79話 ホスト接待の結果、なんかうまく行き始めた。
◇◇◇◇
~味山がアレタにホストをかました同時刻~
二ホントーキョー首都の前身、花の都江戸。
時の盟主、徳川家康の号令の下に作られた都市だ。
南光坊 天海によって陰陽五行思想の元に作られた結界は、戦後GHQによる解体の危機にさらされるも、相次ぐ不幸な出来事により全て頓挫した。
北を守護するウエノ寛永寺
東北を守護すカンダ明神
南を守護する増上寺
西南を守護する日枝神社
そして、それら全ての要となるとある首塚。
これと併せて二ホン各地に存在する要石や塚、遺構、全てを利用し奉じ、怨霊すら神と崇めて完成したのが――”二ホン霊的防御機構”
遺物や指定探索者以外で用意できた数少ない神秘種への対抗策。
そんな数多の封印術と科学の融合。
二ホン政府がその神秘と科学の粋を込めて作り出した独房。
トーキョー圏内郭放水路を陣として、二ホンで最も貴い血の住まいの直下に存在するのがこの独房。
現在、トゥスクの民を名乗る人類ではないヒトを保護している施設だ。
最初は真っ白な部屋だったのが、いつのまにか彼女が好む環境、深い森のような異界と化していた。
その異界は独房を仕切りとしてその外に広がる事はない。
だが、それも時間の問題、そんな状況で。
「境界線上に侵入者を確認。64層防衛結界全展開。失敗。位相空間断絶の為、強化ア磁界兵装使用、失敗。続いて電磁パルス攻勢防壁を使用、失敗、対象への損害ナシ。続いて疑似神性、使用逸話”北欧神話・アールブ”での展開を開始――神性の中和を確認、失敗。――敵、神性の存在規模――”メジャー神話、主神級”。当機の破壊予測95.421%」
拘束具を自ら着けたままに、椅子に座る銀髪の美しい生物。
銀髪エルフが目を開いた。
目の前に、もういるからだ。
「こんにちは。トゥスクの民」
白い女。
どこまでも美しく神聖で恐ろしい。
声の1つ1つが妖精が引くハープのような響き。
生物の垣根を超えた美と妖しさ。
パンドラと呼ばれた神性、ギリシャ神話から生まれた神秘種の中での数少ない生き残り。
「解析完了、声紋及び、神性個体値によりギリシャ神話属"神秘種パンドラ"と策定」
「久しぶりね、女王個体の直轄機、まだ生きてたんだ?」
パンドラの声はどこかからかいを含んだものでもあった。
トゥスクの民とはバベルの大穴の中で何度も殺し合い――その全てをパンドラが属する勢力が勝利していたから。
「回答保留、敵神性の特性を解析、会話や容姿による思考誘導、精神汚染、脳細胞魅了の恐れあり。当機には自害の準備がある」
「安心して。地上ではそういうのはしないわ。ある人間と約束してるの。わたしは彼のペットだから、彼の許可なしでは他者に害は及ばさない」
「――回答の意味を検討。無理解。他種生物を全てエネルギーとしか見れないはずの神秘種が、人間と約束??? 女王個体、及び、全トゥスクに情報を共有」
「ああ、もう個体にして群体の貴女達らしい会話ね。まあいいわ、貴女に伝えればトゥスク全員に届くのでしょう? 今日はお話をしにきたの。聞いて貰えるよね?」
「……神秘種が、会話? 意味不明意味不明意味不明、そして、彼のペット? 約束、理解不能理解不能。トゥスク全脳領域に接続、集合知能チャンネル2に接続、スレッド作成――”人間キュンと折檻プレイしてる間に、目の前にクソ神秘種が現れたけど質問ある?”、全脳領域の住人の集合知、”処す”、当機体の全能力を掛けて――神秘種、討滅開始」
「ああ、もう待って待って。一人遊びを始めないの。トゥスク。わたしから貴女達へのお話は1つだけ」
