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真面目な僕は遊び人になりました  作者: 樫原 翔
ゲームをさらに楽しみましょう。
34/62

初のクエスト〜どこから手掛けましょうか?〜

 到着した開拓村はファスタの町と比べると簡素なものでした。


 というか、本当に開拓村?


 正直に言いますと・・・

「廃村?」

 おっと、住人の方に聞かれては失礼ですね。


「そう見えるのも仕方ありません」

 あ、聞かれてた。


 いつの間にか横に一人のお爺さんがいました。

 服は所々が擦り切れ破れています。この方もNPCのようですね。


「旅の方とお見受けしますが、この村には何かご用で? こう言ってはなんですが、ご覧の有り様で特に何かある訳ではないのですが...」

「まず、無礼な発言をお詫び申し上げます。そして僕達はこの村を助けてほしいという依頼を受けてこちらに来ました」

 それでは、早速クエストを始めましょうか。


「はて? 申し訳ありませんがそのような依頼は出していないかと」

「はい?」

 あれ、おかしいな? もしかして村を間違えた?


 いや、その結論は些か急すぎますね。


 まずは確認を。


「依頼主はララさんという方なのですが」

「っ! ララですと? それはワシの孫娘です。少々お待ちください」

 そういうとお爺さんは村の中へと行きます。




 待つこと少々。

 お爺さんは一人の女の子を連れてきました。

 この子がララさんですか。こちらも服が汚れていたりと何やら事情がありそうですね。


「はじめまして。貴女がララさんですか?」

「・・はい」

「村を助けてほしいという依頼を受けてきました」

「ほんと?」

「ええ」

「っ...お願い、たすけて!」

 その言葉と共にララさんの目から涙が溢れてきました。




 ララさんのお爺さんことこの開拓村の村長ドヴァさんから改めて事情を聞きました。


 どうやら、数日前に季節外れの嵐に見舞われてしまい、村は壊滅的な被害を受けてしまったとのこと。


 畑は荒れ、家屋も破損、モンスター除けの柵もほとんど壊れてしまいいつモンスターが村を襲うのかと気が気でなく満足に眠れない日々だとか。


 しかも嵐の時に複数人の怪我人が続出。しかも食糧や薬の類もほとんどが使えない状態のために怪我の治療も食事も満足に摂れてすらいないと。


 そして、村の窮地を救うため、ララさんは村の救援依頼を出したということらしいです。


 では、何故村の救援依頼を出したのは子どものララさんなのかというと・・・



「その、依頼を受けてくれるのは嬉しいのですが...報酬が...」

 申し訳なさそうに言うドヴァさんの言葉ですぐ分かりました。


 報酬となるものが今はないのだということ。


 そう考えればララさんが依頼を出したのにも合点がいきます。

 この()は単に村を助けてほしいという思いから依頼を出し、本来ならそれに付随して必要なものを知らなかったのでしょう。


 さて、報酬はおそらく皆無。

 本来、こういった取引はお互いに損をしないようにすることで初めて成り立つもの。

 この場合ですと、僕達が損をし向こうのみが得をする・・・


 ちらり、と皆さんを見ます。


 あ、頷いてくれた。悟空君に至ってはサムズアップまで。よし!


「構いませんよ。微力ですが、村の復興に必要な手助けをさせていただきます」

 その時に見せてくれたララさんの嬉しそうな顔に僕は頑張らないとなと気を引き締めました。






「それで先パイ、何から始めます?」

「そうですね...とりあえず情報収集と整理ですね。具体的に必要な支援は何か、その中から自分達が出来そうなものは何か、それを明確にして役割分担を立てていきましょう」


 まずは各々に村の中を巡って行きましょうか。


「では皆さん、各自村の状況を確認するために散開します。集合時間を決めますので、この広場に再度集合した後に各自集めた情報を提示しそれを整理。そして役割分担を決めた後に復興作業を開始します。何か意見はありますか?」

