表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
真面目な僕は遊び人になりました  作者: 樫原 翔
宝探しはワクワクします。
48/63

出会いと縁はどこで繋がるか分からないものです。

 仕事からの帰り道、朝から降っていた雨が止んでいました。


 おかげで傘を忘れそうになりました。

 10年くらいの付き合いになる長年の相棒の傘を。

 会社を出てすぐ目の前に水たまりが出来ていたので、思い出せたのは幸いです。


 けど、長時間の雨のせいで気温の割に蒸し暑く、汗も幾分かいたので水分と塩分が欲しくなりました。


 なので帰り道の途中、以前部長と行った焼き鳥屋さんに寄ることにしました。

 焼き鳥も食べたいので。




 お一人様なのでカウンター席に行きます。

 隣で既に飲んでいる人がいるのでご迷惑にならないように座ります。


 さて、何を最初に頼みましょうか?


 よく、暑い日の仕事帰りにビールを最初に頼む人を見ますが、あれってあまりよくないらしいんですよね。アルコールが回りやすくなるとかで。


 なので最初は氷たっぷりのお冷をいただきました。

 キンキンに冷えた氷水って、汗かいた後に飲むと不思議と美味しいですよね。


 でも、氷たっぷりな分飲める水が少ないんですけどね。

 なのでもう一杯。


 ふぅ、さて焼き鳥を食べたいですがはじめは枝豆にビールといきましょうか。


「すいません。枝豆とビールをお願いします」

 さて、お酒とおつまみを楽しみましょう。


「なあにいちゃ〜ん、ちょっと聞いてくれよ〜」

「はい?」

 隣にいた方に話しかけられました。






 それから少々経ち、追加で頼んだ焼き鳥を頬張り、泡が無くなっているビールを煽りながら僕は隣に座っていた男性のお話を聞きます。


 まあ、あっちへ逸れたり、こっちへ逸れたりで本題には中々入っていませんが。


「最近よぉ〜、女房と娘がなんか冷たくてよ〜」

 ようやく本題に入ったようですね。

 それなりに酔ったご様子でしたし、それで話が纏まらなかったのかそれとも話す決心がつかなかったのかは分かりませんが。




「娘は大学生で最近帰りが遅いことが続いてるんだよ〜」

 ふむふむ、娘さんの帰りが遅いと。


「聞いてみてもバイトだしか言わないしな」

「違うんですか?」

 そこが肝心ですね。


 バイトでないのにバイトだと言って帰りが遅い。

 親として心配になりますね。


「いやバイトは前からしてたんだよ」

 あれ、違う?


「けど、その頻度が増えたんだよ。ここ二、三ヶ月」

「ほうほう。ということはお金の入り用、ですかね?」

「何でだって聞いても答えてくれなくてな〜」

「確かに心配になりますね」

 理由を言えないのは何故でしょうね?

 この方には言えないのか、誰にも言えないのか?

 後者だと怖い想像が出来ますね。




「んで、女房があんましつこく聞くなって釘刺してくんだよ」

「奥さんがですか」

 事情を知っているのか、それとも放任なのか? 信頼故なのか?


「女房も昼間出掛けていることが多いってご近所の奥さんから聞いてよ、聞いてみても単に買い物とかだの一点張り」

「おやおや。奥さんも何やら内緒事を」

 自分以外のご家族が普段と違う様子を見せる。

 気になって仕方ないでしょうね。





「んで、ついこの間、仕事が早く終われるから帰り早いって朝言ったら『寄り道していいですよ』って言うのよ女房が」

「なんと」

 早く帰られると都合が悪いということ?

 その真実は・・まさか、ドラマのような展開?

 例えば昼ドラ、サスペンスとか?


「けど、俺はそんなのを無視してこっそり早くに家帰ったんだよ。そしたら、女房だけじゃくて娘までも・・・」

 この後の展開は一体どうなるのでしょう?

