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01お姉様、またそんな汚い獣と遊んでいるの?

「よしよし、ルッチチ。いい子。今日も毛並みがつやつや」


 王都の裏手にある封印の森。そこは凶暴な魔物がひしめく立ち入り禁止区域。マクレラ・マクレーンは、巨大な黒狼ブラックフェンリルの顎(あご)の下を撫でていた。全長五メートルはある狼は世間では災厄の獣と呼ばれているが己にとってはデカい犬。


「グルル……(マクレラ、腹減った)」


「はいはい、特製ジャーキーを持ってきたよ」


 前世は動物園の飼育員だった。事故で死んでこの世界に転生した際、なぜか魔物の言葉がわかる、魔物に好かれるというスキルを持って生まれたのだ。

 この国では聖女が魔物を鎮めるとされているけれど、祈りで魔物が消えるわけじゃない。こっそり森に入り、魔物たちの悩み。主に空腹や虫歯、ブラッシング不足を解決してから大人しくさせていただけだがそれを誰も知らない。妹のリスボンを除いては。


「きゃあ! お姉様、またそんな汚い獣と遊んでいるの!?」


 森の入り口にフリフリの白いドレスを着たリスボンが立っていた。彼女は光の聖女と呼ばれている。キラキラした光魔法が使えるがただの照明。魔物に対しては何の効果もないし、逆に眩しくて怒らせるだけの効果しかない。

 人間でも光を当てられたら不愉快な気持ちになるだろうことからわかることだ。わからないとしたら致命的。


「リスボン、ルッチチは汚くない。ちゃんと洗ってる」


「うるさい! そんな化け物なんか聖なる光で浄化してあげる!」


 いきりたったリスボンが杖を振るとピカッと強烈な光が放たれた。


「ギャウン!(目が! 目がぁぁ!)」


 ルッチチが悲鳴を上げて逃げていく。


「ふん、逃げたわね。やっぱり私の力は凄いわ!」


 リスボンは勝ち誇っているがため息をついた。あーあ、ルッチチ。あとで機嫌直すの大変なのになんてことをしてくれたのか。


 その後、王城の広間に呼び出され玉座には国王、隣には第二王子のニラール様。実の妹のリスボンがニヤニヤしながら立っていた。


「マクレラ・マクレーン! 貴様を闇の魔女と認定し国外追放を命じる!」


 ニラール王子が高らかに宣言した。認定早い。彼は婚約者で頭の中がお花畑なことで有名。


「闇……闇の魔女、ですか?」


「とぼけるな! リスボンが見たのだ! 貴様が森で魔物と密通し、何やら怪しげな儀式を行っていたのをな!」


 ああ、ブラッシングのことか。あれは確かに端から見れば黒い毛が舞い散る怪しい儀式に見えなくもない。ってわけがない。犬飼いなら誰でもやるでしょうにと首を振りたくなる。


「貴様のような穢(けが)らわしい女が姉とはリスボンが不憫(ふびん)でならん! 婚約破棄だ! 真の聖女であるリスボンと結婚する!」


「お姉様、残念ねぇ。でも安心して。魔物の鎮圧はやってあげるから」


 リスボンが耳元で囁(ささや)く。


「お姉様がコソコソ餌付けしてただけなんでしょ? 聖なる光で焼き払えばあんな獣なんてイチコロよ」


 なるほど。このバカ妹は魔物の生態を何もわかっていない。魔物は焼き払おうとすれば反撃する。餌付けで築き上げた友好関係が崩れればどうなるか。牙に勝てるわけがないんだけど、もうどうでもいいか。


「……わかりました。出て行きます」


 あっさりと頷いた。


「なっ、言い訳もしないのか!?」


「はい。だって、ニラール殿下もリスボンも話なんて聞かないでしょう?」


 肩をすくめた。実はちょうどよかったのだ。最近、森の奥に住む魔王と名乗る人物からうちの城で働きませんか?福利厚生完備、温泉付きですよ!というスカウトの手紙をもらっていたのだ。ブラックな王家とサヨナラできるならば、好都合。


「では、西の魔王領へ行きますので。あとのことは知りませんよ?」


「はっ! 魔王の餌にでもなるがいい!」


 餌ってなんだろう。また適当にものを言ってるなと王城を後にした。リュックには魔物用のまたたびと大量のジャーキーを詰め込んで。

 国を追い出されたあとは、西にある魔王領へと足を運んだ。国境を越えた瞬間、茂みから何かが飛び出してきた。


「グルルッ!(止まれ人間! ここは俺たちの縄張りだ!)」


 巨大なグリフォンだ。鋭い爪とクチバシ。普通の人間なら腰を抜かすだろうが、目を輝かせた。


「なんて立派な翼! 羽毛の艶(つや)も最高! ちょっと触らせて!やあ!」


「えっ?(困惑)」


 グリフォンの首元をワシャワシャと撫で回した。そこは急所であり、同時に一番気持ちいいポイント。


「クゥ……(そこ、気持ちいい……)」


「いい子だね~。これあげるからね」


 特製ジャーキーを差し出すとグリフォンは尻尾を振って食べ始めた。チョロい。魔物は基本、素直で可愛いから。グリフォンの背中に乗せてもらい魔王城へと到着した。出迎えてくれたのは黒い角を生やした絶世の美青年の魔王フィルスト。


「ようこそマクレラ。待っていたよ」


 フィルストは疲れた顔で微笑んだ。


「君の噂は聞いている。魔獣を手懐ける聖女がいるとね。実は我が城のペットたちが、言うことを聞かなくて困っていたんだ」


 案内されたのは広大な中庭。そこにはドラゴン、キマイラ、ケルベロスなど伝説級の魔物が溢れかえっていた。

最後まで読んでくださり感謝です⭐︎の評価をしていただければ幸いです。もふもふカフェ流行りますよね

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