白い女、パンドラが優しい手つきで銀髪エルフの頬を包み込むように撫でて。
「わたしの主と会って、それから決めて。今回の貴女達の人類とのあり方を」
「めっちゃ良い匂いでワロタ」
◇◇◇◇
味山只人は考える。
自分は正直、鈍感な訳ではない。
恋愛経験は少ないし、モテないが、他人の感情には敏感なつもりだ。
それを踏まえたうえで――考える。
「ちょ、ちょっと、アレタ! 貴女、何顔真っ赤にして寝転がってるんですか! あ、味山さんが変なんです!」
「ワ……ア」
「役に立ちませんね! この人は!! 情けない、情けないですよ! アレタ・アシュフィールド! ちょっと男の人に手を握られて囁かれただけでそんな事になるなんて!」
アレタにやいのやいの言っている貴崎。
味山の記憶である女子高生の頃から成長し、大人になっている。
女子高生の頃はそもそも、貴崎を異性と考える事自体、条例に触れる事案だった。
だが、今は違う。
もう大人だ。
なら、少しくらいなら――いいか。
「貴崎」
「ひうっ!!」
貴崎の背後から声を掛ける味山。
「な、ななな、なんです、か、味山さん」
「そんな警戒するなよ。ほら。そこ座りな」
「え、え、え」
戸惑いながらも、貴崎は素直に示したソファに座る。
すかさず、味山も隣に滑り込む。
「あ、近っ」
「貴崎、お前、さっき何を試そうとしてたんだ?」
「え」
「ラブコメがまずい、あのヒントをお前も聞こえてたんだろ? じゃあ、何をしようとしてた?」
「あ、あの、味山さん、ご、ちょ、ちょっと、近いですう、ひゃあ……」
「いやか?」
「嫌じゃない!! 嫌じゃないんですけど……ええ、なんで~いつもと違ううううう……」
「こんな俺は嫌か?」
「いや、正直、めっちゃ良いけど、けど~、心の準備できてない~……いつもは、私が、貴方にその、近づいて、貴方が、それを躱して」
貴崎が頬を桜色に染めて、こちらをちらちら見つめてくる。
ふむ、こいつ、女子高生の頃からちょいちょい色っぽいんだよな。
良かった、雨霧さんにからかわれて黒髪美人への耐性がついていて。
微妙に失礼な事を味山が考えながら言葉を紡ぐ。
そっと、貴崎の真っ赤な耳に口を近づけ、囁く。
「貴崎、あれって、誘ってたのか?」
「~~~~~!! わ、ア、ァ……や、だ、あああ」
真っ赤な顔を両手で隠しながらソファの背もたれに深く沈む貴崎。
いかん、緩いワイシャツの胸元が大変な事になっている。
危なかった、これで攻められていたら流石に危なかった。
味山は攻めに転じた自分の判断を自分で褒める。
この美人な恋愛雑魚たち、異常に顔がよくて色っぽい。
2人同時に攻められていたら今頃、どうなっていたかはわからなかった。
数多くの大人のお友達のエッチな本とかを読んでいたおかげだ。
キスしたり、肉体的な深い関係性になりそうなシチュエーション、あれは全て男が受動的な場合に発生する。
「タダヒト……がなんか、変……」
「味山さん、近い……良い匂い、する……」
こうして鉄壁の理性を持ち、自分で攻めれば変な事にはならない。
やはり、攻撃こそ最大の防御。
味山は立ち上がり、ぐでっとしている美人を見下ろす。
「ふうっ……しんど――」
ゆっくりケトルでお湯を沸かし、部屋に置かれている高そうなドリップコーヒーを入れる。
マグカップで熱いコーヒーを楽しみつつ、無防備に臀部や胸元を突き出すような姿勢で動かなくなっている2人にタオルケットを掛けようと――。
「アジヤマ!! 失礼するよ!! 今、二ホンのトーキョーに神秘種の反応が――! え?」
