馬車に揺られて進みます。
今まで以上に年度末の忙しさが重なり中々更新出来なくてなってしまい、大変申し訳ありません。
2023/3/19
馬車に揺られながら僕達は開拓村へと行きます。
ちなみに馬車はクエストを受理したら、目的の村に行くと親切なNPCの馭者さんが教えてくれたのでお言葉に甘えて乗せてもらっています。
あと、正確には幌馬車というらしいです。僕達が今乗っているのは。荷台にアーチ状のテントを張っている感じですかね。
馬車に乗るのは初めてですが、やはり車と違って遅いですね。
それに道も舗装されていませんから馬車の揺れが酷いですね。
ゲームだからからなのでしょうか、酔う感覚は一応ないですね。
でも、お尻から振動が響きます。
ん、揺れる?
そういえば、どこか聴いたあの歌の歌詞は・・
えっと、
「あ〜る晴れた〜ひ〜るさがり〜」
『ッ!?』
あと、
「う〜しをの〜せ〜て〜」
「ちょっ、その歌!」
最後は..
「荷馬車はゆ〜れ〜る〜」
「ウォーカー先輩、それ売られちゃう歌!」
「切なくなるからやめてウォーカー!」
「というか、歌詞が微妙に違うね」
あ、違ってましたか。
ああ、そうだ。
「思い出しました。ステーキハウスのBGMで聴いたやつでした」
「どこの店だよ!」
「ビフテキもハンバーグも美味しかったから、それぞれ二回くらいおかわりしましたよ」
「あの歌聴いた上で!」
今度また行きましょうかね。
「はは、旅人さん達楽しそうだね」
あ、馭者さんも聞いていましたね。
「改めまして、今回は乗せていただきありがとうございます」
「いいってことよ。実を言うと護衛を雇っておきたいというのもあったからさ」
なるほど、無料で乗せてくれたのにはそういう理由が。
「旅は道連れ世は情け、持ちつ持たれつ」
そして・・
「ギギイッ!」
「ギイッ!」
「ゴルルルっ!」
「お、ゴブリンとホブゴブリンの群れか...」
「渡る世間は鬼ばかり...ですかね」
「最後のはことわざじゃないぞウォーカー」
おっと、そうでしたかジャンヌさん。
馬車の中では戦えませんし降りましょう。
馬車を庇うように僕達は今隊列を組んでいます。
先頭はジャンヌさん。
以前は出していなかった盾を構えています。
「それ、最近手に入れたのですか?」
「ああ、目的のものではないがそれなりに使えるものだ」
ということは、本命を手に入れるまでの繋ぎと。
で、その隣には僕。
一応、バックラーですが盾持ちなので予備のタンク役ということで。
僕とジャンヌさんのすぐ後ろではガイさん、悟空君、マーキュリーさんの三名が待機。
頼りになるアタッカーです。
そして最後方にはまるたちゃんさん、たまこちゃんさん、ルナさんの三名。
サポートは頼みます。
相手側はゴブリンが10数匹。
ホブゴブリンが3匹。
武器はゴブリンの方は短剣、棍棒、弓矢..おっと、杖を構えているのが後方にいますね。
「ゴブリンメイジだ。魔法使うから弓矢使いと一緒に優先的にに叩くぞ」
と、ガイさんの言葉。
了解しました。
そしてゴブリン達の後ろに立つのはホブゴブリン。
武器は以前僕が戦った奴と同じ剣、斧、棍棒(ゴブリンのよりも大きく太い)。
一応遠距離攻撃がありそうなのは弓矢と魔法を使うゴブリンのみ。
数はざっと5匹。弓矢3、魔法2。
「いくぞ!」
ジャンヌさんが駆け出します。
鎧を纏い、攻撃を警戒して盾を構えながらですからそこまで速くはないですが、盾も鎧も持たないゴブリン達は警戒しています。
弓矢を持つゴブリンが全員ジャンヌさん目掛けて矢を放ちます。
けど、ジャンヌさんの盾がそれを弾きます。
そのまま止まることなく、正面に立ちはだかる短剣持ちのゴブリン目掛けてジャンヌさんが剣を振るいます。
おお、一撃。
おっと、魔法使いのゴブリンが何やらブツブツ言っています。
魔法だとするとまずいですね。
“スローイング"、もう一回“スローイング"
投げたダガーが2匹の魔法使いのゴブリンに当たります。正確には1匹は腕に刺さり、もう1匹には杖に当たっただけでダメージはないですが。
けど、注意が逸れて魔法は中断しています。
ですから前進!