 ゴクリと僕は唾を飲んで雰囲気を出します。






「俺の誕生日パーティーを準備してくれてたんだよ!」

 あ、ホームドラマ展開だった。すっごいいい笑顔。


「おめでとうございます」

「ありがとよにいちゃん! でな、このネクタイ、娘がバイト増やして金貯めてまで用意してくれたいいとこのヤツなのよ」

 まだ箱に入っているのを見せるように掲げてくれるので拝見します。


 確かに、素人目に見ても良い仕上がりですね。


 ん? 店員さん? 何で何も言わな「いたっ!?」


 おや、何故か男性が(はた)かれました。


 まずくないですか?


「お父さん、バイト先でやめてよ!」

「ん、おお! あれ、お前いつもこの曜日は休みじゃ..」

「...お父さんの誕生日の日にお休みにしてもらったからその代わり今日シフト入れてもらったの!」

 ああ、娘さんでしたか。

 顔が赤くなってますね。理由を説明するのが恥ずかしかったのですね。


 あ、皿が空っぽ。ビールもちょうど無くなりましたね。


「娘さん、すいませんがこちらのお父さんの分も合わせて焼き鳥の盛り合わせを二つお願いします。代金は僕の方で。あ、それとオレンジハイも一つ」

「え、あ、はい」

「いやにいちゃん、それは悪いって」

「いえいえ、こうして会ったのも何かの縁ですし。楽しいお話のお礼ということで」

「そ、そうかい。んじゃあごちそうになるぜ」

 とりあえず、残ったお冷でも(あお)りましょうか。




「いや〜にいちゃん今日はありがとな!」

「いえいえ、こうして会ったのも何かの縁と言いますから」

 会計を済ませ、僕は男性から改めてお礼を言われました。

 でも、話を聞いただけだからお礼を言われるようなことは何も...それに今日と言っても実際の所1時間ほどですし。


「あの...」

「ん?」

 あ、娘さん。


「父がすいませんでした」

「いえいえ、謝ることは何も」

 ただお話を聞いただけですし。


「それでは、明日もありますので失礼します」

「おう、じゃあな」

「ありがとうございました」


 さて、帰りましょう。






 家に着き、靴を脱いで気づきました。

「傘、忘れた...」

 不覚。








 翌日。

 ・・・・・・・

 思わず瞬きします。相手も瞬きします。


「お久しぶりです」

「あ、コホン。先日はありがとうございます。そして申し訳ありません。酔っていたとはいえ絡んでしまって...」

 件の男性と僕は再会しました。


 取引先にて。


 というか、新しい取引先の担当さんでしたか。


 奇遇ですね。


「え、先輩、お知り合いなんですか?」

「猿渡君、その話は後ですよ」

 プライベートに関わることですからね。


 男性改めて担当さん。会った時は随分酔っていたのですね。今はしっかり落ち着いて毅然とした雰囲気ですし。

 でも、向こうとしては気まずそうですね。緩んだ様子を見せたのがその場限りの他人だと思ったらまた会うことなりましたし。


「ふむ、以前そちらから送っていただいた資料も拝見していたが、当社としても双方の利益となるのでこの取引は是非とも進めていこうと思います」

「ありがとうございます。ですが、一応こちらでも再度内容を確認し調整した資料がありますので今一度ご確認ください」

 僕は鞄から資料の束を取り出し渡します。


 担当さんが読んでくれた内容に差異はほとんどないはずですが、一部データを再度新しく纏めたので取引を確実に出来ると思い用意しましたので。




 こうして無事に話し合いは終わり、猿渡君は職場に戻る予定があるので報告をお願いすることに(僕も一緒に行くと言ったのですが大丈夫ですと押し進められました)。


 僕は帰路に着こうかと考えていると...

「進藤さん」

 あ、担当さん。


「新しい資料の用意ありがとうございます。おかげでこちらで修正する必要が少なくなったと部下達が言ってましたよ」

「いえ、お役に立てたなら何よりです」

 わざわざお礼を言うために来てくれたのかな?

