第14話 戦力が揃ったので、ダンジョンを制圧します
結論から言うと――
もう、ちまちま潜る必要はなかった。
「……確認します」
ダンジョン入口前。
アクアが帳簿を閉じ、全員を見回した。
「本日の編成」
指を折る。
「前衛・制圧:不要」
「索敵・撹乱:セレナ」
「地形制御:リーネ」
「防衛・抑止:フレイ」
「回復・後方管理:私」
「情報遮断:ノクス」
「調停・緊急対応:ルミナ」
一拍。
「――指揮:リクスさん」
全員の視線が、僕に集まる。
(……あ)
(これ、完全に“部隊”だ)
ダンジョンは、中級指定。
冒険者ギルドの基準では「複数パーティ推奨」。
普段なら、
慎重に、
少しずつ、
命を削りながら進む場所。
でも今日は違う。
「じゃあ」
僕は、短く言った。
「制圧で」
セレナが、楽しそうに笑う。
「はいはい! じゃあ私、先行しますね!」
銀髪が風に舞い、
次の瞬間、彼女の姿はもう遠い。
「索敵、完了!」
風に乗った声が、即座に返ってくる。
「魔物、四十以上! 群れ!」
「配置、共有します!」
(早い)
「地形、固定します」
リーネが静かに地面に手をついた。
ごう、と音もなく、
足場が整い、通路が広がる。
「逃げ道、消しました」
(容赦ない)
「来るぞ!」
フレイが前に出る。
火は、放たない。
ただ、そこに立つ。
それだけで、
魔物の動きが鈍る。
(圧だけで仕事してる……)
「回復、必要なさそうですね」
アクアが少し残念そうに言う。
「在庫整理しておきます」
(することが違う)
魔物の群れが、なだれ込む。
本来なら、
地獄絵図。
――でも。
「……通します」
僕は、それだけ言った。
押さない。
溜めない。
ダンジョンの“詰まり”を、開ける。
風が抜ける。
魔力が流れる。
魔物たちは――
暴れない。
逃げない。
ただ、崩れる。
「……え?」
セレナが、上空で瞬きをした。
「私、まだ何も――」
「やってないですね」
アクアが淡々と補足する。
床に、
魔石が、雨のように落ちた。
カラン、カラン、カラン――
(……多いな)
「回収、開始」
ノクスの声。
影が動き、
魔石は即座に仕分けされる。
数分後。
ダンジョン中層。
「……終わり?」
フレイが、周囲を見回す。
「反応、ありません」
セレナが、風を読む。
「じゃあ、奥も」
(まだ行く)
深層。
通常なら、
熟練冒険者でも慎重になる場所。
でも。
「同じで」
(雑)
結果は、同じだった。
魔物、消失。
魔石、山。
ダンジョン制圧。
完全。
無傷。
外。
待機していたギルド職員が、口を開けたまま固まっている。
「……え?」
「もう、戻ってきたんですか?」
「はい」
アクアが、にこやかに答える。
「制圧、完了です」
計測。
魔石の山。
一つ、二つ……
途中で、数えるのをやめた。
「……金貨換算で」
職員の声が、震える。
「二百三十枚です」
沈黙。
(……中級ダンジョンだよね?)
セレナが、ぽつりと言った。
「……ねえ、リクス」
「はい」
「これ、毎日やったらどうなるの?」
(考えたくない)
アクアが、即座に答えた。
「街が、もう一段階大きくなります」
(断言)
僕は、魔石の山を見て思った。
(……金、稼ぐの簡単だな)
(じゃあ)
「使おう」
僕が言うと、
全員が、にやっと笑った。
その瞬間。
通界は、
“冒険者の街”から、“金が生まれる都市”へ
はっきりと踏み出した。
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