やっていて分かりましたが、武器を持ちながら走るのは存外難しいです。
日常でも雨が止んで傘を片手にしていると意外と走り難いことを考えると当然なのでしょうけど。
でも今は手元に武器を持っていないので走りやすいです。腕が振れるからですね。
走る先には棍棒と短剣を持つゴブリンが1匹ずつ。
まずは短剣持ちから。
少し離れた位置になる棍棒持ちへ、
「“スティール"ッ!」
お借りします。
ゴブリンの手元にあった棍棒は消え、僕の手元に現れます。
そのまま走る勢いに乗せて、ふんっ!
棍棒が短剣持ちのゴブリンの側頭部に命中。
あっさりと砕けるのでまだ倒れていません。
なので、もう一度“スティール"
短剣を奪います。
棍棒を振るった勢いで回転していた僕はさらにもう一回転して棍棒を殴った所へ短剣を。
振り回し様に刺したから刃の根本が折れます。
けど、ゴブリンも倒れました。
「ギギイッ!!」
と、確認していたらさっき棍棒を奪ったゴブリンが爪で引っ掻いてこようとします。
そういえば、前に貧血ゴブリンの武器を奪った時もこんな風に引っ掻いてきたり噛みつこうとしてきたりしましたね。
なので対応は一応大丈夫。
レザーナックルに“ウェポン・チェンジ"
ナックルで爪を受け止め空いた右手で見様見真似のフック!
顎に命中、よろけた所を振り上げキック!
あ、
“キィーンッ!"
「ゴギッ!」
あ、泡吹いて倒れちゃった。
・・・・・
そこ、弱点なんですね。
「なんか、すいません」
よく見ると他のゴブリンやホブゴブリンまでもがなんか内股っぽいんですが。
って、悟空君、ガイさんも!
やっぱり、他人がやられた所を見るのも痛いですよね。
本当に、すいません。
ですが、隙だらけです。
“キィーンッ!"
「ゴルルァッ!」
「ちょっ!」
「先パイッ!?」
ガイさんと悟空君、驚いていますが何に驚いているのですか?
折角動かずにいたのですし、弱点となる場所も分かった訳ですから近くにいたホブゴブリンを蹴り上げただけなのですが・・・
ーーーーーーーーーーーーーーー
後方で基本サポートに専念するわたしとたまちゃん。
飛び道具を持たないたまちゃんはこちらに近づこうとするモンスターがいた際の迎撃に専念している。
わたしは...あ、ガイさんが攻撃を。
「“リキッド・ボール"」
手元に出したHPポーションの瓶が砕けます。
けど、中の液体は零れ落ちず、テニスボールくらいの球体になります。
わたしの職業『薬士』のスキルによって薬液を一時的に球体状にして持ち運びをしやすくします。
「“スローイング"」
そして、薬液のボールをわたしは投げます。狙うはガイさん。
ぱしゃんと音を立ててガイさんに当たると共に割れるボールは中身をガイさんに振りかけて体力を回復させてくれます。
「サンキュー!」
回復を確認したガイさんは大きな剣を振るってゴブリンを攻撃していきます。
ルナさんは最前線で敵の攻撃を防いでいるジャンヌさんやウォーカーさんを中心に回復してくれているので、わたしは他の人のサポートです。
「ギギ!」
「え!」
え、隠れていたゴブリン?
間に合わない。
「させない!」
「たまちゃん!」
たまちゃんのハンマーがゴブリンを追い払ってくれました。
でも当たっていない。
だったら、
「“スローイング"」
これを投げるのです。
小さなガラス玉のそれをゴブリンが腕を盾にすると割れて中の粉末がゴブリンに振りかかります。
目に入ったようでゴブリンは目を抑えて動きが止まります。
その間にわたしは次のアイテムを取り出します。
見た目は中身の入った普通の瓶だけど、先端のコルクから紐が飛び出ています。
紐の反対端は中の液体に浸かっているのを確認します。
「“着火"」
その紐に火をつけます。
「えい!」
そして投げます。
これは『火炎瓶』で中身は可燃性の液体。
それがゴブリンの足元で割れるとその場から一気に火が燃え広がり、直後にゴブリンの辺りで舞っていた粉末が爆発します。
粉末の正体は『黒色火薬』という薬品系アイテム。
炎に触れると爆発するから扱いには注意が必要だけど、生産職の攻撃手段としてはそれなりに強力な代物です。
とは言っても作る手間とか相手が近い時だと使えないしであまり多くは持っていないけど。
とにかくこれでわたし達の近くの敵は少な...