 挙手も何もなし...えっと、何故だか僕が仕切ってしまいましたが、大丈夫なようですね。


「では、情報収集を始めます!」




 ーーーーーーーーーーーーーーー


 先パイは真っ先に村長の爺さんの所へ行った。

 確かに村の状況は把握してるもんな。


「しかし、やっぱり社会人ってだけあって段取りが慣れたものだな」

「そうだな。ゲーム内での情報収集なら酒場といった風に情報が集まる所に行くのが基本だからな」

「村の中、巡る...」

「ほらみんな、感心するのは分かるけど早く始めましょう」

 ガイ、ジャンヌ、マーキュリーの言葉におれの鼻が高くなるような気がしたが、続くルナの言葉に全員が気を引き締める。


「あの、ルナさん..」

「どうしたの、まるたちゃん?」

「えっと、ウォーカーさんって、お仕事の時とかあんな感じですか?」

「そうそう、あんな風にリーダーシップある感じ?」

 先パイが気になるか、まるたとたまこよ。


 けど、

「いえ、違うわね」

「だな」

「「え?」」

 ルナが否定しおれも同意すると二人は驚きの声を漏らす。ガイ達も驚いてら。


「ウォーカー先輩って、仕事の時は割とフリーで動いているわね」

「そうそう、担当案件がないとかじゃないけど、あっちこっちの仕事に手助けしてくれてることが多いな」

「?? どういうことだ?」

 ああ、この説明じゃ分からないか。まあ、おれも昔はガイと同じ感想だったしな。




「先パイはさ、気づいたらそこにいて助けてくれるんだよ」

「何それ?」

「童話の小人さんみたい」

 まるたの例え、それだ。


 先パイは先パイで任される案件はあるけど、一人でこなしているけれど、その一方で職場内の様子を人知れず把握して必要な手助けをしてくれる。


 この前もバタバタしていた中で仕事の滞りがなかったのは確実に先パイのおかげだとおれは思うし、他のみんなもそう思っているはずだ。




 けど、先パイは自由に動けるその現状が好きなようで、逆に纏め役を任されるのは好きじゃないっぽい。

 多分、しがらみとかがあるからかな?


 でも、このゲームの中なら違う。


 だから先パイ、面倒かもですけど頼りにさせてもらいます!




 ーーーーーーーーーーーーーーー


 さて、こんな所ですかね?


 皆さんで集めた村の被害から必要な支援は何かをまとめると以下のようになりました。


 ①怪我人の治療

 嵐によって家屋が破損した際に巻き込まれたものや、その後のモンスター被害などから大なり小なり怪我人が続出。放置すれば悪化する可能性もあるので最優先事項に。


 ②食糧供給

 備蓄していた食糧の一部損失及び田畑の被害により生産ラインも停止中。このままでは遠くない内に飢えてしまう可能性が高い。


 ③家屋等の修復

 嵐により家屋が破損。倒壊したものこそ少ないが住むには風通りがよすぎたり、雨漏りが酷すぎたりと生活出来るものではないのが多数。


 ④モンスター退治

 家屋だけでなく、モンスター除けの柵などの防備もやられているのでその修復に並行して村に危険を及ぼすモンスターの数を減らす必要がある。ただし、モンスターの出現自体はそうないらしいので優先順位は最も低い。




 で、僕達の中でどの問題を誰が担当するか・・・


 まずは出来ることが何かで当てはめ整理しましょう。


 ①怪我人の治療

 ・ルナさん:唯一の回復能力持ち

 ・まるたちゃんさん:回復用の薬品アイテムを作れる

 料理アイテムも回復効果はありますが、薬品アイテムほどの速効性はないのでここでは除外。


 ②食糧供給

 ・僕

 ・たまこちゃんさん

 ・まるたちゃんさん

 ・ルナさん

 ・ガイさん

 ・ジャンヌさん

 悟空くん、マーキュリーさん以外が『料理』のスキルを所有しているので担当出来るという意味で列挙。


 ③家屋等の修復

 ・たまこちゃんさん

 ・まるたちゃんさん

 二人とも、本職ほどではないけど大工仕事系もある程度可能だとか。資材運びなどの単純な力仕事ならガイさんや悟空くんも手伝えるとのこと。


 ④モンスター退治

 ・悟空くん

 ・ガイさん

 ・ジャンヌさん

 ・マーキュリーさん

 戦闘職である四人を筆頭とし、必要ならば残り四人も参戦。




 ふう、こうやってみると生産系のスキルとかは何かと重要になりますね。

 でも、僕が持っている生産系スキルでまともに使えるのは『料理』くらいですし・・・


 優先順位、こちらの人員と可能な割り振りを考えてと・・・・・


 あ、そういえば村の住人の中には大工仕事をしている方もいましたね。

 なれば家屋等の修復はその方達にも協力してもらいましょうか。




 では、少し調整して...よし!


「皆さん、お願いしたいことがありますので今からお話します」




 はてさて、上手くいきますかね?

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― 新着の感想 ―
[一言] 更新有り難う御座います。 所謂”リベロ”ポジションですね?
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