最終話・僕と彼との関係※エイシオ視点
森の中の山小屋。
春の木漏れ日、爽やかな朝。
鳥のさえずりを聞きながら、僕は朝食の準備をする。
昨日焼いたパンに、卵を二個使ったオムレツ。
アユムが作ってくれた料理をテーブルに運ぶんだ。
キノコのスープ。
コーヒー。
定番の朝食。
いつもの……それが幸せ。
「今日も幸せな朝だね、アユム」
「はい」
コーヒーを淹れてくれるアユムに、僕はキスをする。
僕は今まで自分を淡白だと思っていたんだけど、アユムと結婚してからは毎日ベタベタだ。
離れたくない。
結婚といっても、まだ僕達だけの誓いなんだけどね。
それでも結婚式を挙げることができた。
なんと、ロードリア家でね。
驚いた事に、みんな祝福してくれた。
わかっていたのかな?
父上なんか、息子が増えたって喜んでくれたよ。
アユムが息子になった事が、特別嬉しいようだった。
思ってもいなかった幸せが、行動したことによって導かれた。
アユムは、全てを諦めようとした僕の前に現れた天使だ。
大好きなアユム。
温かな朝食。
……その前に。
「隣の家にも、朝ごはんをお届けしてきますね」
「あぁ~……僕も行こう……」
はぁ~。
僕達の家からできるだけ、離れて作った隣の家。
そこはアライグマハウスと呼ばれていて、色んな神様が痴話喧嘩したり、人間の料理を食べに来たり……。
今日も元気にアライグマしてる。
「テンちゃんもう許してぇええええっ!!!」
「ちょっと許したらすぐ朝帰りかよぉお! この馬鹿アライグマ!」
ほら、あの浮気性アライグマ・ザピクロスの声。
そしてテンドルニオン様の怒鳴り声。
あれから色々あって、追いかけてきた神様達に僕がこの家を作る事を提案したんだ。
ま、僕の幸せを導いてくれた神々であることには変わり無いしね。
「テンドルニオン~ザッピ~あんたら、すぐケンカしてうるさいわぁ~あっしは転移者殿の朝ごはん食べに来ただけなのにぃ~うるさいわぁ~」
おや、今日はアライグマ増えてるな。
違う声も聞こえる。
どこの神様だろう。
「あれ、三人分作らないとだったかな」
アユムも気付いたようだ。
「あぁ~! 転移者殿! 勇者! お腹が空いたぁ! 霧の神のフォルンペクスが急に来やがったのぉ!」
殴られて転がってきた浮気性アライグマが、僕達に言う。
「まったく……では僕の分を先に届けましょう」
「すぐに新しいオムレツを焼きますね! また賑やかになるなぁ」
「転移者殿~~ごろごろごろ」
「ふふ、待っててくださいね」
アユムは、ザピクロス様を抱っこして笑う。
アユムはアライグマハウスに食事を届けていたんだけど、もの珍しさに見に来る人達がアライグマが食べている料理が美味しそうで食べたい! と言い出し……。
これからこのハウスも増築して、レストランをやる予定なんだ。
アユムはすごく楽しそうで、幸せそうで僕も嬉しい。
アユムの転移者としての使命は、まだよくわからない。
だけど、神々の幸せを見守ることで世界は平和になるようだ。
アユムの優しさが、世界を巡る……。
だから、僕はこれからずっとアユムの笑顔を守っていく。
アライグマハウスも。
そしてこの世界も。
みんな守っていくよ。
君のためなら、僕は勇者になろうと思う。
いつだって愛する人のためなら勇者になろうと思える。
愛しい君よ、出逢ってくれて、ありがとう。
僕は此の世界で、愛する人と出逢える事ができた。
一度は絶望した此の世界に、感謝することができたんだ。
これからも、アユムとずっと一緒に生きていく。
……アユムが笑うから、たまにアライグマが間にいてもいいかな。
「エイシオさんの、オムレツできあがりですっ」
「ありがとうアユム。いただきます」
「はい。いただきます……!」
此の世界よ、愛する君よ。出逢ってくれて、ありがとう。
今日も幸福な、ホカホカの朝ごはんを、いただきます――。
~異世界転移で、俺と僕とのほっこり溺愛スローライフ~間に挟まる・もふもふ神の言うこと聞いて珍道中~
完
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