00 誰にだって
誰にだって、生きていく上で趣味ができる。
今、趣味がなくてもこれからの人生を生きていけば、確かに‘’それは‘’趣味になっていくと思う。
そんなことを考えているが、私には趣味なんてものはない。ないと言ったら少し違うか。きちんとあったし、今は弟の樹生をきちんと育てることが趣味だと言ってもいい。
昔は、近所に住む桃ちゃんがピアノを始めて、それがきっかけで私もピアノをしていた。
小学生のとき、格闘マニアの父に連れられ空手の道場の見学に行った。それがきっかけで空手もしていた。
中学校に上がって、学校の方針で必ず部活に入らなくてはならなかった。部活が一向に決まらず、ブラブラしていたら、部員不足で廃部になりかけている美術部を見かけて入部していた。
高校の時は、強制的に部活は勧められなかったからどこにも入部はしなかった。代わりに、1年生で生徒会の書記、2年生では会計、3年生では副会長をしていた。我ながら、優等生だと思う。
高校以前の習い事がなぜ、全部過去形かって?やめたから。全部、楽しかった。それは確かで、その時の私にとっては全て趣味だった。
大学生となった今のわたしはというと、
「しーちゃん、お待たせ!」
軽く手を振って、私の隣に座ったこの子は私がピアノを始めたきっかけになった桃ちゃん。
「なんか寒くなってきたね〜。もう秋だよ、これはぁ」
「そう?確かに涼しくはなってきたね」
片手にコンビニで買ったであろう紅茶花伝を持ちながら、桃ちゃんは私に言った。この子にとっては、今年の秋はどうやらきたらしい。
「あー、しーちゃんと学食でこんなふうに喋ってられるのも後半年か」
「まだ半年あるって考えようよ」
「そーだね!互いに進路決まったことだし、後は楽しむだけだね!」
こんな感じで、大学生活最後の年を過ごしている。
桃ちゃんとは中高が離れていたから、大学で感動的?な再会を果たしてからはよくこうして昼食を一緒に食べていた。まさか4年間続くとは思ってなかった。桃ちゃんはとても良い子。私の家のことを知っているはずなのに何も触れようとしない。ありがとう、ももちゃん。らぶ。
そんな感じで、いつも通りくだらない話をして、昼食を食べて
「それじゃ、私は午後のレッスンがあるから、もういくね〜。しーちゃんもバイトはほどほどに早く帰りなよ〜」
「うん、がんばれ〜」
「ありがとう〜」
そう言って桃ちゃんは手を振って、去っていった。可愛くて、スタイルもよくて、愛嬌もある。今時流行りの韓国アイドルになりたいらしくて、私は詳しくないけど韓国アイドル育成事務所の日本支部の非公開練習生?になってるらしい。大学卒業後に渡韓することになってる。なんでも、桃ちゃんの親が出した条件らしい。桃ちゃんは元々韓国のアイドルに推しがいたらしい。推すことが趣味だったけど、それがいつの間にか夢になっていたとのこと。素敵だなぁ。
そんな華やかな世界とは無縁な私は、叔母の紹介で小さい食品の製作会社に入職が決まっている、ことのなっている。
ピピピッ
スマホのアラームが鳴る
やばい、バイトに遅れる、急がなきゃ。
早歩きで私はバイトへ向かった。
これが大学4年の、夏が終わり肌寒さを感じ始める季節のこと。




