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第九十八話「サルorショウ」


「生存者がいれば返事をしなさい!」


瓦礫と所々に上がる黒煙、地面には鉄くずが大量に散らばっている、

それら鉄くずはかつて敵だった者と仲間だった者のなれの果て、

今ではもうどれがどちらの残骸なのか全く分からない。

敵の残骸とともに勇敢な戦士たちを踏みしめているかもしれないという事実に

申し訳なさで一杯になるツヴァイだが、それよりも生きている仲間を探すのが最優先だと

自分に言い聞かせて戦場を駆け回る。


「誰か居ないか!無事なやつは声を出せ!!」


ツヴァイが呼びかけながら走り回っていると別方向を捜索していた京愁や数人の人機と合流した。


「.....誰の声もしませんね」


「全くだ、ベレムナイトとかいうやつ、

あの数の差でここまでこちらを壊滅させるなんてな......」


「こちらも生存者は一人も見つかりませんでした。」


敵の凶悪さに頭を抱えるツヴァイと京愁たちが

他の生存者は居ないと諦めかけていたその時、

近くの大きな瓦礫から微かに声が聞こえた。


「(おい.....ここだ...)」


「今確かに声が!?」


「こっちだ!」


声の発生源を突き止めた京愁が

瓦礫を退かして鉄の残骸を掘り起こす、するとボロボロの人機が一人出てきた。


「よしっ、もう大丈夫です!」


「ありがとう.......ございます.....」


救出されたのは人機軍の隊員、瓦礫に潰されたせいで下半身はぺしゃんこだが

コアは破損しておらず、会話も出来そうなので京愁が生存者の情報を聞く。


「助かってすぐに悪いが他に生存者はいないか?」


「それが.....恐らくこの大きな瓦礫の中で何人か下敷きになっていると思います。」


救助された隊員はツヴァイたち数名の人機ではどうしようもないだろうと

言いずらそうに報告するが、情報だけでも助かると京愁は感謝を述べる。


「......そうか、情報感謝する。

とりあえず、彼を安静な場所に移動させてくれ」


「はっ!」


「ですがこのデカさの瓦礫、簡単には退かせそうにないですね.....」


即席で作られたタンカーで運ばれていく隊員を見送ったツヴァイは

改めてその巨大な瓦礫を見上げ流石に二人だけではどうしようもないと弱音を吐く

すると街の方からこちらに呼びかける声が聞こえてきた。


「お~い」


「んっ?」


「あっちから誰か来ますよ!

