066
クルセウス家の浴室は一見して質素なデザインの割りに広くて豪華である。
湯船に浸かりながらサットンが苦虫を噛み潰したように唸った。
「知ってた…解ってましたよ、俺は。」
その横でクラウディアが湯船に浸かっている。
狼の姿で。
サットンの恨めし気な視線など気にも止めず、クラウディアは犬掻きならぬ狼掻きでタスクの横に行くと、同じように湯舟につかるタスクの肩に顎を置いた。
タスクが耳の後ろをコリコリかいてやると大きな耳をぴるぴる振って気持ち良さそうに目を閉じる。
「獣人族は貞操観念が無いのかと心配していたが…良かった。」
ちょっとドキドキしていたアールが安堵の息を漏らす。
貴族の浴室に狼が入るのも前代未聞だとは思うが、この際どうでも良い。
異性と混浴に勤しんでいたなんて知られたら、叱られてしまうでは無いか。
「そんな事言って多少は残念だったでしょうが。」
「キジも鳴かずば、撃たれまいに。」
サットンが胡乱な目を向けた傍からアールは我が部下をヘッドロックしたまま湯船に突っ込んだ。
巨体の裸体二人がじゃれあっている横で腰にタオルを巻いたタスクが湯船から出て頭を洗い始める。
隣で見ているクラウディアと目が合い、悪戯心から頭についた泡を投げつけた。
狼の身体に泡が付着すると、面白がって次々泡を投げつける。
鬱陶しそうに退けようとするクラウディアの首をがっしり掴むと、タスクは首から胴体をガシガシ洗い始める。
「俺一回動物を洗ってみたかったんだ。」
タスクは楽しそうに言い、石鹸で泡立てた手でクラウディアを洗った。
狼も満更でも無いようでされるがままになっていたが、その様子に大人達は複雑な胸中で視線を送る。
現在タスクはまだ10歳だし、クラウディアは狼だ。
人型のクラウディアを素手で洗うタスクをつい想像してしまうアール達が下世話なのだと思うと男二人は苦笑するしか無かった。
文字数少なくてすみません。




