第22話 第一層、国家予算を超える
超大型ダンジョン・第一層。
入口を越えた瞬間、
空気が変わった。
「……広すぎない?」
セレナが、思わず呟く。
見渡す限り、石造りの地形。
街の跡。
崩れた建造物。
「これ、一層だよね?」
(そうなんだよな)
アクアが、即座に数値を出す。
「魔力密度」
「都市中心部の……約五倍」
(頭おかしい)
「つまり」
フレイが、剣を担ぐ。
「雑魚でも、強い」
「逆だ」
僕は、首を振った。
「強いのが、雑魚」
開始、五分。
最初に出てきたのは、
人型の魔物だった。
鎧。
槍。
統率。
「……集団戦前提か」
フレイが、笑う。
「分担」
僕は、短く指示を出す。
「フレイ、前を割る」
「セレナ、上」
「リーネ、地形固定」
「ノクス、側面制圧」
「ルミナ、後方」
「アクア、回収管理」
全員、即応。
戦闘は、速かった。
フレイが、一振り。
衝撃波で、前列が崩れる。
セレナが、空を裂く。
「風よ、通れ!」
突風が走り、
魔物の隊列が、解体された。
リーネが、地面を叩く。
逃げ道が、塞がる。
足場が、味方だけ有利になる。
ノクスの影が、背後に忍び寄る。
気づいた時には、
もう、終わっている。
ルミナの光が、淡く広がる。
傷は、即座に塞がる。
疲労も、残らない。
僕は、何もしていない。
ただ――
通している。
魔力の滞りを解き、
暴走を起こさせない。
結果。
魔物は、
暴れきる前に、崩れる。
「……これ」
セレナが、呆然とする。
「普通のダンジョンだったら」
「ここ一帯、地獄だよ?」
「普通じゃないからな」
三十分後。
第一層、半分制圧。
「……魔石量、報告します」
アクアの声が、少し震えている。
「現在」
「金貨換算、四百枚相当」
沈黙。
フレイが、吹き出した。
「まだ半分だろ?」
(そうなんだよ)
「続行」
即答。
第一層・中心区画
そこは、鉱脈だった。
露出した高純度魔石。
削る必要すらない。
「……採掘って」
リーネが、珍しく言葉を詰まらせる。
「これ、拾うだけ」
ノクスが、低く言う。
「争奪戦になる前に、封鎖が正解だ」
(後でな)
二時間後。
第一層、完全制圧。
魔物、殲滅。
罠、解除。
構造、把握。
アクアが、最終集計を出す。
第一層・最終成果
高純度魔石:大量
特殊素材:多数
古代貨幣・装備:一部
総額:金貨 一千二百枚相当
全員、無言。
「……なあ」
セレナが、ゆっくり言う。
「これ、国家?」
「いや」
アクアが即答する。
「中堅国家の一年分です」
(やめろ)
フレイが、頭を掻く。
「一層、だよな?」
「うん」
僕は、塔を見上げた。
「あと六層」
沈黙のあと。
セレナが、破顔した。
「……ねえ、リクス」
「はい」
「これさ」
一拍。
「都市、もう一回ドーンできるよね?」
「余裕で」
ルミナが、静かに言った。
「でも」
「外が、騒ぎ始めます」
(だよね)
ノクスが、口元を歪める。
「もう、隠せない」
僕は、少しだけ息を吐いた。
(……金)
(稼ぎすぎるのも、問題だな)
でも。
「じゃあ」
僕は、笑った。
「先に、使おう」
この日。
通界は、
“都市国家予備軍”から
“世界資源を握る側”へ
はっきりと進んだ。
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