あれは....コメットさんたちですね!」


街の中から響く声に首を傾げなが視界を凝らすと

シンとコメットとセレナが真っ直ぐ向かってきているのが見えた。


「お三人方、ショウ様のご容体は如何でしたか?」


こちらに駆け寄り合流したシンにツヴァイは心底心配した口調で質問する。


「はいっ 

ショウはなんとか意識を取り戻しました

もう大丈夫です。」


「それは良かった.....」


シンも素早く現状を伝える

そして反対にツヴァイたちの状況を聞いた。


「えっと.....他の生存者は??」


「ああ、ちょうどいいところに来てくれた

実はこの巨大な瓦礫の下に何人か閉じ込められているそうなんだ。

手を貸してくれないか?」


京愁はホッと胸を撫で下ろすツヴァイに代わって

手を焼いていた瓦礫内の生存者捜索について協力を仰ぎシンたちもそれを了承した。


「分かりました、まずは周りの小さな瓦礫から退かしていきましょう」


五人という多いとは言えない人数での捜索は

困難を極めたが時間をかけて丁寧に進められ、

巨大瓦礫の周りに挟まる小さな瓦礫や鉄くずを優先的に撤去した。

お陰でそれらに埋まっていた人機の生存者が次々に救助されていった。


「もう大丈夫だ」


「感謝しますっっ」


「やっと出られた」


「想像以上に生存者がこの瓦礫に集中していますが

やはり人手が足りなくて救助がなかなか進みませんね」


全体の動きを見ながら的確に指示や協力を行うツヴァイが

未だ捜索できていない巨大瓦礫の隙間を覗き込みながら解消しない人手不足に愚痴をこぼす。

すると横で同じように瓦礫内部を覗く京愁もポロリと愚痴をこぼした。


「ああ、あと数人でもいいからいればなぁ

くそぉ.....せめて刀があればこの邪魔石を粉々に.....」


愚痴の後半から右拳を固く握りしめてワナワナと震える京愁の左腰には

根元からぽっきり折れた刀の柄がぶら下がっている。


「お〜い!みんなぁ〜!!」


バケツリレーのように瓦礫を移動させている中、

南の方からハキハキとした声とババババババババッとプロペラの回る音が近づいてくる。


「この音は.....」


「京愁、予備の刀だ

まあ、真剣ではないナマクラだが無いよりはマシだろ?」


プロペラ音に真っ先に反応した京愁に答えるように

大型ヘリは真っ直ぐこちらに向かいながら相棒の要望を的確に把握して返した。


「マーカス!いやマーカス様!!

感謝!はよくれ!すぐくれ!投げてくれ!!」


「ナマクラだからって雑だな」


希望のものがあることを知った京愁が飛び跳ねながら催促するが

その様にマーカスの声は少し引きつっている。


「何でもいいからはよ寄越せ

あとひとつ言うがそれはナマクラじゃない、邪道だ」


「分かったから着陸するまで待て」


呆れながらも最速で現場に到着したマーカスが

ロープを垂らして聖歌隊を地上に降ろし、自身もゆっくりと着陸した。


「高周波使用の刀型武器なんて邪道中の邪道だが

形状はしっかり刀だし今はほとんど誤差みたいなもんだな

ああーコレだよコレ!!これがあればあんな塊一瞬だぜ!!」


マーカスに駆け寄った京愁がピットの中に半身を突っ込んで

ゴソゴソと手探りしお目当てのものを探す

ようやく見つけたのかソレをガシッとつかんで引っ張り出し

全身を使って撫でながら喜びに舞い踊る。


「京愁、気持ち悪いぞ

いいからさっさとその瓦礫を斬れ」


「うっせーなーわかってるからちょっと待ってろよ」


かなり冷たく切れ味のある怪訝さを纏った声で

文句を飛ばすマーカスを鬱陶しく思う京愁だが

これ以上ヤイヤイ言われないために

すぐさま瓦礫の前まで移動して刀を構える。


四連・宵凪(しれん よいなぎ)


