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漆黒の魔剣士と白銀の姫君  作者: よこじー
第1章 モルネス居候編
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第21話「快進撃」

 王都を出発したカーライム軍は国境を超え、すでにジェルメンテ領内にいた。

 ここまでに小規模な戦闘が何回かあったが、いずれも快勝しているため兵の士気は依然高い。

 それもそのはず、今回の遠征に参加している兵は国を代表する猛者ばかり。しかもそれを率いるは『六将』の一人・スペンダー公爵だ。

 さらに軍には同じく『六将』の大魔術士ケルビンと聖騎士シャイニーヌもいる。

 いくら敵が大国・ジェルメンテとはいえ、そうやすやすと負けるはずがなかった。

 そして、ジェルメンテ領内に入って初めての夜が訪れた。

 夜の進軍は危険なため、カーライム軍は素早く陣をつくり、休息をとることにした。

 もちろん敵が夜襲をしかけてくる可能性もあるので、兵たちは交代で睡眠をとる。

 そんな中、スペンダー公爵はケルビンとシャイニーヌを自分の幕舎に招いていた。


「これまでの敵の出方について、どう思う?ぜひ、意見を聞きたい」


 そう、真剣な眼差しで問う公爵。

 すると、シャイニーヌがこの問いに答えた。


「敵の数も少ないし、対応も遅い。おそらく、あの噂は本当かと思われます」


「ふむ、やはり貴殿もそう思うか……」


 そう言うと、公爵は目をつぶり考えをめぐらせる。

 あの噂。それは、北方の蛮族がジェルメンテ領内に大規模な侵攻を開始した、というものだ。

 もしそれが本当ならば、ジェルメンテの態度が突如変わったのもうなずける。

 フェービスの戦いで敗れたところにさらに北からの侵攻を受ければ、いくらジェルメンテが強国といえどただではすまない。

 当然、なにかと理由をつけてどちらかと関係の修復を図ろうとするだろう。すなわち、それが先の使者ということだ。


「よし、ならば蛮族の対応でこちらへの防備が薄い今のうちに一気に進軍する。明朝、ここより西方にあるヤンド城砦を攻撃するぞ」


 公爵はそう言うと、二人を見る。

 二人とも特に異論はないらしく、静かにうなずいた。






 

 ヤンド城砦はまさしく天然の要塞であった。

 周りを険しい山々に囲われているため、軍が通ることができるのは正面のみ。

 しかし、その正面も崖と崖の間の細い一本道があるのみで一度に少数しか進むことができない。

 当然律儀に正面から攻めれば、細道を抜けた先で待ち構えている大軍に袋叩きにされてしまうだろう。

 また、崖の上から大量の弓矢を浴びせてくることも考えられる。


「これは、一体どう攻めれば……」


 シャイニーヌはその堅城を前に思わずそう呟いた。

 その横にいるスペンダー公爵もまた、声こそ出さないもののシャイニーヌと気持ちは同じだった。

 だがそんな中、二人とは対照的に一人だけいたって冷静な男がいた。


「二人とも、我が軍に軍師がおることを忘れてはおらんですかな?」


 彼はそう言うと、穏やかにほほ笑んだ。

 ケルビン=メンティ。大魔術士にして軍略にも精通している彼は今回の戦で軍師をまかされていた。

 そして、軍師ケルビンの頭の中にはすでに、この城砦を落とす策が浮かんでいたのである。

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