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「思ったよりたくさん狩れたな」
倒したゴクラクチョウの山を見ながら、リーゼが言った。
ここから素材と食材に分けなければならない。
素材として扱われるのは、羽根である。
ブチブチと手で毟っていく。
食材は可食部分だ。
それらの処理を一通り終える。
「んー、これ今日中に買い取ってもらおっか」
ファイゼルさんが提案した。
「そうだなぁ」
リーゼも賛成する。
「じゃあ、私が冒険者ギルドに持っていくよ」
よいしょ、と羽根がみっちり詰まった袋を持ち上げてファイゼルさんが言った。
「え、これからですか?」
「うん、ちょっと待っててね。
って言ってもすぐ戻ってくるけど」
そういえば、ダンジョン内と外では時間の流れが違うことを思い出す。
僕とリーゼはファイゼルさんを見送ると、料理の下ごしらえにとりかかった。
「今日は一緒に風呂はいろーなー」
肉を切り分けながら、リーゼがそんなこと言ってきた。
僕は、飯盒でライスの準備をしながら返す。
「遠慮するよ」
「えー、なんで??」
「なんでって」
僕の脳裏に、今まで見てきた彼女の生まれたままの姿がチラついた。
あぁ、もう!
慣れたと思ったのに!!
「別にタオルで隠してるから大丈夫だろ?」
そういう問題じゃない!!
妙に意識すると、勘違いしそうになる。
彼女が僕のことを好きなんじゃないかって。
でも、リーゼの僕に対する好きは、恋愛のそれじゃない。
僕は、彼女のお兄さんの代わりだ。
そのことに気づかないほど、僕は鈍くない。
「それとも、俺と一緒だと変な気起きちゃう、とか?」
ここで頷けたらどんなに良かっただろう。
そうだよ、と言えたなら、どんなに良かっただろう。
それくらい正直になれたなら。
そんな勇気が僕にあったなら。
……僕は、リーゼが好きだ。
助けてくれたから。
面倒を見てくれたから。
僕を救ってくれたから。
たぶん、キッカケは色々あった。
彼女のことをいつ好きになったのか、なんてわからない。
リーゼのスキンシップに、僕はいつだって勘違いしそうになる。
彼女が僕を求めてるんじゃないかって。
「バカなこと言ってないで、手動かしてよリーゼ。
ファイゼルさん帰ってきちゃうよ」
「わかったわかった。
そんな唇尖らせるなって」
意味深な行動が多いのに、僕が本気で嫌がることはしてこないんだよなぁ、この人。
今だってそうだ。
って、ちょっと待て。
あれ?
そういえば、この人何気に人の顔色うかがってる??
いや、まさかそんなことは……。
僕はちらりとリーゼの顔を見た。
その視線に気づいて、リーゼも僕の事を見てくる。
「どうした?」
どうしよう。
聞いてみようかな。
いつもの雑談だし。
大丈夫なはず。
「リーゼって結構、他人のことみてるよね?」
軽い感じで言ってみた。
すると、リーゼの表情が凍った。
え、え??
なに、その顔。
そんな顔、初めてみた。
でも、それは一瞬だった。
一瞬で、リーゼはいつも通りのヘラヘラニヤニヤ笑いを浮かべる。
あ、あれ?
気の所為、だった??
「そうか?」
いつもの声だった。
そう、いつもの明るい声だ。
でも少しだけ、本当に少しだけ、彼女の声が上擦っていた気がした。
それ以上、リーゼは何も言ってこなかった。
少しして、ファイゼルさんが大量の金貨とともに戻ってきた。
ゴクラクチョウの羽根の代金だ。
その代金を綺麗に三等分にした。
僕の分の金貨を受け取る。
その時、もう一度リーゼを見た。
リーゼはカレーがたっぷりと入った鍋をレードルでぐるぐると掻き回しながら、金貨を受け取っていた。




