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漆黒の魔剣士と白銀の姫君  作者: よこじー
第3章 天下統一編
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第89話「新たなる戦乱」

 カーライム王国南域にある町、スラーブ。

 所狭しと並ぶ建物に、往来の激しい大通り。商人や旅人、大道芸人の姿なども見られ、その雰囲気はとても賑やかだ。

 そこだけを見れば至って普通の都市に見えるこの町だが、国境にほど近いため、有事に備えてその周囲は頑丈な城壁で囲まれていた。また町中には多くの屈強な兵たちが駐屯しており、もし外敵が攻めてこようものならばすぐに撃退できるようになっている。

 そしてこの日もまた、多くの兵たちが町中を巡回していた。


「あ~腹減った。交代の時間はまだか……」


 若い兵が腹をさすりながら、愚痴った。彼の仕事は城壁の上から、町の外を見張ることである。


「おい、もっとシャキッとしろよ。シアン陛下による新体制になってまだ間もないんだ。国内が未だ不安定な今こそ、敵が攻めてくるかもしれない」


「へいへ~い。わかってますよ~」


 すかさず隣にいた壮年の兵士が窘めたが、若い兵士はあまり反省してないようであった。

 彼は適当に返事をすると、城壁の外に再び目を向けた。

 その時。


「うっ!」


 短い悲鳴とともに兵士の身体が倒れる。

 彼の頭には一本の矢が刺さっていた。

 これが何を意味するのか。壮年の兵士は瞬時に悟ったが、彼はどうすることもできなかった。

 次の瞬間には二射目が彼の頭を貫いたからである。

 二人の見張りが死んだことにより、スラーブの町は対応が遅れた。敵襲来を告げる鐘が鳴り響いた時にはもはや手遅れであった。

 門を閉めるより早く、街中に大量の兵たちがなだれ込み、やがて町中の喧騒は悲鳴と断末魔に変わっていった。






「報告します! ナダルナル王国が国境を越え領内に侵攻! その数およそ12万! 城砦都市スラーブはすでに陥落したとのこと! 鎮南将軍のヘイドリス男爵が兵を集め応戦しておりますが、如何せん兵力差が大きく苦戦中……!」


 宮城のシアンのもとに救援要請が届いたのはスラーブの町が陥落してから2日後のことであった。

 シアンはすぐさま諸将を集めると軍議を開いた。


「いままでナダルナルが攻めてきたことは何度かありましたが、これほどの大攻勢はありませんでした。おそらくは内乱で国力が疲弊した今なら我が国を攻め滅ぼせるとでも考えたのでしょう。ここは徹底的にこれを叩き潰し、いまだ我が国が健在であることを示さねばなりません」


 相手は未曽有の大軍勢というのに、そう語るシアンの顔に絶望の色はない。むしろその双眸からは熱い闘志さえ感じさせる。

 そんな彼女の姿を見て、諸将の士気が上がらぬはずがなかった。

 シアンは意気盛んな彼らを見渡し、満足げに頷くと、下知した。


「勅命です! 身の程知らずの蛮族どもを領内から掃討なさい!」






 カーライム王国へと攻め込んできたナダルナル王国軍は12万。これに対しシアンは、大将軍・オータス=コンドラッド率いる8万の精兵を援軍として送り込んだ。

 ヘイドリス男爵率いる南域貴族諸侯軍はその数3万ほど。合流を果たせば、合わせて11万となり敵とほぼ互角となる計算であった。

 また、さらに海上よりナダルナルの軍船700艘が王都を狙っているとの報を受けたシアンは、その殲滅を鎮東将軍・サムルハ=エイヴァンスに命じた。エイヴァンス家はその領地の多くが海に面している影響で陸上戦より海上戦を得意とする。まさに適材適所の采配であった。

 残りの兵力はバルディアス家への牽制のため、温存された。バルディアス家はいまだシアンに恭順の意を示しておらず、この戦乱に呼応して再び挙兵する可能性は十分ありえた。

 こうして、新たな大戦の火蓋が切って落とされた。

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