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三話 ならば自由に暮らします

 クランドール伯爵は挨拶もせずに、それだけ吐き捨てたかと思うと……早足で屋敷の外へ出ていってしまった。


 それから馬車に乗り込んで、どこかへ出掛けていく様を私は半ば呆れながら眺めていた。




 ____し、信じられないわ……。


 これから自分の妻となる子爵令嬢に向かってあんな失礼な態度……。

 父がこの光景を見ていたら、泡を吹いて倒れていたでしょうね。


 容姿や能力についての噂しか知らなかったから、まさかあんなイイ性格をしているとは思わなかった。あ、褒めてないわよ?


 というか、結婚初日に妻を放って出掛けるなんて、どういうつもりかしら?


 馬車に荷物も積んでいたし、結婚初夜もすっぽかすつもりよね、あれは……。


「……はぁ……。これは思っていた以上に……前途多難ね」


 私はもうため息をつくことしかできなかった。

 そんな私の様子を見た使用人達は、どうしたものかとあわあわとした様子で私を遠巻きに見守っている。


 ……もしかして、伯爵は使用人の指揮もまともにとっていないわけ!?


 あ、有り得ない、本当に有り得ないわ……!!


 こんな屋敷で、「好きに暮らせ」だなんて……。





 ____好きに暮らせ?


「……そうよ、私はお客様じゃない。今日からクランドール伯爵夫人になったんだもの。だったら……この家を自由に取り仕切っても良いってことよね?」


 それって……そんなことって……!


「最高じゃないの!!!」


 突然笑顔でそう叫んだ私を見て、使用人達がビクゥッと肩を震わせた。


 ……驚かせてしまったかしら?




 私は彼らにニコリと微笑みかけながら、身体に染みついたカーテシーを披露する。


 それから、凛とした声で堂々と宣言したのだった。


「はじめまして。今日からこの家の女主人となる、ルチナ・クランドールよ。旦那様の言いつけ通り、私は私のやりたいように自由に過ごすつもりだから……皆さん、どうぞよろしくね」

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