腰を低くして刀を構える京愁が小さく呟いてすぐ

見上げるほど大きな瓦礫にビシビシッとヒビが入っていき

遂には瓦礫の数が四つになった。


「すっごい!こんなおっきな瓦礫が一瞬で四等分にされちゃったよ!?」


神速の一刀、その神業に興奮するミアがピョンピョン跳ねるが

フリアがまだ大きめではある瓦礫に不満を漏らす。


「でももっと粉々にすれば楽なのに~」


「残念ながらこの邪道では無理だな」


フリアの言葉に穏やかな口調で現状を補足する京愁は

振り抜いた邪道を全体に掲げて見せる。


「一瞬」

「崩壊」


「あちゃ~もう壊れちゃったんだ」


誰もが納得する刀の状態にララやリリたちが顎を落とす頃には

邪道が完全に粉と化していた。


「瓦礫をこれ以上小さくすることはできませんね

仕方ないですけど全員で一つ一つ退かしていきましょう。」


ツヴァイの指示で一行は一つの瓦礫に全員で取り掛かり

ゆっくりと安全に移動させ、次々と生存者を救助していった。


「ふー、何とか救出できたわね」


「大変だったけど生存者が多くて良かったよー」


「生きてる」

「いいこと」


レーゼやフリアが掻いているはずのない汗を手で拭いながら

達成感に浸っているとケーニャが手についた土ぼこりをパンパンと払いながら呟く。


「それにしても、なんか忘れているような??」


「なんかって何よ?」


「んー、私たちの仲間がもう一人いたような.......??」


ビミョーに思い出せないその答えにレーゼも一緒になって首を傾げていると

ナフタが巨大瓦礫のひとつが退かされた箇所を指差して答えた。


「あー.....アレじゃないかしら?」


「あ!アレは!?」


ナフタの指差す場所を見れば、

そこには目の血走った猿人形が下半身を瓦礫に挟まれながらも

元の絶叫とはかけ離れたしゃがれ声で叫び続けている姿があった。


「トルミナさん......」


「みんな、別れはいつか来るんだよ」


「そうね....」


そこに猿が居てあの人がいない

それが示す意味を完全に理解した聖歌隊たちは

それぞれが肩を震わせながら抱き合い、そして目を合わせて頷き

猿を囲んで両手を組み合わせ、弔いの言葉を唱え始めた。


「門限を一秒でも過ぎると反省文を書かせるトルミナさん」


「スケジュールに厳しくて

個人レッスンが鬼のようだったトルミナさん」


「休みの日はいつも自室に籠って」

「お姉さんとTogetter Boysをシーズンワンから」

「永遠にリピートしてるトルミナマネージャー」


「ていうかそうやってせっかくの休みを無駄にしてるのに

私たちに当たってくるのおかしくない?」


「そうですわね、器が小さいと困りものですわ」


「そうそうこないだなんてさー........」


「横暴トルミナ」

「暴君トルミナ」


段々と、いや最初から弔いムードではなかった聖歌隊の愚痴が

徐々に盛り上がっていき、遂にミアが大きな声で本心を大公開した。


「もうまさに暴君トルミナ!

別にいなくなっても清々するだけだよね~」


「誰が....暴君ですって??」


「へっ??」


その場にいた全員に聞こえる声でお気持ち表明したミアの真後ろから

聞き覚えのある冷たい声が聞こえ、ミアも間抜けな声が出る。


振り返るミアが見たのは小さく盛られた瓦礫山から

ボゴーンッと飛び出す昇竜拳ポーズのトルミナだった。


「いやぁぁぁぁああああ!?!?!?!?」


蘇った暴君に自身のお気持ちも聞かれてしまってる現状

この後何が起こるか悟ってしまったミアはその絶望に叫ばずにはいられない


「ホントに死んでるかもわかんないのに

あんなにボロカス言うなんて馬鹿よね」


セレナは溜息を吐きながら、頭頂部を鷲掴みにされて引きずり回されるミアを眺め

むしろその馬鹿さを評価するべきかと少し思った。


「セレナちゃん?間違っても近寄っちゃだめだからね?」


そんなセレナの横にいつの間にかミア以外の聖歌隊が

スススッと寄って共にニコニコしながらミアとトルミナを眺めていた。


「ちょっと待ってみんな!?

なんで私だけ標的なの!?!?

トルミナさんっ!みんなも一緒になって言ってましたぁぁぁ!!」


「仲間を売るなんてそれだけで極刑ですよ?」


「やべてぇぇぇぇ」


予想外の裏切りにすぐさま仲間を売るミアだったがトルミナには逆効果だった。


「ていうかあそこの瓦礫にトルミナさんのショウ君が挟まってるよ

私なんかよりそっちを助けなきゃっ!!」


「何言ってるんですか?あれはただのサル、それも人形

あんなのとショウくぅんを一緒にしないでください??」


「あああああぁぁぁぁぁぁ」


かつて愛を注いでいたはずのサルには目もくれずミアを回す手は更に加速する。


「ぷはっ!やっと出られたよ!!」


「一緒出られないかと思った......」


すると、何かの催しかのように見事に回されるミアをおぉ....と感嘆しながら眺める一行の足元で

シェルンとエリナがポコリと顔を出してきた。


「あっ!シェルンちゃんにエリナちゃん無事だったのね!!」


「うん、べレムナイトに囲まれたとき私たち混戦の中で転んじゃって

他のやられちゃった仲間の下敷きになって、

その後でっかい瓦礫も落ちてきてもうダメかと思ったよ.......」


ケーニャが出てきたシェルンたちに気づいて地面から引っ張り上げ

ボロボロの二人が合流するが、自分たちより死の危機に直面している

ミアの方を指さしてエリナが聞く。


「.....それよりあっちは大丈夫なの?」


「と、トルミナさん....おち、落ち着いてっっ」


「ミア?そーんなに引退したいなら

私が責任を持って速やかに去らせてあげますね??この世からも♡」


「こ.....殺されるっっ」


ミアの首元を掴み、今にもそのコアを撃ち抜かんと手刀を構えるトルミナの耳に

シンの声が届き、その内容が内容だけに脳髄にまで浸透した。


「数人の捜索班を残しますが、それ以外の人は工房でショウのリペアを受けて下さーい」


「何ですかそのご褒美!?!?」


「ぐべぇっ!」


グリンッと首を百八十度回転しシンの方を向くトルミナ

その手は急に止まり手はパッ離されてミアは地面に激突した。


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