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漆黒のファースト ~First of The black onyx~  作者: うーCHAN
第3章 二日目 <午後>
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獣人のにおい

 クラウディアとタスクのじゃれ合い(?)が終了して暫時、クルセウス騎士団総長と、ギルドの精鋭部隊リーダーとの話し合いが完了した。


 ジュリアスは一歩前に出ると、他の傭兵達に

「お前ら!酒盛りは今夜騎士団宿舎で2時間ほど歓迎会してくれるってよ!」

 どうやら2時間の宴会は傭兵達にとって短いらしくブーイングされてしまう。

「うるせえ!この案件が無事成功したら一晩中酒場を貸し切ってくれるそうだ。騎士団総長殿の奢りでな!!」

 極端な傭兵達の喝采が降りしきる中、アールがジュリアスに声をかける。


「それより早く斥候を帰還させてくれ。」

「がっつくなって、遊び心の無い奴はモテねえぞ。」

「それは間に合っている。」

「は!男前は皆死んじまえ。」

 変わった生き物を見るような目と嫉妬の目が入り交じった視線でアールを一睨みすると、他の傭兵に話しかけて斥候達に合図させる。

 夕方近くなった空へ、軽い音をたてて花火が数発舞った。


 一応話が進んだので、安堵の息を漏らしたアールは少しばかり疲労が沸き上がっていた。

 ジュリアスは気の良い男のようだが余り賢くない。

 昔から貴族や騎士団達とそりが合わなかったとかで、最初から喧嘩越しで接して来る。

 ギルドの精鋭と聞き及んでいただけに至極残念である。

 比較対象にすべきでは無いが、去年国境戦で共に奮闘した傭兵達の方が統率が取れていたように思う。

 傭兵がもう少し集まったら、騎士団員と交代させようと目論んでいたが先が思いやられる。


 こんな喧噪の中では、斥候に何かあっても聞こえるのだろうかと心配にもなるが、ギルドの管理はギルドに任せると決めたアールは、タスクとサットンの傍へ戻って来た。


「お疲れです。」

「話はどうついたんだ?」

 口々に語りかけて来るサットンとタスクへ頷くと、現状を簡単に説明する。


「緊急招集状態のギルドは王族や貴族の上役連中とは違う命令系統で動くので、我々騎士隊の指揮を断りたい所だが、モンスターと対峙した事のあるそちらがどうしても仲良くしたいと言うのならやぶさかでは無いそうだ。」

「行動の報告はするが好き勝手にやらせて貰うと言う所ですか?」

 解り辛いギルドの譲歩に首を傾げるサットン。

「お前達から仲良くしたいって言うなら、命令では無くお願いしに来い。こちらも相応に情報は渡すので交換しよう。と言う所だな。」

「はあ。協力し合う必要があるとは自覚しているのでしょうか。」

「真っ向から私達に命令されたくないようだ。目に余るようなら新たにリーダーを連れて来させるしかないな。」


「めんどくせえな。アール、あんたがあいつらの頭になっちまえよ。」

 その話を聞いたタスクが、髪をかきあげてアールを見上げた。

「ギルドは強い奴がリーダーになる傾向があるらしいから、あんたが喧嘩をふっかけて勝てば良い。頭が一つになってシンプルだ。」

「…ギルドの精鋭部隊を丸々敵に回す可能性もあるので避けたいね。」

 タスクの意見は妙案にも感じるが、後の事を考えるとため息をついてしまうアール。

 負けても勝ってもややこしい話になりそうだ。


「まぁその内親睦会を兼ねてアームレスリング大会でも開催しましょうや。」

「あんた腕相撲に何か拘りでもあるの?」

 副総長の親睦会の申し出をタスクが質問で回答する。

「殴り合いも殺し合いも無く、相手の力量を計れる安全且つ健全な競技だろうが。」


「…最悪、森林に再度偵察に行く事になるだろう。」

 最悪。つまりそれは斥候が合図を見て帰還しなかった場合だ。

 二人の会話を華麗にスルーしたアールが、現状を摯実に語る。


「すみません。私が上手く立ち回ってりゃ良かったんですが。」

「サットンが責任を感じる必要は無い。まだ斥候が帰還しないとは限らないのだし。」


「傭兵達の案に、森林を燃やしてモンスターごと燃やすって言うのもあったらしいぜ。そこから考えれば最悪じゃ無いだろ。」

 あまり効果が無いと知っていながら、タスクはたった今クラウディアから聞いた話を披露する事でアールとサットンを慰めた。

「それは壮絶だな。」

「モンスターごと…また極端な。」

 二人は目を丸くしてタスクを見る。

「斥候程度で済んだと考えるのが妥当だろ?」

 現状は変わらないが二人は苦笑して受け止める。


 気を取り直したアールが力強い言葉で騎士隊に声をかけた。

「20分後、斥候が戻らなかったらギルドの傭兵と我々の部隊で捜索を行う。総勢50名選別後この場へ集合!残りは森林周辺の見張りを継続!」

 騎士隊、及び歩兵が一斉に返事をして一旦解散した。


 20分もあれば森林を監視する全ての歩兵にも伝わるだろう。

 もうすぐ空は赤く染まる。


 つまり、日が暮れれば捜索は不可能になるかも知れない。

 松明の準備はさせるが、夜の森が如何に危険であるか知っているアールは、空模様次第で森林に足を運ぶべきか決断せねばならないだろう。

 場合によっては再度ジュリアスと話し合いも必要になる。


 今はギルドの斥候達が無事帰還する事を祈る。


 それだけだった。

第3章終わり。

第4章を書き溜めた後、更新します。


その時、また読んで頂けますと嬉しいです。

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