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第八十五話「ドッキリ戦線投入」


「「シェルンちゃんっエリナちゃんっ危ないっっ!!」」


油断していた二人に高出力の赤黒いエネルギー粒子が伸びる。

そこへ彼女たちを守ろうと一人の人機が飛び出した。


「ミア!?」


横から突進してきたのは聖歌隊のミア。


「一体何を.....っっ!!?」


シェルンとエリナは突き飛ばされながらミアを見る。

するとそのすぐ横に赤黒いものが迫っていたことにようやく気付く。


「私たちを庇ってっっ!?!?」


二人を全力で突き飛ばしたミアが赤黒い塊の正面で両手を広げて立つ、彼女の優しい微笑みが粒子に覆われ......たかと思われたが、

あと数秒で激突するその刹那、見知らぬ機体がスタッと上空から間に入る。

上から落ちてきたのでしゃがんでいるその機体、

だがそれは衝撃を吸収しただけではなく、

これからの動作の為、力を込めているように見えた。

左腰には刀のようなものがさげられ、右手でその柄を握っている。


「あなたは!?」


「.........」


見知らぬ機体は何も答えず右手に握る刀を、カチンと少し引き抜き、小声で何かを呟いた。


『.....刻限ノ月』


神速の一刀が引き抜かれ、左下から右上へと切り上げられる。

すると粒子が真っ二つに別れ、左右の機械たちが溜まる場所に流れて行った。


「グガァァァ」


「何故コッチ二ィ.....」


引き抜かれた刀身は高周波を纏った赤色の刀、それを鞘にしまい立つ謎の人機にミアは駆け寄る。


「やったね!誰だか知らないけど

ありがと!!」


直立不動の謎人機とお構い無しにお礼マシンガンを浴びせるミアを見ながら地面に尻もちを着くシェルンとエリナは話し合っていた。


「.....機械軍ってあんな機体...居た....?」


「ううん、あんな機体私も初めて見たよ?」


「予定通り開幕直後に落とされたようだなっ......オラァ!!」


困惑する二人の後ろにはいつの間にかバルクを殴り飛ばすダンが居た。

ガシャーンッ!と粒子でボロボロになった機械の群れに突っ込むバルクを横目にシェルンとエリナの間でダンが迷惑そうな口調で続ける。


「もっと広い戦場ならば会わずに済むのだが......」


直立不動の人機がダンの声にピクッと反応した。

ミアの継続的なお礼に気にする素振りも見せず、

その人機は軋むほど古くない機体を敢えてギギギギギッとぎこちなく動かしながらこちらを向く、

ダンを視界に捉えると全速力で走ってきた。


「たぁぁいちょぉぉぉおおお!!!」


「はぁ.....始まったか........」


片手で顔を覆うダンに縋り付きながら謎人機は震える声で訴えかける。


「あんた人の心とかねぇのか!

マーカスが修行場所に連れてくって乗せられたけどコレ確実に実践じゃねぇかっ!!

オマエ俺がどんだけ実践恐怖症か忘れたんか!?え?忘れるわけねぇよな??

あの日動けないあんたを引っ張りながら戦場のど真ん中を駆けずり回るあの地獄を味わった俺を見てただろうが!なのに何だこの仕打ちは、もうあんたに巻き込まれないようと思って森へ引きこもったのに、

てか一応俺、あんたの命の恩人だぞ??頭おかしんじゃねぇのかお前よぉぉぉおおお!!!!!」


大絶叫を披露して、さらには駄々捏ね流ジタバタを地面で披露する謎人機、

その姿に先程絶望を両断した威厳は全くなく.....故にミアも少し引いていた。


「......(ったくめんどくさい奴だ...)」


地ベタで水を失った魚のようにビチビチと跳ね回る人機がダンの小言にすかさず反応して詰め寄る。


「今、めんどくさい奴って言った??」


「いや言ってないが?」


「言いましたァ!絶対言ったァァ!!

面倒なら呼ばなきゃいいでしょうがっっ

構ってちゃんか?構ってちゃんなのかあんたァァアアッ??」


「.......落ち着け"京愁"お前を呼んだのは他でもない、

軍からの支援が期待できない現状で頼れるのはお前だけなんだ

いいから力を貸してくれ、目を瞑っててくれてもいい....お前はそれでも十分戦力になる。」


「目を閉じて刀を振れば修行と変わんないとでも??

目を瞑ってても戦場に居ることに変わりないんですけどぉ?

そんなことで俺が納得するわけねぇだろが!!!」


「.....わかった、ならばこうしよう」


「今後一切()()()はお前を頼らない、これでどうだ?

これならばやる気になるだろう??」


「今後.....一切.......?」


「そう、今後....一切だ!」


「言ったな!

言質取ったぞ?

誰かこの一部始終録画してぇぇぇえええ!!!」


即座に証拠を録音すべきだったと気付き、

京愁と呼ばれた人機は絶叫していた。


「そういうと思って録画済みだ。

ほらいいから戦っーー」


「よそ見をするなと言っているだろうがっ!?」


胸部のコンソールパネルから挿入されていた細長い機械を

引き抜きチラつかせながらダンが京愁を宥めていると、

バルクが体勢を立て直して右ストレートをダンへ浴びせる。

伝わる衝撃に手ごたえを感じたが目の前にはダンの頭部ではなく、

鞘に納められた刀が二人の間に入って止めていた。


「いいでしょう、いいでしょう

今回でこの地獄も終わるなら、目を瞑って修行と思って駆け回りましょうとも!」


片手でバルクのフルパンチを受け止め空いた手で顎をさする京愁が

うんうんと頷きながら自分に言い聞かせるように声を出し、

攻撃を受け止めた型のまま目に見えぬ速度で抜刀し、

かと思えばバルクがまた鉄くずに埋めれていた。


「まったく今日はとんでもないドッキリをされたもんだ。

俺、これからはドッキリNGで行くわ」


鞘を腰に戻し刀を構える京愁の眼のライトは消灯していた。


「まさか本当に目を閉じて戦うつもりか.......?

