」」」


「ですよね~」


 一斉に押し寄せる警護兵達に羽交い絞めにされ、手を荒縄でくくられる。

 あっという間に時代劇でよくいる、捕まった人そのものだ。


 大人数で地面に押さえつけられる、死んだのなら死んだで構わない。

 そんな勢いだ。

 流石、戦国時代、人の命が軽い軽い。


「こやつ、一体どこから現れた!?」

「分からぬ、気付いたら境内の中にいたのじゃ」

「物見の連中は何をしておるか! お館様に何かあってみい、わしら一族郎党打ち首だぎゃ!」


 味山を押さえつけたまま、やいのやいの騒ぐ武士達。

 さて、どうしたものか。

 正直、この程度の拘束なら耳の大力で余裕で抜け出せる。

 人数も多いが、制圧できない数ではない。


「な、なんじゃ、こいつ……偉い落ち着いちょらんか?」

「死んだ、訳ではないな。それに、こやつの装い……こりゃ、なんぞ?」

「なんと面妖な肌触り、南蛮由来か?」

「お館様の衣装に似ておるような」


 ぐわし、ぐわしと体をまさぐられる不快感。

 野郎特有の遠慮ない手つきが、非常に気に入らなかった。


「おい」


「む?」


「気安く触ってんじゃねえぞ」


「「「「「!?」」」」」」」


 一瞬、警護兵達の動きが完全に止まった。


 味山のソレは、指定探索者が無意識に放つ遺物のプレッシャーによるものでも、神秘種が扱う神性による威圧でもない。


 ただ、単に味山という生物が持つ危険性。

 それを最も危険に敏感な生き物である武士が感じ取っただけの事。


「ひ、ひっ」


 だが、あまりにも、味山の放つその危険性は強すぎた。

 若い警護兵――馬廻り衆と呼ばれる精鋭部隊である男が思わず、腰から抜いた刀を味山に向ける。


 若い警護兵は、決して愚かであったわけでもない。


 むしろ、とりわけ優秀だった。

 馬廻り衆の中でも、京の宿場待機ではなく、大殿である主の宿所の警護を任された身だ。


 生来の生物としての勘、これまで多くの戦場をいき 

 戦場を生き抜き、地獄と呼称された殺し合いを制した青年。


 彼の才能が判断したのだ。


 味山只人という危険をこう認識した。今すぐ殺さねば、今すぐ殺される。


 それは正しく、そして。


「良いんだな?」


「っ」


「俺を殺す敵って事で、良いんだな?」


 大いに間違っていた。


 青年が動きを止める。

 羽交い絞めにされ、地面に押しつけられてなお、自分を見上げる味山の視線。


 それがあまりにも――。





「そこまで! 皆々様方、お控えよ!」


 凛とした声が辺りに響く。


「お、お蘭! どういう事じゃ?」

「こやつ、狼藉者と知っての事か!?」


 当たり前のように、武士達が美少年に意見する。


 しかし。


「お館様の下知です。それ以上に説明が必要か」


「「「「「!!!!」」」」」


 その美少年の短い言葉、それだけで武士達は態度を変えた。


 先ほどまで味山を押さえつけていた兵が一斉に退き、その場に片膝をついて控える。


「お?」


「なんと面妖な……しかし、黒髪に南蛮衣装、普通の風貌されど、危険な男……お館様、そして父上の言う通りの威容……」


 偉い美少女、いや、美少年? とにかく凄く綺麗な顔のヒトが味山を見下ろす。

 着ている服も、兵隊のような具足ではなく、時代劇に出てくる侍が着ている羽織袴っぽい衣装。


 小柄な身の丈に合わない大太刀を鞘に入れたまま持っている事だけは警戒しておくべきだろうか。


 ここで、味山の灰色の脳みそと現代のエンタメに親しんだひらめきが光る。


 織田信長、後世で大人気の戦国武将は現代エンタメでも擦りに擦られ続けてきた。


 美少年信長……なるほど、こういうのもあるのか?


 味山は目の前の少年こそが、目当ての人物かと勘ぐって。


「……あ~アンタ、もしかして、織田信長?」


「ッ!! くっ、父上の言う通りだ……意味の分からない事を急に申されるな! 恐れ多い! 控えなさい! いかにお館様の旧知の者と言えど、侮辱は赦しません!」


 顔を真っ赤にして怒る美少年。

 どうやら違うらしい。だが、意外な事に少年からの攻撃やそれ以上の追求はない。


「ふう〜ふう〜落ち着くのです、お蘭。父上の言いつけ通り、森家の恩義を……」


 なにやらブツブツ言っている美少年。しかし、ハッと目を開いて。


「……そのままお静かに」


「あ?」


「お館様、御ー成ーりー」


 片膝をついていた兵隊達が頭を地面にこすりつける。


 ぽん、ぽん、ぽん。

 気付けば、美少年の背後、本能寺の境内から数人の子供が現れる。

 狐面を被った子供達が、楽しそうに小さな太鼓、小鼓と呼ばれる楽器を鳴らす。


 その舞や音と共に、境内の奥から順番に明かりがついていく。


 そして、現れたのは。


「来たか――()()()()()()


