第34話 教える前に、直します
学園ダンジョンの入口は、相変わらず仰々しかった。
幾重にも張られた結界。
警告文。
緊急遮断用の制御盤。
安全第一。
教育用としては、正しい。
――ただし。
「……息苦しいな」
俺は、正直な感想を口にした。
隣でフレイが頷く。
「抑え込みすぎだ。
魔力が、逃げ場を失っている」
「だから、歪む」
教官の一人が、恐る恐る聞いてくる。
「危険、でしょうか……?」
「今は、ね」
「今は?」
「このまま使い続けたら、もっと危険になる」
その言葉に、空気が張りつめた。
何をするのか
「結界を、外すんですか?」
「半分だけ」
「半分……?」
アクアが、制御盤を一瞥する。
「出力制限を解除するのではなく、
流れの向きを変える」
教官たちは、完全に置いていかれている。
「難しいことはしない」
俺は、入口に手を置いた。
「ここは、学ぶ場所だ。
閉じ込める場所じゃない」
魔法は使わない
詠唱は、しない。
杖も、構えない。
ただ、魔力を――
「……通す」
それだけだった。
ダンジョン全体に張り付いていた“圧”が、
ふっと抜ける。
音は、しない。
光も、出ない。
だが。
「……あ」
誰かが、息を漏らした。
空気が、変わった。
教官たちの視界
「数値が……」
制御盤を見ていた教官が、声を震わせる。
「暴走率が、下がっています」
「出力は、上がっているのに?」
「はい……安定しています」
意味が、分からない。
それが、正しい反応だった。
ダンジョンが「呼吸」する
中に入ると、さらに分かる。
「……歩きやすい」
セレナが、足元を確かめる。
「前より、怖くない」
「怖くない、は語弊だ」
フレイが言う。
「無理をさせられていない」
壁に手を当てると、微かな反応が返る。
ダンジョンが、応えている。
「生き物みたいですね」
ルミナが、静かに言った。
「元々、そうだ」
俺は答える。
「だから、押さえつけると壊れる」
実演(でも戦わない)
「一体、魔物を出してください」
教官が合図を送る。
出てきたのは、訓練用の低級魔物。
生徒が、緊張した面持ちで構える。
「……いつもより、動きが自然だ」
教官が呟く。
「来い」
俺が言うと、生徒が動いた。
魔法は、いつも通り。
剣も、普段通り。
――なのに。
「……倒せた?」
あっさり、終わった。
「詠唱、短くなってない?」
「魔力、切れてない……?」
生徒たちが、ざわつく。
説明は、一言
全員の視線が、俺に集まる。
「……何をしたんですか?」
俺は、簡単に答えた。
「邪魔を、やめただけだ」
沈黙。
理解できない。
でも、結果は出ている。
それが、一番効く。
学園長の決断
学園長が、深く頭を下げた。
「……この状態を、維持していただけますか」
「一時的なら」
「いえ」
一拍。
「教え方を、変えます」
それは、学園にとって
大きな決断だった。
教える前に、直した。
魔法ではなく、
環境を。
だからこそ、
この学園は今日――
初めて、成長を再開した。
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