「タダ!! 緊急事態っす! アレタさんが部屋にいないんで、先にお前を――え?」
「やったぞ! 味山只人! 新たな神秘種の予感だ!! あの巨大なゲート! ははっ、俺と君ならまた楽しい戦闘を――え?」
ソフィ、グレン、鷹井。
愉快な仲間達が最悪のタイミングで味山の部屋に入ってきた。
「「「…………」」」
3人が目にしたものは、満足そうにコーヒーを飲む味山と、真っ赤な顔と荒い息づかいの美人2人。
「待て、違う、お前ら。いいか。まずは落ち着け。話を聞け」
「「「……話??」」」
しらーっとした顔で同時に呟くソフィ達。
ごくりと味山が唾を飲み込んで。
「聞いてくれ、ラブコメ接待という話を」
誤解を解くのに、10分以上かかった。
◇◇◇◇
~味山のラブコメ接待、同時刻~
トーキョー都タイトウ区ウエノ上空。
神秘種、及びそれが引き連れた怪物種襲来。
同時刻――サキモリ出動。
同時刻――神秘種の異界創生発動、タイトウ区一帯を包み込む。タイトウ区の市民20万人以上の安否不明。
同時刻――鷹井空彦、アレタ・アシュフィールド、機動力に優れる探索者が先んじて現着
同時刻――鷹井空彦、”骨”の武装を展開。同時、アレタ・アシュフィールドによる不明遺物の使用申請を官邸が受理。
同時刻――、両名の異界への攻撃を待たずして――。
タイトウ区を覆った異界、完全消滅。
同時に両名の目視により――神秘種の討滅を確認。
同時刻――神秘種を屠り、タイトウ区を救った存在を確認。
総勢200名のトゥスクの民により、タイトウ区を襲った神秘種は討滅。20万人以上の住民に負傷者なし。数名が検査入院。
以降、この200名を特使と呼称。
特使から、全国の二ホン国民に対してテレパスと予想される方法により声明が発表。
以下に、特使からのメッセージ。
『アジヤマタダヒトとの会談を希望、この会談によって人類との関係を決めたい、即ち」
『討滅か、同盟か』
同時刻――シブヤスクランブル交差点に、特使が瞬間移動。以降、こちらかの一切の呼びかけに反応せず。
翌日、早朝。サキモリの会議を待たずして――味山只人、シブヤスクランブル交差点に到着。
サキモリの制止を無視。理由、一度失敗してやらかしている連中の指示を鵜呑みに出来ないとの事。
一部サキモリの味山只人への妨害を、剣鬼”貴崎凛”、黒矛”名瀬瀬奈”、八咫烏”熊野ミサキ”が鎮圧。
多賀総理判断により、特使との交渉の全権を味山只人に委託。
同時刻――味山只人、封鎖されたシブヤスクランブル交差点、現着。
「おい、お前らふざけんなって。渋谷のスクランブルで200人立ち往生は銀髪エルフ集団でもギリ迷惑が勝つだろうが」
「味山只人――」
同時刻――味山只人の呼びかけに、特使全員が反応。
読んで頂きありがとうございます!
引き続きお楽しみ下さい!
12月は商業の締め切りが2つしかないので、なんとかウェブも両立できそうです!
この後は、なろうではダンワル、ハーメルンで貞操逆転死にゲ―を更新予定。
正式告知はもう少し先ですが、12月中旬からカクヨムで新作ファンタジーを連載予定です、いつもと違う形式での連載になるのでいずれ、正確な情報をSNSで告知させて頂きます。
地味に今まで一番序盤、上手くかけているのでは? と思っています。
先月は本当にウェブがおろそかになって申し訳ありません。
商業の仕事をかなり頂いてるので、これからも更新にムラがあるとは存じますが、WEBの読者様のおかげでここまでこれたと自覚しているので、きちんとWEBでも引き続き暇つぶしを提供できるように頑張ります!