 律儀な人だな。


 あ。

「そのネクタイ..」

「ああ、ええ。何か勿体無くて箱に入れていたのを娘に昨日知られて怒られまして...」

 確かに、折角プレゼントしたネクタイは娘さんからしたら着けてほしいですよね。

 でも、父親としては娘からプレゼントを大事にもしたいのでしょうし。


「なので、今日みたいな大事な日には着けるようにしようと決めまして」

「なるほど、勝負ネクタイといった所ですね」

「もっとも、進藤さんが相手だと分かっていたら大丈夫でしたけどね?」

「はい?」


 どういうことでしょうか?




「昨日、こんな酔っ払いの自慢話に付き合って最後まで話を聞いてくれましたからね。娘も真面目な人だなと言っていましたよ」

「恐縮です」

「だから、取引の件も信頼していいなと個人的に思っていたのです」

「それは買い被りですよ」

 僕は単なる一社会人なんですから。


「あ、それと...」

 ん、これは..

「娘が来店していたのを見て覚えてくれていたのですが、あなたの傘ですよね」

「おお、昨日忘れてしまったので今日お店に行こうと思ってたので助かります」

「よかった」

「ん? あれ?」

 では、何故それを担当さんが今持っていて...


「けどまあ、うっかり自分のと間違えてしまいましたが..」

 あらら。お店から出た時に間違えたと..


 あ、そういえば今日の天気予報でもこれから...

 “ポツン"

「あ、雨が..」

「では、こちらを」

 雨が鼻先に当たりましたので、とりあえず担当さんにこの傘をお貸しして...


「ああ、大丈夫ですよ。折り畳み傘をいつも鞄にいれているので」

「そうですか...」


 んん? でも(僕のでしたが)傘を持ってきていましたのに...


「本当ですか?」

「あははは、気づかれましたか」

 苦笑されていますね。やはりこちらを気遣って...


「でも本当に大丈夫ですよ」

「え?」

「ほら」

 ん? 指を差した方向には...傘を開いて、もう片手にも傘を持った女性。


「奥様ですか」

「ええ」

 本当に家族仲がよろしいのですね。


「それでは、失礼します」

「ええ、またお会いしましょう」

 僕は傘を開き、帰路に着きます。






 揺れる電車の中、僕はドア脇に立ちながら外を眺めます。

 通り雨だったようで、もう止んでいました。

 担当さん、奥様が持ってきてくれましたけど...まあ、ご夫婦で仲良くご帰還出来ているでしょうかね。


 雲間から陽光が差し込んでいます。ああいう陽光に差し込むタイミングと場所に人がいると神秘的に見えそうですね。


 あ、電車が停まって...ああそっか、この後に快速が通るから通過待ちですか。


 暇ですね。

 ふむ、そういえば、電車の窓から下方を見るのは久しぶりですね。


 ん? 公園? あ、陽光が差している所に人が...小学生かな? 

 何か両手広げてポーズを取っていますね。


 ・・・・・


 何てタイミングのいい...羨ましい。


 よく見ると周りに友人と思しき人が数名。しかも傘を剣みたいに構えて...


 お、チャンバラが始まりました。

 陽光に当たっていた人一人に対して周りの友人数名で。


 さしずめ、ラスボスとの戦いといった所ですかね?




 楽しそうですね。


 大人になると傘を振り回すのは人目を憚ることになりますからね。


 でも、手頃な長さで振り回しやすい軽さの傘は子どもにとって手軽なチャンバラアイテムですよね。


 とりあえず、壊さないように気をつけてくださいね。

 なんて、思った所で向こうに伝わる訳ありませんが。




 さて、電車に乗っている訳ですし家に帰りましょう。

 昨日は焼き鳥を食べましたし、今日は野菜メインにいきましょうか?


 冷蔵庫に確か根菜類がありましたから煮物にして...あ、味噌汁が無かったから作り直さないと。

 手っ取り早くワカメに...乾燥ワカメ残ってたかな?


 まあ、帰ってから考えましょう。




 明日はトレジャーイベントもありましたし、早めに休まないと..


伏線のつもりで書いたものですが、別に大きな展開とかではないので気にしないでください。

緩急目的の日常パートのつもりでもあるので。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