 けだるげな声。

 廊下の奥からあくびしながら現れるのは、着流しを着た――。


「……ん?」


 ――老婆、だった。


 長い黒髪の所々には白髪が混じり、顔には深い年輪のようなしわが満ちる。


 だが、きっと美しいのだろう。

 それは人の美というよりも、深い森や巨大な滝などの自然の美を前にした感覚に近い。


 ため息をつき、手を合わせたくなるような老婆。


 身長は、味山と同じかそれより低いくらい。

 だが、不思議と大きく見える。


 緩やかに歩く老婆、誰の手も借りず、境内から降りる。

 老婆が足を降ろした場所に、正確に子供達が懐で温めていた草履を差し出す。


「久しいのう、その顔を見るのも――伊勢長島、いや、姉川以来か? 手取川で毘沙門天の所に顔を出したと聞いた時は次におうたら八つ裂きじゃと怒り狂っていたが……くくく、誠、人の心とは面白いものよ」


 流れ作業のように草履をはいた老婆が、ゆっくり、ただゆっくりと味山の元へ。


 威圧感。

 アレタや、その他の指定探索者を前にした時と似ている空気。


 一挙手一投足に緊張が走る、目の前の人物に全てを値踏みされる。

 しかし、この老婆をがっかりさせたくない。

 そう思わせるような、奇妙で心地よく、それゆえに恐ろしい感覚。


 ぱしっ。

 老婆が、味山の首元につきつけたのは――刀、ではなく、扇子だった。


「……」


 だが、しかし、味山にはその扇子が一瞬、刀に見えたのだ。


 只の威圧感、それだけで。


 理解する。

 これが、現代では絶対に生まれない二ホンの王。


 指先1つで国の行く末、人の命の終わりを決める者。


 民衆に主義がある社会では存在しえぬ、戦の国を治める王の迫力。


 すなわち、戦国大名。


「まあよいわ。貴様、()()()()()()()()()()()()()


 老婆は、味山に扇子を突き付けたまま言葉を放つ。

 何故か、老婆は、味山の目的を知っていた。


「……え? なんで、それを」


「であるか――くっ、くくく、はははは、はははははははははは!!」


 老婆が腹を抑えた笑う。

 豪快、しかし、決して下品ではなくて。


「運が良い。貴様の探す者は今、貴様の目の前におるぞ」


 ぱしり。

 扇子を口元に広げ、目を蕩けた三日月のように歪める老婆。


「余こそが、織田。織田とは余の事。――貴様の目の前におるのが織田上総介三郎信長である、ぞ」


「お、おお……」


 歴史の大発見。

 織田信長は、かっけえババアだった。


 呆気にとられる味山。

 かっけえババア、織田信長はそんな味山を見て、奇妙な事を口にする。


「久しいのう、味の字。貴様、肝心の石山合戦の時期には顔を見せなんだ。てっきり余はあのあたりが余の終わりと思うておうたが、まさか、こことはな。今日か、それとも明日か? 余の命運尽きる時は。くくくく、良い」


 信長は、喉を鳴らすように笑って。


「是非もなし」


 有名な名言。

 リアル信長の是非もなしを聴けた感動と同時に、味山の頭に?が浮かぶ。


「…………え、あ、味の字?」


「む? なんぞ、妙な顔をしおって。まさか、余の顔忘れたとは言わせんぞ。貴様とは吉法師の頃より……いや、待て……その反応……それに、貴様、姉川の時になんぞ言うておったな……」


 信長が、少し考えるそぶりを見せて、


「ああ、そういう事か。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。なるほど、姉川、そして桶狭間に、稲生……あれらは、この後の貴様という訳か」


 何かを納得したように頷く信長。

 周囲の武士も、そして味山を彼女が何を言っているか分からない。


「にしても、味の字。貴様、余の前に現れる時、いつも誰かに捕まっておるのう……あーあ、荒縄で縛られて……お蘭、そやつの戒めを解いてや……いや、味の字……余興ぞ、それ、自分で解いてみせよ、ん? 出来んとは言わせみゃーぞ」


 にやりと笑う信長。


 味山は完全に置いて行かれた状態で、1つ思う。


 妙に、この信長――フレンドリーじゃね?






読んで頂きありがとうございます。


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― 新着の感想 ―
味山唯人はわからないマン
とりあえず、蘭丸ちゃんはすはすしておけばいいのか!?
歴史改変やら過去に突入とか織田信長の件とか色々気になるけど一番気になるのはゼロさんや猫耳ロボットとか嵐を呼ぶ園児とか見たんかwww
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