まあいい、マーカス応答しろ

京愁が戦線に投入されたことを確認した。

お前も上空から加勢してくれ」


『了解......説得が成功したようで何よりだ。』


構える京愁を尻目にダンが無線で連絡を取る。

すぐさま街の後方、南側から巨大なヘリが飛んできた。


「トバッチリがいかなくてよかったな?

それとミアくんここは危険だ、シェルンとエリナと一緒に少し下がってくれ」


「はいほーい!」


ミアは右手をピンッと頭上に伸ばして返事をし、

指示の通りシェルンとエリナに駆け寄った。


「隊長なんて言ってた?」


「ここはいいから少し下がってろだってー」


「オッケー!じゃあさがろー!!」


ミアの呑気な空気に飲まれシェルンももはや遠足のように返答した。


「......いや、というかなんでミアがここに??」


ずっと感じていた異様さに黙っていたエリナが我慢しきれず気になっていたことを聞く。


「あ! やっぱ気になる?? あとで教えてあげるね~」


戦場にもかかわらずスキップしながら後退するミアは

右人差し指を立てて口元に当てながらニヒッと笑っていた。


ーー


ここは北門から少し離れたある広めのバルコニー


上から少し離れた北門を眺めれば、

想定通り機械の大群が押し寄せ、

中に入れまいと押し返す人機軍の姿があった。


使える物資をすべて使って出来ることはしたショウだったが、

それでも犠牲者が出ているであろう現状に悔しさが込み上げてきた。


「始まったわね?」


もっと準備ができたのでは?と自問自答を始めだしたショウの横に

一人の人機がヌッと現れた。


「エーミールさん!?どうしてここに??」


腕組みをしながら両足をクロスして立つカリスマな人機、エーミールだった。


「私も何か手伝えないかしらと思ってね?」

エーミールは右手を頬に当ててあざとく(?)話す。


「そうなんですか??」


「昨日ルミナ・クワイアのメンバーたちが私のところに来てね?

私たちもショウくんや街の為に戦わせてくれ!って言いに来たのよ??」


「.....聖歌隊の皆さんが?」


「そう、本来彼女たちはダン隊長から雑用を任されていたのだけれど

どうもそれでは嫌だったみたいね?まったく困ったものだわぁ」


エーミールは言葉とは裏腹になんだか嬉しそうなように見えた。


「......それで....どうしたんですか?」


「もちろん反対したわ、大反対!

何考えてんのよぉぉ!!って怒鳴っちゃったもの、ウフフッ!」


「ええ.....」

エーミールが嬉そうに話すので賛成したのかと思ったショウは

まったく逆の言葉が返ってきてズコッっと体が滑った。


「オホホホホホッ!そう簡単にOKなんて出せないわぁ

でもね、彼女たちが渋々帰った後、セレナお嬢ちゃんが私の所まで来てくれたのっ!!」


「......セレナが?」


滑ったショウは体勢を戻しながら、エーミールの話の続きを聞いた。


ーー


「お邪魔するわよ?」


夜、聖歌隊の宿舎にあるエーミールの執務室に

バァン!と無遠慮な開け方でセレナが入室した。


「あらあら?

セレナお嬢ちゃんじゃないの、どうしたのかしらこんな時間に??」


蹴り開けられた扉の爆音など気にも留めず、

フラダンスの衣装を着てヨガのポーズをとるエーミールが片手間にセレナの相手をする。


「どうしたじゃないわよ、さっきアンタんとこのアバズレたちが

戦いたいってここに来たんじゃないの??」


「.......そうだけど、それがどうかしたのかしら?」


「まぁ?自分の娘のように大事に思ってる存在が

自ら死に行くのを良しとする親なんて親とは言わないものね、

アンタの気持ちも分からないではないわよ??」


「あら?何が言いたいのかしら??」


エーミールは大鷲のポーズをとりながら

少し声を低くして質問する。


「......独り言よ、気にしなくていいわ。

それよりアンタと明日でもう会えなくなるだろうと思って

デヘンの話をしに来てあげたの。

聞きたくなかったかしら??」


「まぁ!デヘンの話を!?

ぜひ聞きたいわ、さぁここに座ってっ!!」


エーミールはヨガを止め、書類の山積みになっていた木製の仕事机を片腕で一掃し、

床を散らかしてスペースを確保した。


「.....じゃあ、失礼するわ」


雑な準備だったがセレナも気にせずその机に正座を崩した姿勢で座り、同じくエーミールも机の上に座った。


「それで?デヘンの話は??」


セレナは先ほどの態度と少し変わったエーミールの

ズイズイと迫る鬱陶しさを手で払いながら喚く。


「ちょっと近いわよ、うざったい!!ちゃんと話すからっ

まったく......まずはアンタの知らないデヘンとレミリアの話をしてあげる

そもそもデヘンがここまで生きてこれたのも、その話があっての事だもの.....」


「私の知らないデヘンと....レミリアの話.......?」


何を言っているのか分からないと言わんばかりに首を傾げるエーミールに、

セレナはデヘンから聞かされたレミリアとの出会いから話すのだった。


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