06 叔母(過去編)
父は声を低くして、私を追い出そうとした。そんなことを言われたのは初めてだったからもちろんショックを受けたし、なんでそんなことを言われなきゃ行けなかったんだろうって今も思ってる。でも、遠くへ、と言う言葉には複数の意味があることくらい中学生の私は理解できていた。
父は昔から言っていた。
「志織、世界がお前を否定しても、お父さんがきっと守るよ」
なんで?何を間違えたの?お父さんは私を守っていた。なのに私が、お父さんを傷つけた?
母は、悲しそうな顔をして私、前に立った。
「なんてことを!!」
荒げた母の声を聞いたけど、私はそれよりもショックが大きくて2人の会話の内容が耳に入ってくることはなかった。
そして、母は中学2年生の私と生まれたての赤ちゃんを連れて父が仕事中に家を出た。
母はそれから仕事を見つけて、私と弟を育てた。
「ごめんね、志織。迷惑かけて。お父さんと一緒だったら、あなたがこんな目に遭うことはなかったのに」
仕事の飲み会があった後はいつもこう言っていた。きっとお母さんのほうが大変なのにと思いながら私は家事と弟の世話を頑張った。中学校3年生になると部活も引退し、高校も一番近い公立の進学校に決まった。家に帰れば、弟の世話をして、夜も母の負担が減るよう夜泣きの対応もした。でも、なぜか母は家にいない時間が、留守にする日が増え、そして、叔母が家に来てこういった。
「あなたたちのお母さんは、当分帰ってこないからうちに来なさい。私があなたたちを守ってあげる」
あぁ、お母さんにも捨てられたんだ。
それからは、叔母に捨てられないよう家事も、育児もなんでもやった。中学校の卒業式も高校の入学式も叔母は仕事を休んできてくれた。申し訳なかった。高校は部活には入らなかった。別に入らなくてもいいと思っていたし。それよりも今は、樹生の面倒を見なくては行けないと思った。
「ねえ、志織。やりたいことやっていいのよ」
そう叔母は何度も言ってくれたけど、実際やりたいことなんてなかったし毎回やんわり断る。叔母がいてくれて本当によかったと思う。
ただ、大学は授業料免除して欲しくて推薦を狙っていたから高校1年生の時から生徒会に入ってポイントを稼いだ。大変だけど、全てを忘れて高校生だと認識させてくれる時間だった。