“キィーンッ!"
「ゴギッ!」
え?
変な効果音がしたのでわたしとたまちゃんはその音のする方を・・・
「「えっ?」」
そこには、ウォーカーさんの振り上げた蹴りがゴブリンの、あ、あそ・・〜〜〜っ!
とにかく、すごく痛そう。
モンスター達まで内股になってる。
“キィーンッ!"
「ゴルルァッ!」
またっ!?
ええぇ・・・
ーーーーーーーーーーーーーーー
多少のダメージを負いながらも手持ちの回復アイテムで乗り切り、危機的状況に陥ることもなく僕達は勝利しました。
戦利品については皆さんいらないというので僕が独り占めさせていただきました。
全部ゴブリンとホブゴブリンの武器ですけど。
そして再び馬車に乗って揺られている最中です。
「ウォーカー...」
「先パイ...」
「ん、どうしましたか?」
「「容赦なさ過ぎるぞ(です)」」
「そうですか?」
「「そうだよ(です)!」」
「いやでも、折角分かりやすい弱点がある訳ですから狙わないのも失礼かと...」
「お前、本当に男か?」
「はい、生物学的にも精神的にも性別は男ですね」
その発言は心外ですねガイさん。
「ウォーカー、やっぱり私より殺し屋向きかも」
「マーキュリーさん、僕は遊び人ですよ」
しかし、こうやってお喋りに興じるというのもまた、馬車に乗る上での醍醐味なのかもしれませんね。
馬車に揺られていき、そして何人かはうとうとと舟を漕いでいます。
確かに、このままじっとしていると眠くなりますよね。これもまた馬車の醍醐味かな?
「ウォーカー、ちょっといいか?」
「どうしました、ジャンヌさん?」
何でしょうか?
「いや、貴方が持っていたあのハンマーは一体..」
「ああ、ユニークシリーズの一つですね」
「っ! そうか...すごいなユニークシリーズを複数持つなんて」
「ジャンヌさんも幾つか持っていますよね? 少なくとも剣と首飾りの二つは」
「・・・・気づかれたか」
「バトルイベントの最後に使ったあのスキルからもしやと思いました」
名前は確か、『輝きを募り戦う者よ』でしたね。
終わった後に調べてみましたけど、情報らしい情報はなかったこと。
となると、武器による固有スキルの可能性が高い。
そして固有スキルを持つのなら、それはユニークシリーズの装備品の可能性がある。
と、順序立てて考えたのですが、当たりでしたか。
「本当にすごいな。確かにあの時使ったスキルはどちらも各装備の固有スキルだ」
そう言ってジャンヌさんは鎧の首辺りへ手を中に入れて何やら取り出してくれます。
あ、首飾り。金属製のようですが草花をあしらったデザインですね。
中心には多面体・・クリスタルってやつですか?
埋め込まれていますね。
「素敵ですね」
「ありがとう」
「では、僕の方も..」
えっと、ウィンドウの表示を...
「っ、ウォーカー!」
ん、どうしたのでしょうか?
ウィンドウはちゃんとジャンヌさんの前に出てますよね?
「ユニークシリーズの情報を簡単に明かすな!」
「え、ダメでしたか?」
「はあ、いいか、ユニークシリーズにしろ、強力なスキルや称号はそのプレイヤーにとって大事な武器なんだ。それを見せてしまえば他のプレイヤーと対峙する時なんかには不利になるんだぞ」
おお、そういうことでしたか。確かにポーカーでも自分の手の内を読ませないのが基本らしいですしね。
「ご忠告ありがとうございます」
「以降は気をつけてくれ。ふふ」
「おや?」
何か面白かったでしょうか?
「すまない。そんな風に素直に返されるとは思わなくてな」
「はい?」
「いや、言ってからなんだが私のような子どもに色々言われて不愉快ではと思ってな」
「ああ、そういうことですか」
「ジャンヌさんは僕を心配してのお言葉ですからね。何も嫌味やこちらが気に入らないからの言葉ではないですし」
ジャンヌさんは真面目ですね。
「ジャンヌさん、この後も至らぬ所がありましたらどうぞご指摘してください。直していきますので」
「わかった。けど、貴方は真面目だなウォーカー」
おっと、お互い様でしたか。
「旅人さん、村に着くよ」
さて、寝ている皆さんを起こしましょうか。
遠目ですが、目的の村が見えてきました。




